軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

35.脱出

デュークが力を振り絞り、お互いに庇い合いながらなんとか私たちは脱出した。

「デューク! フェリスちゃん!」

「お二人ともご無事で……」

私たちの姿を見て、ユリシーズが心底安堵したように息をつき、セラフィーナはくしゃくしゃに顔を歪めた。二人にもとても心配をかけた。

「セラフィーナ様もご無事でよかったです。ユリシーズ様も助けに来ていただきありがとうございます」

「……フェリシア様たちがなかなか出てこられなくて、本当に心配しました。建物とは違う方向から出てきたのでびっくりしました」

労わるように私の手を掴んだセラフィーナの手首には縛られた跡が色濃く残り、彼女も私と同じように部屋に括り付けられていたのがわかる。心配して、治療よりも私たちが出てくるのを見守っていたようだ。

燃え盛る建物の前では懸命に消火活動が行われており、私たちの話を聞いた騎士は隣の建物と逃げ出したであろう男たちの捜索へと向かった。

私たちは被害が届かない場所まで移動し、そこで治療を受けることになった。

デュークの捻った足はものすごく腫れていた。

かなり無理をして移動したため悪化し、少し触れるだけでも激痛が走るようだがそれ以外は特に問題なく、ユリシーズは怪我もなくぴんぴんしていた。

普段から鍛えている男性陣とは反対に、私たち女性陣の見た目ぼろぼろだ。

同じように治療を受ける痛々しいセラフィーナの手首を見ながら、庭園に落ちていたブレスレットのことを思い出す。毎日つけていたそれは、きっと大事な物のはずだ。

「セラフィーナ様のブレスレットですが、襲われた時に拾ったものを落としてしまって……」

私がそのことを告げると、デュークがそれならと口を開いた。

「見つけた際にイレイン殿下がホリングワース嬢の物だと言っていたので、そのまま殿下に預けてある」

「そうですか……。お二人とも見つけていただきありがとうございます」

セラフィーナがほっと息をつきふわりと笑うと、ユリシーズが同情的に呟いた。

「後で知れることだが、中央の石は割れてしまっていた」

「そうですか……」

セラフィーナは複雑そうな顔をし、表情を隠すようにそっと伏せた。

「すみません。私が拾って落としたから……」

何かが割れた音を聞いたが、その時に踏まれたのだろう。

もちろんこのような事態になったのも、壊したのも私ではない。だけど、拾ってしまったから踏まれた可能性もあり、大事な物を壊された気持ちを考えると私まで悲しくなる。

セラフィーナは顔を上げると、ふるふると首を振りにこりと微笑んだ。

「そんな。フェリシア様は被害者です。それに、ブレスレット自体は無事でしたから問題ありません。割れた石も拾っていただいているでしょうし」

「ですが、とても大事にされていた物でしょう?」

「ブレスレットや周囲の宝石はイレイン様にいただき、中央にある石は孤児院で仲のよかった友人が別れにくれた物で大事にはしていました。その石が私を守ってくれたのでしょう」

そこでセラフィーナは、長い睫毛を瞬かせ懐かしむように柔らかな笑みを浮かべた。その笑顔からも、とても大事にしていることが伝わってくる。

それからゆっくりと私に視線を戻した彼女は、いつもの穏やかな眼差しを浮かべた。この短時間で完全に気持ちを切り替えたらしいセラフィーナの言葉に、私は静かに頷いた。

「妹さんの形見を取り返せずにすまない」

「私も聞かせていただきました。協力してもらっていたのにすみません」

「いいんだよ。あいつは僕の手で捕まえなきゃいけないんだ。まずは二人が無事でよかったよ」

デュークが眉間にしわを寄せて声をかけ、私も頭を下げると、ユリシーズは朗らかに笑う。

妹さんの形見の黄色の宝石をユリシーズは取り返すべく動いていると、地下にいる時にデュークから聞いた。

だが、そのような宝石はなく犯人は取り逃してしまい、ユリシーズの心中を思うと悔しさが増す。

カーティスが向かった店舗のほうも、同じく隠し通路があり隣の建物へと繋がりそこで脅されたなど何らかの事情で職人たちが働かされており、無事救出された。

周囲は建物の被害だけで済み、元騎士は収監される前にしっかり先輩騎士に思いっきり殴られ頬を腫れ上げ、鉱山の中でもつらい労働が科せられることが決まった。

こうして一部の犯人の取り逃し、特に火を放った、ユリシーズも捕まえたがっていた男は完全に姿を消しと完全に解決とはいかないが、ピンクローザは無事取り戻すことができ、事件は終息へと向かっていった。