軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第300話 疑惑

クランの命に従い、私はアルカンテス城に向かい、無事に到着した。

大勢の貴族が緊急招集されていた。

城内は人でごった返している。

まずは到着したということをクランに伝えるため、挨拶へと向かった。

「クラン様、アルス・ローベント参上いたしました」

「よく来た。お主の力は頼りにしておるぞ」

クランは労いの言葉をかけたが、どこか表情が固い。

「はい。クラン様のために、全力で戦います」

「その言葉頼もしく思うぞ」

そういうクランの表情は固いままだった。

原因には……心当たりはあった。

「ところでひとつ聞くが……お主の治めるカナレ城に、元サイツ総督のアシュドが訪れたと報告があったが、本当の話か?」

やはりか。

アシュドが訪れたということ自体は、クランには伝わっているだろうと予想はしていた。

どのタイミングで聞いてくるかは分からなかったが、すぐ聞いてきたな。

「本当の話でございます」

ここは正直にそう言った。

「そうか。アシュドはどんな用件で、カナレ城に訪れたのだ?」

「元サイツ総督として、クアット郡とプルレード郡を治める私に挨拶をしたいとのことでした。ただ、本当の目的は恐らく飛行船の情報を探っていたのだと思います。サイツには危険なので飛行船の情報は与えていないので、それについて聞きたがっていたのでしょう」

これに関しては嘘を言った。

どんな嘘を言うのが信憑性が高いか色々考えた結果、飛行船関連が自然だと思った。

アシュドが飛行船の情報を狙っていたとしても、不自然なことは何もないからな。

「なるほど……飛行船か……知られたりしなかったか?」

「もちろんです。なるべく早めにお帰りいただきました。怪しいので監視もつけ、余計なことは一切させておりません」

「ふむ。お主の密偵は優秀だからな。私も命を救われた」

「はい。いつもよく働いてくれます」

「ひとつ気になるのだが、なぜ怪しいアシュドをカナレ城に通した? 追い払うということもできたはずだ」

中々疑り深いな。

今の私に反乱を起こされたら不味いということは、クランも分かっているから慎重になっているのだろう。

「そうですね。怪しいので家臣たちと協議して考えたのですが、今サイツは味方ですし、本当にただ挨拶したがっている可能性もあるので、頼みを無下にするわけにもいかないと思い、通しました。もし怪しい動きがあっても、私の家臣たちは優秀なので、対処は可能ですし」

「なるほどな……サイツとの関係を良好なものに保つことは重要ではある。お主の判断は間違ってはおらんな」

一応納得したようだが、それでも表情は固いままだった。

「しかしながら、サイツに関しては、常に警戒はしなければならん。ローベント家の治める州が、サイツの手に渡ってしまえば、ミーシアンはサイツを従属させることなど出来なくなってしまうだろう。今後は慎重に考えて行動すべきだな」

「クラン様の言葉ももっともでございます。少々軽率な判断でございました」

「分かったなら良い。此度の戦には期待しておるぞ」

「期待に応えられるよう、尽力いたします」

そう言い残して私は部屋を後にした。

少しヒヤヒヤしたが、何とか切り抜けられたな。

まだ少しは疑っているかもしれないが、これ以上は言及はしてこないだろう。今後サイツの者とは、なるべく接触しないようにした方が良さそうだな。

それこそ、クランを裏切ると決めでもしない限りはな……

その後、王の間に全貴族が集められた。

壇上にある王座にクランが座り、その横に側近であるロビンソンが佇んでいた。

「今日はよく参上してくれた。皆にも伝えた通り、パラダイル、アンセルにて挙兵が確認された。その後、事実上の宣戦布告の書状が送られてきた」

ロビンソンが送られてきた書状を読む。

我が領地であるサイツ州を独立という名目でミーシアンは侵略している。今すぐ、サイツを解放しなければ、ミーシアン征伐軍が、ミーシアンの領地を蹂躙するという内容だった。

「差出人は一応サマフォースの皇帝らしい、実際は実権を握っているシャクマが書いて送ってきたのだろう。もちろんサイツ解放など飲める要求ではない。迎えうつのみである」

貴族たちから、皇帝や兵を挙げたアンセル、パラダイルに対する怒声があがる。

侵略してきた敵に対しての怒りの声だ。戦を嫌がっている貴族は少ないみたいなので、士気はそれなりに高そうである。

それから誰がどんな役割をするか、役割をクランが説明し始めた。

事前に決めていたようで、話し合って決定という感じではなかった。

「アルス・ローベント。お主はパラダイルに兵を出して貰う。また、サイツの動きも気になるゆえ、全軍は出さず、多少は兵を備えるように」

「承知いたしました」

サイツも見る必要があるのか。面倒だな。

トーマスとミレーユを領地に残しておくか。

「サイツにも、もちろん援軍は求めるため、サイツ国内の兵はかなり少なくはなるだろうが、それでも警戒は必要だろう」

確かに防衛用の兵を動かして、クアットとプルレードの奪還に動いてくる可能性はなくはない。

私との交渉がはっきりと成立しなかったため、強硬手段に出てくる可能性もある。

「また、飛行船に関しても現状運用可能なものがカナレにしかないため、戦に使いたい。飛行船に関しては、アンセル、パラダイルから来る敵を迎撃するものと、センプラーにも一応配備したい。サイツの備えとして、プルレード郡にも一隻は配備しておいてくれ」

「承知いたしました」

まだ、カナレ以外で使える飛行船は出来ていないようだな。

飛行船の増産体制が整うまで、何とか守り切ることができれば勝ちだろう。

敵もそれはわかっていそうだから、短期決着を狙ってくるかもな。

軍議はそれから滞りなく進んだ。基本クランの指示に歯向かうものはいない。クラン側も、方針はすでに決定しているようで、貴族の意見を聞いたりはしない。

スムーズに軍議は進んでいき。

そして終了した。

「戦は目前まで迫っておる! 敵はそう遠くないうちに侵攻を開始するだろう。急いで戦の準備を終わらせ出陣せよ! ミーシアン王国に攻め込む、無法者どもを蹂躙するのだ!」

「「「おおおおおおお!!!」」」

クランの檄で貴族たちが盛り上がった。

勝手に独立して、その後、サイツを侵攻したのでどっちが無法者だという話ではあるのだが、ミーシアン国王が自国のことを悪く言うことはあり得ないだろう。

クランの指示に従い、急いでカナレに戻った。

その後、飛行船をセンプラー、アンセル方面に輸送。

そして、飛行船を輸送しながら、私は兵を引き連れ、パラダイル州と隣接するルンド郡へと向かった。