軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

27 これからあなたと過ごす日々は……

こうして、テオドール様と私は正式に婚約を結ぶことになりました。

でも、そこで問題になったのが、まだテオドール様と王女殿下の婚約破棄が正式に国王陛下に認められていなかったことです。

バルゴア領にまで押しかけてきた王家の使者達は、テオドール様を王都に連れ戻すことが目的だったと父が教えてくれました。

もちろん父はテオドール様を引き渡すことなどせず、使者達を追い返してくれました。その際に、テオドール様と王女殿下との婚約を、王女殿下の有責でただちに破棄するように強く言ってくれたとか。

そのおかげで、テオドール様は王女殿下と正式に婚約破棄ができました。王家からは多額の慰謝料がベイリー公爵家に支払われたとのことです。

それを聞いた私が「どうして慰謝料がベイリー公爵家に……。テオドール様に支払われるべきでは?」と不満を漏らすと、テオドール様は「これ以上、王家やベイリー公爵家の問題に巻き込まれないように自ら受取りを放棄したんですよ」と微笑みます。

「確かに、こんなに素敵なテオドール様がたくさんお金を持っているとわかったら、いろんな女性からモテて大変ですもんね!」

私がそう伝えると、テオドール様は「そういうことではないのですが……。それに、私のことを素敵だと言ってくださるのはシンシア様だけです」と言いながら私の手のひらにキスをしてくれました。

手の甲ではなく手のひらへのキスって、なんだか特別な気がするのは私だけでしょうか? ドキドキしてしまいます。

いつか私からもテオドール様にしてみようかな?

そうしたら、私も少しはテオドール様をドキドキさせられるかもしれません。

*

それから数か月後。

レイムーアの第三王子レックス殿下の罪があちらこちらで訴えられているそうです。

その慰謝料の支払い額は、とんでもない金額になっているとか。近々、王族から外されて刑罰を受けるのでは? というウワサも聞きます。

そういえば、テオドール様を刺したのは、なんとレックス殿下だったのです!

許すまじクズ男!しっかりと罪を償ってほしいです。

それと同時に、レックス殿下の護衛騎士の横暴な態度も問題になっているらしく。

彼らはレックス殿下と一緒に、あちらこちらでやらかしていたようで、こちらも慰謝料の支払い請求と共に、自分たちが行った罪にあった罰を受けることになりそうです。

そういえば、テオドール様の元婚約者だった王女殿下と弟のクルト様がご結婚したという情報も、最近、バルゴア領まで伝わってきました。

私はテオドール様とのお茶会のときに「では、クルト様が王配になられるのですか?」と聞いてみました。

優雅な手つきでカップをソーサーに置いたテオドール様は、小さく左右に首をふります。

「王女殿下は、婚約破棄騒動の責任を取る形で、王位継承権をはく奪されたと聞いています。なので、クルトと結婚して私の実家のベイリー公爵家に嫁入りすることになったらしいですよ」

「そうなのですね。ここは、愛し合うお二人が一緒になれて良かったと言うべきなのでしょうが……。私は王女殿下とクルト様がテオドール様にしたこと、許していませんから!」

テオドール様は私を見てクスッと笑いました。

「私のために怒ってくださり、ありがとうございます。でも、予想に反してあの二人はあまり幸せではないようです」

「え?」

テオドール様は一通の手紙を私に見せてくれました。差出人は元王女殿下のアンジェリカ様です。

その内容は『テオドール、私の元に戻ってきなさい。今なら許してあげるわよ』でした。

「はぁ!? なんですか、この手紙は!」

「どうやら、王女でなくなったアンジェリカ様にクルトは興味をなくしたようです。今は、王都の有名女優と不倫中だそうですよ」

「この短期間で破局する真実の愛っていったい!?」

クスクス笑うテオドール様は「怒っているシンシア様も素敵です」なんて言ってくれます。

手紙を見終えた私は少しだけ不安になってしまいました。

「テオドール様……」

「なんでしょうか?」

「その、私を置いて王都へ……行かないですよね?」

大丈夫だと思っても、どうしても不安になってしまいます。

だって、アンジェリカ様は、とても堂々としてお美しかったから……。

チラッとテオドール様を見ると、目を見開いて口を大きく開けていました。

「まさか、シンシア様は私がアンジェリカ様の元へ戻ると? 本気でおっしゃっているのですか?」

「えっと……」

テオドール様から深いため息が聞こえてきます。

「こんなに毎日愛を伝えているのに、まだ伝わっていなかったなんて」

「ご、ごめんなさい。私、つい不安になってしまって……」

「いいえ、私のほうこそ不安にさせるようなことをしてしまいすみません。まさか、この手紙を見せてシンシア様が不安になるなど思いもしませんでした。手紙を隠して、またカゲのときのような誤解を与えてはいけないと思いお見せしたのですが間違いでしたね」

テオドール様は端正な眉を少し下げ、悲しそうな表情を浮かべました。こんな顔をさせたかったわけじゃないのに。

私が反省している間に、テオドール様の表情は真剣なものに代わっています。

「やはり婚約だけではダメだ。結婚、そうだ、早く結婚しなければ。私達の婚約期間を縮めて結婚を早めるにはどうしたらいいんだ?」

「テ、テオドール様? 大丈夫ですか?」

私がおずおずと声をかけると、テオドール様はハッと我に返ったようです。

「なんでもありません」

そう言ったテオドール様は、輝くような笑みを浮かべています。でも、それはウソの笑顔です。テオドール様の本当の笑顔を知っている私にはすぐにわかってしまいます。

私が自分に自信を持てないことにより、テオドール様を傷つけてしまったんですね……。

私は椅子から立ち上がるとテオドール様の側に立ちました。

「テオドール様の愛を信じていないわけではないのです。その、少しだけ不安になってしまっただけで……ごめんなさい」

テオドール様の右手をつかみ、私は思い切ってその手のひらにキスをしました。

「愛しています」

頬を真っ赤に染めたテオドール様は、私を優しく抱きしめてくれました。

どうやら許してもらえたみたいです。勇気を出して良かった……。

こういう小さなすれ違いを繰り返しながら、私達はお互いを少しずつ知って、わかりあっていくのでしょうね。

テオドール様となら、それはきっと、とても楽しい日々になることでしょう。

第二部につづく