軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第209話 説得

ミレーユはアルカンテス城に入城し、城主の間へと通され、クランと面会した。

豪華な椅子に腰をかけたクランは、少し険しい表情でミレーユを見ていた。

「ミレーユ……私に用とは何だ? もしかしてクビにでもなったか? 残念ながら私はお前を雇う気はないぞ」

「クビになってない……ませんよ……」

丁寧な言葉を使うよう気をつけて、クランの言葉に反論をした。

「お久しぶりですクラン様。我が主、アルスからの書状を持ってまいりました」

お辞儀をしてミレーユはそう言った。

そのミレーユらしからぬ丁寧な態度を見て、クランが顔をしかめる。

「……気持ち悪いから普通に話せ」

「あ、そう? いやー、堅苦しい喋り方は苦手でさ」

「変わり身が早すぎる……」

クランは呆れたように呟いた。

「それで、アルスから書状か……なぜわざわざお主が持ってきたのだ?」

「中を見れば分かるさ」

そう言ってミレーユはクランに書状を手渡した。

クランはミレーユの書状を受け取り、中身を読んだ。

「トーマスをお前が説得……? 成功するのか?」

「するさ」

ミレーユは頷きながら返答した。

「奴は私を憎んでいる。お前のことも決してよくは思っていなかったようだが」

「それでも弟だからね。話せば何とかなる。ただ、アンタの直属の家臣にしてやることは出来ないと思うけどね。カナレの方に連れていきたい」

「それは書状に書いてあった。まあ、アルスの家臣は私の家臣も同然。それについては問題はない。成功の余地があるというのなら、面会するがよい。奴ほどの逸材をこのまま閉じ込め続けるのも、勿体無いからな」

クランは許可を出した。

許可を出した後、クランはすぐにミレーユをトーマスのいる牢へ案内するように、家臣に指示を出した。

ミレーユは案内について行く。

アルカンテスには地下牢があるのだが、トーマスはそこには収容されていなかった。

地下牢は、あまり環境が良くないので、家臣にしようと思っているトーマスを閉じ込めるような場所ではなかった。

アルカンテス城にあるそこそこ大きめの部屋に、収容されていた。

扉の前には脱走を防ぐため、武装した兵士が二人立っていた。

「面会の際は私たちが立ち合います」

「二人きりで面会したいんだけど」

「決まりですので、それは無理です」

アルカンテス城内で見張り番をするような兵士は、そうそう規則は破らない。これは説得は難しいだろうとミレーユは思い、仕方なく見張り番二人と同伴の上で面会をすることにした。

扉が開く。

中には少しやつれた様子の、トーマス・グランジオンが椅子に腰掛けていた。

「よう、何だ元気なさそうな表情だね」

ミレーユがそう言うと、トーマスは険しい表情でミレーユを睨みつける。

「何をしにきた」

怒っているような低い声で、トーマスはつぶやいた。

「せっかく姉が会いにきたってのに、その反応は何だい。本来なら泣いて喜ぶところだよ」

「ふん、てめーが死んだって報告なら、泣いて喜んでやらぁ」

「ひどいこと言うねぇ。誰に似たんだか全く。親の顔が見たいよ」

ミレーユのボケに、トーマスは全くの無反応。

「おいおい、俺と一緒だろうが、ってつっこむところだよここは」

「本当に何しにきたんだテメェは……」

「アンタを説得しにきたんだよ。いつまでこんな辛気臭い場所に閉じ込められてるつもりなんだい? アタシと一緒にさっさと出よう」

「断る」

トーマスは即答する。

「どうしてさ。こんな場所が気に入っちまったのかい?」

「違げぇーよ。バサマーク様を殺したクランに付くつもりは、微塵もないから出るつもりはない」

「アンタが付くのは、アタシの主人のアルス・ローベントだよ。クランの直接の家臣になるわけじゃない」

「そのアルスとやらは、クランの家臣なんだろ? それならクランの下に付くのも一緒じゃねーか」

「まあ、それはそうなんだけどね。でも、アルスとアンタは合うと思うよ。それに人を見抜く特殊な目を持っているアルスは、これから優秀な奴等を集めて大勢力を作り出すと思うよ」

「それなら俺以外のやつを家臣にして、存分に成長することだな」

頑なな態度にミレーユは「はぁー」と強いため息を吐いた。

「何でバサマークなんぞに、アンタは肩入れするかねー。所詮ただの敗北者じゃないか」

バサマークをミレーユが馬鹿にすると、トーマスは表情をさらに険しくする。

「バサマーク様を愚弄するな。あの方には大きな恩がある。それを忘れることは出来ねえ」

「はっ。恩ねぇ。確かにバサマークにも恩はあるかもしんないけど、アンタはアタシにも恩があること忘れてない?」

ミレーユのその言葉を聞き、トーマスは図星を突かれたという表情を浮かべる。

「子供の頃からさぁ。アンタ、アタシに何度も助けられたでしょ? 忘れたの? バサマークの家臣になれたのも、全部自分の力のおかげだとでも思っているわけ? アンタはさぁ、昔から誰かについてくことでしか、何もできない男だったでしょ。ちょっとばかし図体がデカくなっても、それは変わんないよね」

「……」

トーマスは何も言い返せず黙る。

ミレーユはその後、トーマスの耳に口を近づけて、何かを囁いた。

その言葉を聞き、トーマスは少し目を見開く。

ミレーユは耳から顔を離した後、

「まあ、確証はないけどね。一度アルスに会ってみるといいよ」

そう言った。

トーマスはしばらく無言を貫き。

「少し考えさせろ」

と返答した。