軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

物語の真実 side***

ーーsideセラフィーナ

「どういうこと? 未来って。あなたはもしかして転生者?」

ベリンダの、転生前とは違う大きな瞳が見開かれる。

「呆れた。この世界に転生した理由や何度も巻き戻った理由はわからないけれど、私がこうなった原因はあなたよ。私を殺しておいて、よくもまあ好き勝手しようと思えたわね。リン」

人を殺しておいて、反省も見られず自分のために動き回った前回と今回。

「あなた、セナなの? でも、殺し? 私はそんなことはしていないわ」

「もしかしてその事実も忘れたの? あなたが階段から私を突き落としたのよ。前回はうまく猫を被っていたみたいだけど、今回は初めから欲望丸出しだったからすぐにわかったわ」

都合の悪いことは忘れているのか、とぼけているのか。

私は勝手に付きまとわれ、被害妄想を拡大したリンに突き落とされ、気づけばセラフィーナに転生していた。

最後は覚えている。

学校の階段で、どん、と押され、目を見張りこちらを見下ろすリンの顔。それから、助けもせずにその場を去っていった。

「嘘よ。私は殺していないわ。あなたは勝手に落ちて死んだんだもの。そうよ、あれは事故だったの。だから、私は何も悪くないわ」

それから頭を抱えだし支離滅裂な言い分によれば、本人はセナを殺したことを都合よく忘れていたようだ。

言われて思い出し、殺すつもりはなかったのだと言い訳をぐだぐだと聞かされる。

謝ることもなく、当時の言い分であれが気に食わなかった、これが嫌だった、どうしてわかってくれなかったのか、親友だと思っていたのに裏切られたと思ったなど。

その後は、どれだけ自分が苦しかったかと訴えられた。

不愉快な騒音の中から必要な情報だけ要約すると、自業自得により二年後に私と同じ場所で死にこの世界にやってきたことがわかった。

場所がキーポイントなのか。転生の仕組みはわからないけれど、場所は何か繋がりがあるのかもしれない。まあ、そんなことはどうでもいい。

セラフィーナは今回の物語が始まるまで、変わり過ぎて関与できなくならないようこれまでいろいろ動いてきた。

自国での動きと同時に、ベリンダがあまりにも役に立たないため、パーシヴァルにルノセクト国の文化を気に入るように仕向け、交流を積極的に促したりもした。

ベリンダを視界に入れるたびに苦痛で、違う意味で大変だったが回帰を終わらせるためにできる限りのことはやった。

前回も今回も、パーシヴァルにはベリンダに返事を書いて甘やかすようなことはしないほうがいいと、助言する地味な復讐くらい可愛いものだ。

この国自体がもう鬼門だ。婚約も解消できやっと逃れられる。

「私はヒロイン、ベリンダなのよ。私がやり直すために巻き戻ったはずよ」

「ピンクローザを得ていないのに? これはあなたのための回帰ではないわ」

セラフィーナは自分の意志で動けるようになり、これで最後にするのだと血の滲むような努力と頭を働かせここまできた。

自分のために、ベリンダをここで潰すために、今度こそなんとしても物語を終わらせる。

「だったら、私は何のために……。それにあなたはなんのために?」

「そんなのあなたには関係ないし、知っても意味がないわ。まだわかっていないようだから、もう一度言うわ。これはあなたの物語ではない。誰もあなたを助けにこないし、見向きもしない。あなたは一生ここから出られない。私たちはあなたがいないほうが幸せなの。そう伝えたかっただけだから」

自分のことばかり。人を殺しておいて反省もせず言い訳ばかりで、彼女に何も望んではいないが関われば関わるほど心がすり減っていく。

「そんな……。だったら私は……」

悪縁を断ち切ることがセラフィーナの望み。

ベリンダは言葉を失い心ここにあらずだが、現実を突きつけ引導を渡せた。あとは必ず物語を終わらせればいい。

彼女のあとのことは知ったことではないと、振り返ることなく部屋を後にした。

◇ ◇ ◇

時は遡り、セラフィーナの前回の回帰時点。

すべての物語のイベントが終わり、セラフィーナは雨が降り続く外を眺めた。

「今回は少しずつ違った……。でも、イレイン様の怪我を防ぐことができなかった」

ベリンダは明らかに違う人格、転生者でありいくつか質問をして確信したが、自分を殺したリンであることがわかった。

自分の意思で動きだせるようになった時にはもう物語は進んでおり、何もできることはなく、唯一、ベリンダが自滅したことだけが救い。

ざぁぁと雨の音が聞こえる。

「いつまで、繰り返せば気が済むの……?」

これまでと違うけれど、どうしてもこれで終わりいだと思えず、深く息をついた。

ベリンダは自ら命を絶ってしまったと聞いた。きっとちやほやされなくて、現実逃避し命を絶ったのだろう。

初めてベリンダが途中からいなくなり、外の季節もこれまでと異なったが、また時は繰り返すのだろうか。

雨が止み、何度も見慣れた光に包まれていく。

――またこの光……。

少しは期待していた。けれど、納得のいかない結末にもう一度あればいいとも思っていた。

「次こそは自分の人生を。イレイン王女とともに幸せな道を。できることならベリンダに引導を渡して悪縁を断ち切りたい」

セラフィーナは、次こそは絶対終わらせるのだと両手を重ね祈った。