軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

決勝戦に備えます

「やぁロイド、いきなり消えたからどこへ行ったのかと心配したよ」

イドと入れ違いで来たのはアルベルトたちだ。

ルゴールたちも一緒である。

「ゴーレム談義で盛り上がっていたら、私たちも作業をしたくなってねぇ。改修作業をしていたのだろう? 我々も混ぜてくれないか?」

「へへっ、ロディ坊なら絶対ここに来てると思ってたからよ。俺がみんなを連れてきたんだぜ」

ディアンの後ろには仲良くなったのであろう他国の技術者たちがいた。

「私共に出来る事があれば、なんでもお申し付け下さいませ」

その傍らで恭しく頭を下げるシルファ。

ありがたい。魔髄液はあっても改修作業にはかなり時間がかかるからな。

二人だと夜明けまでかかっていただろう。

「みんな、ありがとう! ほらゼロフ兄さんも」

「む……し、しかしだな……」

「試合に出れなくてもいいんですか?」

俺が詰めると、ゼロフは観念したようにため息を吐く。

「……あー、その。助かる」

照れ臭そうに礼を言うゼロフを見て皆、顔を見合わせて苦笑するのだった。

――どうにか夜明け前に作業は終わった。

イドから貰った魔髄液を使い、皆の力を借りてディガーディアに中和術式を付与を施した。

これならあの結界も突破出来るだろう。

「ふむ、だがかなり余ったな。どうするロイド? イドに返してやるか?」

「……いえ、折角ですし使わせて貰いましょう」

他にも手を入れるべき箇所はある。

イドは全力で戦いたいそうだからな。

出来る事はやっておくべきだろう。

それに俺のディガーディア改造計画は続いているのだ。あれをこうしてああして……ふふふ、楽しみだな。

◇◇◇

『ああああーーーっと! 強いぞディガーディア! またも勝利ですっ! 圧倒的ですっ!』

大歓声の上がる中、くるりと背を向け戻っていくディガーディア。

第二試合も危なげなく勝利することが出来たな。

「気のせいかな。第一試合の時よりも拍手が大きいね」

「最初は無愛想だと不評だったようですが、徐々にファンも付き始めたのでしょう。私が冒険者をやり始めた頃も女だからと揶揄されもしましたが、実力を見せつければ周囲は認めるものです」

シルファとそんなことを話していると、ゼロフがディガーディアから降りてきた。

「お疲れ様でした。ゼロフ兄さん」

「吾輩は大した事はしていない。ほぼディガーディアのおかげだな。まるで象でネズミを踏み潰すかのような圧倒的な力だ。次はお前が乗ってみるか? ロイド」

「いえいえ、遠慮しておきます」

俺は慌てて手を振って返す。

ただでさえゼロフの代わりに受け答えをして目立っているのだ。

俺の本業はあくまで魔術師、錬金術師として名を上げるつもりはない。

この大会ではあくまで裏方に徹するつもりである。

「全く、無欲な奴だ」

「あはは、すみません」

どうやら引き下がってくれたようだ。

胸を撫で下ろしていると、向こうの方でわっ! と歓声が上がった。

『おおおーーーっとぉ! こちらも強いレオンハート! 何という疾さでしょうか! 相手に何もさせずの圧殺でーーーす!』

どうやらイドも勝ったようだ。

こちらを見て微笑を浮かべてくるので、頷いて返す。

決勝戦、楽しみにしてますよ。とイドは唇が動かした。

こちらこそ楽しみである。

「ロイド様、あれを見てくだせえ。イドのゴーレムの足元付近、何かいやすぜ」

「ん、なんだ一体?」

グリモに言われるがまま視線を向けると、そこには黒フードの男がいた。

「どうやらこの国の人間のようですね。イドの仲間でしょうか?」

「その割には様子が変だぜ。いやーな気配を感じやがる」

確かにイドの手伝いの割には妙にコソコソしているな。

一体何をしているのだろう。

「ん? 何か持っているぞ」

男は懐に強い魔力を放つ黒炭のような物を持っている。

あれは呪具だ。

魔道具の一種だが、より強力な効果を得る為に敢えて制御を放棄し、術式を滅茶苦茶に編み重ねて作られたものである。

強力な効果を発揮するが制御は不可能。

言わば魔力の暴走装置であり、その性質上ゴーレムのような複雑かつ繊細な術式の塊に長時間接触させると不具合を起こす。

「あの野郎、ゴーレムに呪具を取り付けるつもりのようですな。誰だか知らないが恐らくイドが不利になると喜ぶ輩でしょうぜ。上手くコトが運べば、労せず大幅有利になりやすぜ。げへへ」

「全く品性の下劣魔人らしい考えだ。しかしそうすればロイド様が負ける可能性は万が一にもなくなるでしょうね。気付かぬふりをするも一つの手でしょうか」

「ケッ、てめぇの品性も大差ねえぜ。クソ天使」

ジリエルに舌打ちをするグリモ。

確かにそうではある、が……

「――あのまま放ってはおけないな」

もしあれでレオンハートが不具合を起こした場合、せっかく作った新兵器を満足に試せない可能性がある。

どうせなら全力で実験したいものだ。

「マジっすかぁ!? ほっときゃ勝手に敵が弱体化してくれるってーのに、真面目ですなぁロイド様は」

「俺は全力で戦いたいんだ。その邪魔はされたくない」

「流石はロイド様、正々堂々、力を尽くした戦いをお望みなのですね」

グリモとジリエルの言葉から何か誤解を感じるが、ともあれ何よりも俺の為にあの男を止めるとしよう。

「ねぇ、ちょっといい?」

客に紛れてレオンハートに近づこうとする男に声をかける。

「なっ!? き、貴様は……い、いや。そんなはずがない。よく見れば別人か……全く驚かせやがって」

男は何やらブツブツ言っていたが、すぐに気を取り直し、取り繕ったような笑みをこちらに向ける。

「……どうかしたのかな? 坊や」

「うん、それをどうするつもりなのかと思って」

慌てて呪具を懐に仕舞おうとする男の腕を掴まえ、言葉を続ける。

「呪具だよね。それ。どうするつもりだったの? まさかゴーレムに取り付けようとしてたとか?」

男はサッと顔を青ざめ、しどろもどろに言い訳を始める。

「ち、違うぞ少年。これはその、そこで拾って……もしかしたらこのゴーレムに付いていたものかと思ってだな……」

「ありえないね。そんなものを取り付けたら編み込まれた術式が狂いまくって、確実に不具合を起こすはず。持ち歩く人すらいるはずがない。それにその呪具、お兄さんが苦心した跡がくっきり残ってるのがわかるよ」

魔力集中で呪具を見ると、男の指先に呪具と同じ術式反応が見て取れる。

くっきりと、べっとりと。

「この呪具、あなたが作ったようだね」

「い、いいがかりだ! 何を言ってるんだこのガキは!」

言葉に詰まったのか、男は声を荒らげた。

そうこうしていると異常を察した人たちが周りに集まってくる。

「おいおいなんだ? どうしたってんだい?」「呪具だと? 錬金大祭にそんなもの持ってきちゃ危ないじゃないか!」「あの男が犯人のようだ。子どもが止めようとしているみたいだよ!」

好奇の視線を向けられ、男は慌てて言い訳を始めた。

「ほ、本当に拾っただけなのだ! 大体証拠がない! そうだろう!? 私がやったと言うならば、証拠を出すがいい! 誰にでもわかるような証拠をな! 出せまい! ならばこれ以上難癖を付けるのはやめて欲しいものだな!」

「あー……その違うんだ。別に問い詰めようと言うわけじゃないんだよ」

俺は必死に取り繕おうとする男に、首を振って返す。

「これはただの確認。事実を並べただけなんだ。お兄さんが何を言おうが、俺のやることは変わらないしね」

「な、何を……」

言いかけた男に構わず、俺は指先を持ち上げて、神聖魔術『微光』を発動させる。

放たれた聖なる光が男を貫く。

「あががあがあがあがあがあっ!?」

がくがくと痙攣しながら白目を剥く男。

大きく開けた口から白い煙を吐いたかと思うと、すぐに目を見開いた。

「……はっ! 私は何を……!?」

開いたその目は先刻までの濁った魚のような目ではなく、キラキラと澄んだ色をしている。

「これは呪具!? ま、まさか私はこんなものをゴーレムに取り付けようとしていたのか!? 信じられない。何ということを……!」

絶望に顔を歪めながら崩れ落ちる男。

すぐに起き上がり、俺に告白を始める。

「私はバートラムでゴーレム研究をしていた者だ。しかしあの少年が来て、あっという間に立場を追われてしまった。それを逆恨みしてこんなことを……止めてくれてありがとう。私は罪を償うよ」

なるほど、イドの前任というわけか。

あんな子供に立場を追われたら、嫉妬に駆られるのも仕方ないか。

ともあれ浄化は成功したようだな。うん。

「相変わらずスゲェ効果ですな。ロイド様の神聖魔術は」

「うむ、神聖魔術には人の邪な心を浄化する効果はあるが、ここまでの効果を持たせられるのはロイド様くらいだろう」

男は頭を垂れながら、警備の者に自らの行いを告白している。

それにしてもあの男、俺を知ってるみたいだったけどなんだったのだろうか。

聞きそびれちゃったな。まぁいいか。

目的は果たしたし、長居は無用。

騒ぎなる前に退散するとしよう。

「待って下さい! ロイド!」

背中から声をかけられ振り向くと、そこにはイドが立っていた。

「何故、彼を止めたのですか? あの呪具が取り付けられればレオンハートはまともに動かなくなったでしょう。そうすれば言うまでもなくあなたが大幅に有利となる。こんな事をしても何のメリットもないはずだ」

「何故って……不思議なことを聞くもんだな。そうしないとイドが全力で戦えないじゃないか。自分だって全力で戦いたいと言っていたのだから、想いは同じなのだろう?」

俺の言葉にイドは心底驚いた様子だ。

「僕と……全力で戦いたいのですか?」

「何度もそう言ってるじゃないか」

呆けたような顔のイドだったが、口元を緩ませブルルと身体を震わせる。

武者震いだろうか。イドは堪えきれないと言った笑みを浮かべていた。

「……光栄です。とても嬉しいですよロイド。ついに僕と本気で戦ってくれるんですね!」

「もちろん。楽しませてくれよな」

「えぇ、えぇ! もちろんですよ! 最高の戦いに致しましょう!」

イドの差し出した手を握り返す。

ついに……ってどういうことなのだろうか。まぁいいか。どうせすぐにわかることだし。

ともあれ、決勝は明日に迫っていた。