軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41.違和感の正体

「つまり、フェリシア様も転生者、もしくは回帰した方ということでしょうか?」

ひどく静かな声で質問を返される。その声音はどこまでも凛とし揺るぎない。

「私は転生者です。ベリンダ嬢が転生者で回帰者であること、ほかにも回帰だけした人物もおり、この世界には私だけではなく、記憶を持ったここでの展開を知っている人がいることがわかっています」

「回帰だけ……。そういう方もおられるのですね」

動揺もせず質問を返されたことに拍子抜けしながら、ここまできたら隠すことはせずセラフィーナの正体を見極めるべく質問を重ねた。

「セラフィーナ様はマッケラン嬢と同じ、転生者であり回帰者なのでしょうか? そのため秘密のルートも記憶があるため知っていたと」

「ええ、そうですね。秘密のルートは転生前の知識でどこに繋がっているかは知っていました。探し出したのはあの男ですが。だいたいベリンダと同じですね」

もしかしてと鎌をかけると、セラフィーナはあっさりとベリンダとの繋がりと転生者であることを明かした。

「なぜ、明かしてくれたのですか?」

質問にとぼけられる可能性もあった。そうなれば、この疑問は解けないままか解明に時間がかかっていた。

セラフィーナはぱちぱちと目を瞬き、外へと視線を向けた。しばらくそうしていたが、振り返るとにっこりと笑う。

「……先ほどだいたい同じだと言いましたが、ベリンダはおそらく一度だけの巻き戻り。私は何度もこの世界を巻き戻っていることに関係します。物語の始まりではすでに死んでいたあなたが、今回は生きていると知りずっと気になっていました」

「この世界を何度も……。それはつまり、何度も子供の頃に誘拐され、同じことが繰り返されていたと?」

表情に反し暗く沈んだような声音から、繰り返す回帰に対する苦痛が伝わってくる。誘拐され孤児としてつらい時期を幾度となく過ごしていたことを想像するだけで、私も胸が痛くなった。

「そうです。しかも、大事な場面では私の意思で動けない。今回の変化は前回から引き続き、イレギュラーなフェリシア様のおかげだとも思っています」

「物語を変えたかったということですか?」

「ええ。何度も何度も同じことの繰り返しは気が狂いそうになります。誘拐から始まり、パーシヴァル殿下との婚約。作られた動きは何のために生きているのかわからなくなる。だけど、前回から物語のヒロインであるはずのベリンダの動きがおかしくなった。波及するように少しずつ変わり始めていた。また巻き戻ったならば、私の思うように、ピンクローザを得ようと動いても構いませんよね?」

清々しく今回の事件に関与したことを認めたセラフィーナに、呆気にとられる。視線が合うとこれまでと変わらず穏やかに微笑まれ、私は気を取り直して質問を続けた。

「つまり、今回の事件、私たちの誘拐にも関わっているとお認めになるのですね?」

「それが最善で安全だと判断したので」

「安全?」

首を傾げると、ええ、とセラフィーナは静かに頷いた。

「そもそも私の目的は自身の意思で動けるようになること、そしてイレイン様の幸せです。そのためには必ず起きる窃盗に絡んでみるのも手だと準備をしてきました。本来は窃盗団の規模はもっと大きく、暴力を厭わない組織でした。そのため私の力では及ばないことはあり、自ら行動するほうが確実な場面もあったので」

それが今回、物語の展開に関与した理由らしい。

元騎士と対峙した際、怪我人を出さないように指示を受けていたと言っていたが、セラフィーナはベリンダと違い、目的のために誰彼構わず傷つけてもいいと思う人物ではないようだ。

本来の物語の細部まではわからないが、私が死に役にならずに好きに動いたことにより、物語に関係するはずだった店と従業員が話から外れたように、セラフィーナの動きによって変わったこともあるのだろう。

「セラフィーナ様は最終的にどうされたかったのですか?」

このような状況になっても変わらない、焦りもしない彼女を見ていると、説明を受けても彼女の真の目的がわからず混乱する。

どうしてこれほどまでに平然としていられるのか。

訝しんでいると、セラフィーナはそこで私をじっと見ていたが決意したようにふっと息をついた。

「先に謝っておきます」

「何をでしょうか?」

謝罪があるというが、私はどれを指しているのかわからずさらに首を傾げセラフィーナを見た。彼女はそこで申し訳なさそうに目元を伏せると、同時に頭を下げる。

「フェリシア様に疑われているのかと思い、動き出したものを止めることは不可能だったので、試すためにもあなたを巻き込もうと決めたのが先日の事件でした。怪我をさせたかったわけではなかったのですが、怖い思いとともに負傷させてしまい申し訳ありませんでした」

「あの場への誘導は意図的だったということですね」

私は何度か試され、何か誤解するような発言や仕草をしていたようだ。思い返しても、どれがどうかはわからないが、攫われるまでの過程がスムーズだった理由はわかった。

「ええ。どのみち窃盗団にフェリシア様は目を付けられていましたので、私が手引きしたほうが安心かと思いまして。ついでに、事件を解決してもらおうと可能な範囲で悪党どもも集めてみました」

「犯罪に手を貸したのですか?」

「私は何もしていませんよ。ちょっと知っている情報を流して時期をこちらが調整しやすいようにしてみただけ。だって、ピンクローザが盗まれることはたかだが一人の人間に変えることはできませんから」

「……そう、ですか。そう、なのかもしれませんね」

最後の言葉が胸に刺さり、私の声は頼りなくこぼれ落ちた。