軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20.情報共有

ジャクリーンたちと話すことがありすぎて、あっという間に時間が過ぎた。

いつもならデュークが迎えに来るのだが、今日はどうしても外せない用事があるとのことで一人帰宅の途につく。

ここ最近物騒なので心配そうにしていたが、私には護衛もついている。しぶしぶであったが本来の用事を優先しくれた。

その時の苦渋に満ちたデュークの顔を思い出し、苦笑する。

ドミニクの話を聞いた後だったら、もっとその辺の話し合いが長引いていたかもしれない。

そう思うと、このままではぎこちないで済んでいる今よりもっとすれ違ってしまう気がして、笑っていられないとふっと息をついた。

互いに気遣っているとわかるから大きな火種になっていないけれど、くすぶり続けるそれにどう触れていけばいいのか。

――そもそも、道中の心配はされるが、店や工房には行くなとは言わないのよね。

私が大事にしたいものをわかってくれていて、大事にしようとしてくれている。

だから、私のために自身の時間を調整して動いてくれるデュークに、私もデュークが無理をしていないかは常に確認するが、本人が大丈夫だと言うのでそれ以上言及できない。

「ほんと、どうしてこうなったのだろう」

好きな人と一緒にいたい。とてもシンプルで誰にも譲れない気持ちがあるのは、記憶を思い出した前も後もずっと変わらない。

だけど現実は、以前と比べて婚約者としてだけでなく恋人として大事にされて満たされるはずなのに、過ごしていくとそれだけじゃいられなくなっている。

溜め息をつきそうになり、私はぶんぶんと左右に首を振った。

「しっかりしなくちゃ」

デュークとの関係も悩みどころだが、物語の足跡がさらに近づいてきた気配にそれだけではいられない。

物語のことも、デュークのことも、私は一切諦めるつもりはない。デュークのことは、デュークと一緒にいる時に改善に向けて話し合っていこう。

今はドミニクが襲われたことを重く受け止め、何ができるか考えるべきだ。

職人の誘拐について物語ではどうだったのかはわからないが、王都で多発している窃盗事件、そしてユリシーズが話していた国境なき窃盗団の情報からして、いつ何が起こってもおかしくない状況だ。

だが、それらの情報はデュークや兄、そして彼らの上の者まで行き共有され、実際に警備は強化され捜査にも力を入れられている。

キーアイテムであるピンクローザは展覧会場にある。

現時点で私ができること、死に役回避のためにすべきことはと考えると、私だけが知る物語の記憶をもとに立ち回ることだと思う。

物語のヒロインであるベリンダがいない今、彼女と一緒に誘拐されるというメインイベントに関わっていたイレイン王女の動向を詳しく知り、窃盗団との繋がりを探っていくのが一番ではないか。

私はこのまま屋敷に戻る気になれず、王都の街を歩くことにした。

ひらめきのような、新たなことを求めていつもより周囲の様子をうかがっていると、背後から声をかけられる。

「フェリスちゃん、また会いましたね」

振り返ると、午前中に出会ったユリシーズが今度は一人で立っていた。

「ユリシーズ様! お一人なんですね。イレイン殿下たちはどうされたのですか?」

「今は女性たちだけの時間で僕は邪魔になったので、あとはベテラン騎士に任せてきました。お役ごめんになったので、探索でもしようかと歩いていたらフェリスちゃんの姿を見つけてラッキーと声をかけたところです」

軽やかに笑い私の横に立つと、ユリシーズが穏やかな眼差しで私を見た。

ユリシーズは距離を詰めるのがうまいと同時に、ヘーゼルカラーのこの瞳が見守るような色を湛えているのでどことなく安心感を覚える。

「そうですか。ちょうどお話ししたいことがあるのですが、少しお時間よろしいでしょうか?」

「もちろん。可愛い女性の申し出はいつでも受け付けていますよ」

いつもの軽口とともに、ぱちりとウインクされ笑う。

そこで私はドミニクが襲われたこと、そして何かあったら危ないからとの理由で、イレイン王女がこれまで来訪した宝飾店を時期とともに教えてもらえるようにお願いした。

私の話を聞き終えたユリシーズは、うう~んと唸り腕を組んだ。

「ああ~、かなりの店舗を回ったので全部思い出せるかな? それと職人の拉致未遂ですが、見立てておられるように無関係ではないと僕も思います」

「覚えている範囲でいいんです。イレイン殿下は立場もですが容姿も目立ちますし、宝石を集めていらっしゃる殿下も狙われたら大変ですから」

人まで狙われるのなら、王女だって危ない。

物語ではイレイン王女も攫われていたし、王女の好奇心から事件に巻き込まれる可能性は高い。

むしろ、そういった好奇心による行動を見て、厄介だと感じていたと取れないこともない。

イレイン王女がピンクローザを狙っている可能性はまだあるし、王女かその関係者が下見していたという線も捨てきれないままだが、ドミニクが襲われたことにより考えが少し変わる。

それらを判断するためにも、王女の行動を知ることは私にとって無駄ではないはずだ。

話すには長くなるとのことで近くの店に入り、王女のこれまでの王都での行動を教えてもらう。

だが、あちこちに顔を出しているらしく、ユリシーズ自身も事細かに覚えられないほどだと言うことで、明日セラフィーナに確認し、放課後に再度教えてくれることになった。

今日聞いただけでも、実際に窃盗があった店も何軒か被っており、有名店なので不思議ではないが、事件の日時と正確に照らし合わせてみないとなんとも言えない。

――これはさっそく調べてみないと。

その内の近くの数軒をそのまま流れで一緒に回り、必要なら今後も付き合うと言ってくれたユリシーズと別れた。