軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第303話 報告

「申し訳ありません! アルス様!」

撤退してきたリーツが、床に頭をつけて謝った。

「リ、リーツ。頭を上げてくれ」

慌ててリーツに頭を上げるように促す。

「勝敗は兵家の常だ。気にするでない」

某三国志漫画に出てくるようなセリフを言った。

自分がこの言葉を口にするとは、思っていなかったな。

というか、こっちの世界でも言ったことないかもしれない。

家臣が明確な敗戦をしたということが、今までなかったからだろう。

改めて優秀な家臣たちである。

「今回はリーツ先生の撤退の判断が早かったおかげで、砦は失ったけど、兵はそんなに失わなかった。気にする必要ないよ」

ロセルも続いて励ました。

「飛行船もロセルの機転のおかげで失わずに済んだ。負けたらまた勝てば良いだけだ。リーツ。何があったか報告をしてくれ」

「……かしこまりました」

リーツは少し落ち着いたのか、先ほどまで捨てられた子犬のような顔をしていたのが、冷静な顔つきに戻った。

そして戦の顛末を語り始めた。

敵の出陣の報告を聞いたのは、小雨が降り始めた日のことでした。

その後、ロセル君の指示で、飛行船がルンド城に撤退するということを聞きます。これは良い判断だと僕も思いましたので、すぐに協力し撤退させました。

日に日に雨が強くなって参りました。

我々はブラッハム隊を使い、奇襲を試みました。

敵は飛行船の弱点を見抜き、雨の日に出陣したのでしょうが、雨の中を行軍すると言うことは、大きなリスクを伴います。

普通なら奇襲には雨の日は対応しづらい。特にブラッハム隊は、どんな状況でも行動できる精鋭部隊です。

しかし、奇襲は失敗しました。

ブラッハムの報告によると、まるで来るのを読まれていたのかと思うくらい、正確に対処されて敗退してしまいました。

その後、敵が行軍を止めないため、何度か奇襲を試みましたが、全て同じように失敗します。

敵の糧道を断つ戦術を試しましたが、これも同じく的確に対処をされ、失敗。

結局、砦付近まで来られました。その間、敵の兵はほとんど減らせていません。

そのまま籠城戦になりました。

敵は話にあった爆殺龍石という新兵器を使用。

雨が降っていると効力が発揮しきれないようで、不発に終わる物も多かったです。ですが、爆発すれば、魔法を使ったのと同じくらいの威力が出るので、かなりの脅威でした。

籠城戦では、シャーロット、ムーシャを始めとした魔法兵の活躍で、敵兵をそれなりに減らせたものの、相手は初めから砦の弱点を知っているのかというくらい、防備の薄い場所を突いてきました。

敵兵の侵入を許すようになり、砦内で迎撃をしていましたが、徐々に押され始め、これ以上戦うと致命的な損害を負う可能性があると判断し、一時撤退を指示しました。

撤退時に罠を張り、敵軍の数を減らそうと試みましたが、それも見通されていたようで、敵は追撃せず、砦の守りを固めることを優先していました。

「報告は以上です」

リーツが冷静に戦について報告をした。

「……動きを完全に読まれているみたいだね……も、もしかして自軍に密偵が忍び込んでるのかな?」

ロセルが顔を青ざめさせながら言った。

「密偵……」

「あり得ない話ではないですが……それでもここまで完璧に対処することは、事前に情報を知ってても難しいと思います。特にブラッハムの奇襲は本人の判断で、指示とは違うタイミング、場所で行っていたようですし。ほかの奇襲を任せた者たちにも、場合によっては奇襲のタイミングや場所は、現場の判断でずらしても良いと指示はしていました」

「なるほど……それでも完璧に読まれたのか……奇跡的に勘がいい相手としか、言いようがないかもな」

「僕はそう思います」

百戦百勝という話らしいが、噂に違わない実力のようだ。

雨の日は奇襲が来やすいということは、流石に理解しているだろうが、理解した上で、防ぐのが難しいものなのだ。

それを百発百中で来るタイミングを当てて、撃退するとは並大抵の所業じゃない。

何か特殊な能力でも持っていないと考えられないな。

それこそ私の眼のような、特殊な力が。

「勘が異様に効く相手……としか言いようがないのかも」

「まともに戦って勝利を収めるには、大軍を持っていなければ難しいと感じました」

リーツにそこまで言わせるか。

いかにリーツが人材として優秀といえど、超常的な力を持つもの相手では、勝利するのは難しいだろうな。

「まともに戦って勝てないんなら、勝てないってことなのか?」

馬鹿っぽい質問をシャーロットがしてきた。

「そうだね……敵はすぐにこちらの拠点を落としたいはずなのに、わざわざ雨の日を待った。つまりは、飛行船がある場合は、どれだけすごい能力を持っていたとしても、勝ち目は薄いと考えているということだよ」

ロセルがそう言った。

確かにいくら勘がいいからと言っても、飛行船の爆撃に対して有効な対処法は、考え付いてないかもしれない。

「なるほど……敵は次も雨の日を待って行動する……となると敵の思う壺なので、今度はこちらから攻め込んだほうがいいかもしれないな。砦はだいぶ破壊されたので、今すぐ攻めれば砦に篭るという選択肢はできず、野戦に打って出るしかないだろうし」

リーツがそう呟いた。

こちらから攻めるか……飛行船を有効活用する場合、敵のタイミングで戦をするのではなく、こちらのタイミングで戦を仕掛けるというのは理に叶ってはいる。

「しかし、単純な兵力では敵が上回っている。攻城戦なら防衛側の方が有利なので、兵が少なくても良いが、野戦となると兵が少ないと不利になる。相手の将が有能なのに、いくら飛行船があるからと言って勝てるか?」

「……うーん……でもこのままルンド城に篭っていてもな……野戦した方が勝てる確率は高いと思う」

「僕もそう思います。今回は負けません」

ロセルは微妙に自信なさげに言って、リーツは覚悟を決めたような表情で言った。

「……分かった。そうしよう。皆、出撃の準備をするんだ」

次は野戦を行い戦うことに決めた。