軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第274話 試乗

「準備、終わりました! 早速乗ってください!」

しばらく工房で待っていると、準備が完了したようで、船に乗っていたシンがそう合図を出してきた。

飛ばすまで30分ほどで準備が終わった。

思ったより準備に時間はかからないようだ。

全員で飛行船に乗り込む。

「今から飛ぶんですか? でもここ屋内ですし、天井が……」

とリシアが不思議そうに呟いた。

確かに、今のままでは天井が邪魔で飛べないだろう。

疑問に思っていると、

「開け!」

とシンが合図を出す。

その直後、ゆっくりと天井が動き始めた。

天井が開き、頭上には青空が見えるようになった。

なるほど、こんな仕掛けになっていたのか。

「浮上開始!」

シンが合図をすると、船がゆっくりと浮かび上がり始めた。

浮上する速度は、徐々に増加していき、一気に上がっていった。

地面がどんどん遠ざかっていく。

浮上には恐らく魔法を使用している。

カナレに仕えている魔法兵を、何人か派遣して欲しいとシンに依頼されていたので、その魔法兵が魔法を使っているのだろう。

「た、高いよぉ……こ、来なきゃよかった……」

ロセルはブルブル震えている。

「す、凄いですわ。カナレ城があんなに小さく見えるなんて……」

リシアが感心した様子で、カナレ城を見ていた。

「浮上停止!」

シンの合図で浮上が止まる。

「すごいやろ。こんなに高く飛べるんやで」

シンはドヤ顔を浮かべてそう言った。

「確かに凄いですね……この高さなら敵の攻撃は届きません……」

リーツが地面を眺めながら呟いた。

「そうだなー。ここから爆撃して、敵の城とかぶっ壊したら気持ちよさそうだなぁ」

シャーロットはかなり物騒なことを呟いている。

「ちなみに、もうちょっとは上がれるんですが、危ないんで事実上はこの辺りが高度限界です」

「上がりすぎると危ないのか?」

「はい。風の魔力石を使った装置で浮力を発生させてるんですが、ある一定まで高度を上げると、浮力が消えて落下してしまうんです。装置を改良したら高度を上げられるようにもなるんですが、今はこれ以上上げると落下の恐れがあるんでこの辺りが限界なんです」

浮力が消えるのか。

理由はよく分からないが、高度を上げると気圧が下がるから、もしかするとそれが関係しているのかもしれない。気圧が低い場所だと、魔力石の特性が薄れていってしまうとか。予想でしかないけど。

「い、今は浮いてるだけだけど、この状態はどのくらい維持できるの?」

ロセルが質問した。

「浮いてるだけなら、かなり長く維持できるで。魔法を使う時は魔力水を消耗するけど、浮力発生装置は、あくまで風の魔力石の特性を活かす形の装置になるんで、消耗はせん。もちろん永久に浮かぶことはできへんけどな。装置も劣化するから、適度に手入れせなあかんし。あと、天候が悪なったら、危ないんでそういう時は船を下ろさなあかん」

浮くだけなら消耗なしなのか。

それなら、もしかするとこの先、空に浮かぶ建造物とかも作れるかもしれない。悪天候の日をどう乗り切るかとか、課題は色々ありそうだけど。

「さて、じゃあ移動もしてみるで」

シンは私たちにそう言った後、船員たちに指示を出し始めた。

しばらくすると、ゆっくりと船が動き始めた。

「全速力や!」

船の速度が上がっていく。

外なので風が体に当たる。かなり寒い。

「さ、寒いですわね」

リシアがブルブルと震えている。

「さ、寒いぞ〜。どうにかしてくれ〜」

シャーロットもブルブルと震えた状態で、シンにそう訴えかけた。

「あー、その格好じゃ船内に行った方がええやろうな! 一旦停止!」

一旦止まって私たちは船の中に行く。

船内は狭いが一室だけ客室が存在して、そこに通された。

窓もついているため、外の様子も分かる。

流石にデッキから見た方が景色は見やすいが、これでも十分だった。

シンが再び船員たちに発進の合図を出す。

船が再び動き始めた。

「しかし、本当に動いてるな。どういう原理で動いているんだ?」

客室にいるシンに尋ねた。

「細かく説明するとちょっと長くなりますね。風の魔法を使っとるんですが……簡単に説明すると、後ろに向かって、風を勢いよく噴射させて進んどるって感じです」

ジェットエンジンみたいなものか?

「船をどう進ませるかは、結構悩みどころやったんですよね。最初はわしの考えてた奴だと、どうしても遅くてアカンかったんですが、エナンの奴がええ装置を考えてくれて、結構スピード出せるようになったんですよ。本人によると、まだまだ改良の余地があるって話らしいですが」

「エナンが開発したのか? 凄いじゃないか」

「ええ、アイツは普通にない発想力があって、驚かされることがありますわ。流石郡長さんが連れてきただけはあります」

「そういえば、エナンはいまどこに?」

「アイツ、高所が苦手すぎて、落ちないと分かっててもどうしても船には乗れへんので、今日は乗ってきてません。今頃部屋で新しい装置の設計図を作っとると思いますよ」

「そうなのか。頑張っているんだな」

せっかく来たから挨拶くらいはしようと思ったが、邪魔してはいけないのでまた今度にしよう。

「しばらくはこの速度で飛び続けるんで、景色を楽しんでてください」

そう言って、シンは客室を出ていった。

飛行船は空を快調に飛び続けた。

海の船とは違い、大きく揺れたりすることもないので、乗り心地はかなり良かった。

地上には雄大な自然が広がっている。

「綺麗な景色ですわね」

地上を光景を見ながら、リシアは呟いた。

「いずれ、サマフォース中をこうして見て回れたらいいですわね」

「……ああ、そうだな」

リシアの言葉に頷いた。

いずれサマフォースが平和になって、それから飛行船が普及していけば、そういう未来もあり得るかもな。

しばらく飛び続けた後、飛行船は工房へと戻っていった。