軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第108話 会談

会談は敵の砦の中で行われる。

敵はこちらの暗殺のリスクを軽減したいのか、直接会談を行う者たちの武器を事前に回収した。

私も使わないが剣を一応装備しているので、それを取られる。

流石に武装した者が周りに一人もいないというのは、こちらも心細いので向こうも会談するものは武装を解除し、周りに武装した者を置かないと言ってきた。

クランからの護衛も武装解除することになってしまったが、まあ、強い者は剣を持ってなくても強いので、今回は受け入れることになった。

会談を行う場所は、砦の中ではない。

門を越えた先にある、砦の入り口前の庭で行う。

これなら周辺に武装している者がいないというのも、分かりやすいだろうという配慮からだった。

庭には丸いテーブルが置かれており、そこに一人の中年の男が座っていた。

男は私たちが来たら、椅子から立ち上がり、

「よく来ました。お久しぶりですねボランス殿」

「こちらこそ久しぶりです、リューパ殿」

あれが敵将のリューパか。

ちなみにボランスとは、同行するリューパの知り合いの貴族だ。

昔、一緒に戦ったことがあるらしい。

知り合いではあるが、友人関係ではないようだ。

ボランス以外の者は、それ以上につながりが薄かったため、ボランスが同行することになった。

「それで後ろの方が、ロビンソン殿と、アルス殿ですか?」

「はい、そうです」

どう見ても見た目的にはまだ子供な私を見て、不思議に思っているようだ。

この会談が大事なものであると、知っていればそう思うのも当然であろう。

ただ、リューパはそれに言及はせず、私たちに席に着くよう言った。

席に着き、私はリューパの能力を鑑定してみる。

リューパ・ルーズトン 32歳 ♂

・ステータス

統率 84/89

武勇 54/54

知略 83/88

政治 78/80

野心 70

・適性

歩兵 D

騎兵 C

弓兵 D

魔法兵 D

築城 A

兵器 B

水軍 C

空軍 C

計略 B

かなり優秀な男だな。

そして野心が結構高い。

この会談に応じた理由も、野心の高さが原因かもな。

これだけ能力が高く野心も高ければ、現状の地位に不満を抱くのもおかしな話ではないかもしれない。

さて、鑑定を交渉にどう使うかだが、鑑定で出た数値で相手の性格を予想してみたりすることは出来るかもしれない。

正確性がどれだけあるか分からないが、鑑定だと建前を上手く使える人間の野心なんかも見抜けるから、効果はあると思う。

それで、この能力を見る限り、武勇は低いが、ほかは優秀。

前線で戦ったりするタイプでは本来ないみたいだ。そして野心が高い。

思慮深い男であるが、腹の中では黒いこととかも考えていそうなタイプか?

そう言うタイプには、きちんとメリットを提示すれば乗ってきそうだが。

現状敵側がかなり不利なのは、間違いないだろうし。

クランの話では、調略の条件として郡長の地位を与えることが出来ると言っていた。

バサマークを倒した後は、いくつかの郡が空くだろうから、そこに据えるという。味方からある程度不満は出るだろうが、それは今は気にするべきことではないとクランは言っていた。

普通に交渉していたら、乗ってきそうだが……どうなるか。

最初はボランスが社交辞令のような会話を行う。

そんなに深い仲ではなさそうだと会話の様子から分かった。

折を見て、ロビンソンが会談に来た理由を話し始める。

こちら側に付かないかと問うロビンソンに対し、

「私はバサマーク様とカンセス様に忠誠を誓っております。申し訳ありませんが、それは出来ぬ相談です」

とリューパは返答した。

本当に出来ないのか、秒で食いつくと信頼出来ないと見られるだろうから、一度断ったのかは分からない。

そのあとロビンソンが郡長の地位を約束すると言ったが、相変わらず首を縦に振らない。

何か不満があるのか?

野心が高いから出世したいと思っているのは間違いないが……

そもそも確実に裏切らないのなら、会談なんてしないだろうし。

本人も迷ってはいるのだろうか?

単純に話が履行されるのかを疑っているのか? 思慮深い者ならば、敵対していたものをいきなり取り立てるのは、家臣の不満を招きかねず、最終的になかったことにするかもしれないと、当然想像するのかもしれない。

どうすれば信頼してもらえるか。

血判状でも作ればいいか。

クランは調略成功のためなら、大抵のものは出すと言った。自分の血を少し差し出すくらい問題はないだろう。

それでもだめなら、理屈で説得するしかない。

ロビンソンとボランスはどう説得したらいいか迷っているみたいだ。

ここは私がやるしかないか。

「本当に郡長になれるかお疑いになられているのですか?」

「……いや、そういうわけではありませんよ。単に裏切る気はないと申しているだけです」

少し返答に間があった。

恐らくどうするか、リューパも迷ってはいるのだろう。

「クラン様とリューパ様で、血判状をお交わしになれば、必ず約束は守られるでしょう。クラン様にそう進言致します。恐らくお断りにはならないでしょう」

「……私は」

「リューパ様ほどのお方が、この砦の主に収まっているのは惜しいとクラン様も仰っております」

「……」

少し心が揺れてきているようだ。

「裏切りというのは私の名声を落とします。名声が落ちるという事は人心を集めることが出来ないということです。それで郡長になったところで、意味があるのかどうか……」

リューパは迷いを口にした。

なるほど裏切りで名声が落ちることを危惧していたのか。

「ここで裏切ってもリューパ様の名声が落ちる事はないと思います。現在この砦は我が軍に追い詰められております。この戦力差で戦ってもはっきり言って勝ち目はない。ここまで追い込まれたのはリューパ様の責任ではなく、戦略を間違えたバサマーク、カンセスの責任に他なりません。本来この砦に援軍を出して、守るのが筋でしょうが、ベルツド郡長のカンセスは、果たして援軍を送る気なのでしょうか? 私の予想では、時間を稼げとの命令が来ていると思います。時間を稼げとは、つまり捨て石になれという命令であります。リューパ様ほどの方が捨て石になるのを、私は見ていることが出来ません。賢明なご判断をなさることを願っております」

自分でも驚くほど舌が回った。

貴族として生まれてから色んな人と話し合うようになって、少し話が上手くなったのかもしれない。

リューパは返答まで二日くれと言って、会談はそこで終わりになった。

とりあえず感触は悪くないような気はした。