軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第337話:帝国への対応

〜カイト視点〜

「王様も貴族も、驚きっぱなしだったなっ!」

ガタガタと揺れる馬車の中、オプスが興奮気味に話している。

最初は「王様とか無理!」って緊張してたのに・・・

「うるさいオプス。カイト、お疲れ様。上出来、なんだよね?」

「うん。「飛空団」をお披露目して、飛行許可を得られたし、『獣人族』も国王の名で、カーラルド王国民として認められた。そして、ダーバルド帝国を攻めることについても話せたし、研究所の件はかなり強く言えたと思う」

今回の目的は無事に果たせた。

交渉ごとではないし、レーノたちとのシミュレーションで、こうなることは想定できていたけれど、やはり緊張はしたなぁ・・・

「それにしても、『クルセイル大公領の全戦力』って、脅しすぎだろ・・・。俺が身震いしたわ」

オプスって、本当に馴染んだよね・・・

コトハお姉ちゃんの前では、もう少し畏まった感じになるんだけど、僕らの前だとこんな感じ。

正直に言えば、嬉しいんだけどね。『ワーロフ族』の他の同年代の子も段々と慣れてきたし、『獣人族』全体や領民全体にも広がると嬉しいのだけど。

「あれくらいは脅す必要があるの。まだまだ、馬鹿な貴族は多いみたいだから」

キアラが呆れきった様子で答える。

コトハお姉ちゃんのブチギレと、続く王宮による粛正で減ったらしいけどね。

「とにかく今は、上手くいったことを喜ぼう。まだ王都でやることもあるし、気を引き締めてね」

「はい」

「おう」

♢ ♢ ♢

王都にあるクルセイル大公領のお屋敷。

最初に王都に来たときに手に入れ、レーベルたちが交代で入り、働く者たちを鍛えてきた。

ここで働くのは、アルスさんを筆頭にゼット村の生き残りの人たちや、王都で雇用した人たちだ。

王都で雇用した人たちは、旧ラシアール王国時代に貴族の屋敷で執事やメイドとして働いていた人たちが多い。

縁もなく外部からの雇用になるが、そこはレーベルたちに任せた。いろんな意味で、人を視る目はあるだろうから。

お屋敷に到着すると、裏手には『赤竜』が複数いるのが見えた。

無事に、お屋敷の庭に着陸できたようだ。

「お帰りなさいませ、カイト様、キアラ様。オプス殿もお勤めご苦労様です」

「ただいま、レーベル。「飛空団」のみんなは問題なく?」

「はい、と申したいところですが少々問題が」

「問題?」

「はい。この屋敷を購入した当初は、「飛空団」を想定していたわけではなく・・・。要するに、『赤竜』が待機する場所が足りません」

「ああ、そっか。今はどうしてるの?」

「4体は王都の外に待機させています」

「そっか・・・。今、中で休んでいる『赤竜』たちには、適宜外にいる子と交代するように伝えておいて」

「畏まりました。既にシェニファー殿が差配しておりますので、そのようにお伝えしておきます」

「うん。それで、問題のスペースだけど・・・」

屋敷を小さくすることはできないし、お金って結構あったよね?

さっき魔法薬とかを献上した見返りはお金になりそうだったし・・・

「レーベル。うちの周りのお屋敷、買えないか検討してみて」

「・・・畏まりました。先ほど確認した限りでは、3軒のうち1軒には人がいたようですので、用途も含めて確認して参ります」

人がいたっていう場所は、うちの端だから、仮にそこが無理でもそれなりのスペースは確保できるはず。

王都のお屋敷は敷地もそれなりに広いものを購入したんだけど、やっぱドラゴンが複数寛ごうと思うとね・・・

レーベルの話だと、少なくとも隣接する2つは、貴族が念のため押さえたお屋敷っぽいし、多少色を付ければ購入できそうかな?

休憩するのもそこそこに、僕たちは次の予定に向けた準備を進める。

まあ、ラムスさんを通しての予定が、いきなり王宮になったことで、結構手間を飛ばせたんだけれど。

「とりあえず、あと行くのはギブスさんのところと、冒険者ギルド、商業ギルドだね」

「はい。といっても、冒険者ギルドはガッドのギルドと協議した結果を伝えるだけです。商業ギルドも、同様です」

「そうだね」

冒険者ギルドへは、現在の領都へ支部を出す話をしに。クライス砦、かなり混雑してるからね・・・

冒険者など外部からの流入は、現在建設中の領都は制限する予定。一方で、現在の領都は、外部へ公開する都市にする予定で、冒険者も活動の拠点にしてもらいたい。

まあ、多くの冒険者は『ファングラヴィット』すら倒せないから、採集が基本になるんだけどね。

商業ギルドでは、キアラが登録する。

クルセイル大公領が設立する商会のトップは、キアラになるからだ。

これは、キアラ自身の立候補もあり、コトハお姉ちゃんの後押しもあって決定した。

まあ、実際のところは、少なくともキアラが学院に通っている間は、領の業務の一環として商会業務も行うので、名前だけ。

とはいえ、現状、キアラの立ち位置が不明確なところを、少しでも安定させたいという多くの意見が反映された。

・・・・・・他の方法を決断できたら、良かったんだろうけど・・・

「サイル伯爵家ですが、いかがいたしますか? まだ日も高いですし、この後も選択肢ですが」

「・・・そうだね。先触れ出してもらって、時間あるか確認をお願い」

「承知しました」

ギブスさんに用事があるというか、コトハお姉ちゃんの伝言をサーシャさんに伝えるのがメインなんだけどね。

そうしてレーノが、部下の1人に先触れの指示を出そうとしたとき、

「失礼いたします」

レーベルが部屋に入ってきた。

ん? もう買えたの?

「どうしたの?」

「はい。今し方、先触れが参りました」

「参りました?」

「ええ。第1王子ベイル殿下、第3王子ダン殿下がいらっしゃるようです」

「・・・ええ?」

♢ ♢ ♢

僕の前にはカーラルド王国の第1王子にして王太子、ベイル殿下。第3王子にして軍務卿のダン殿下の2人が座っている。

王城での話では足りず、追加で話をしたいといった打診があるとは思っていたけど、思ってたよりかなり早かった・・・

「まずはいきなりの訪問を許してほしい」

「いえ。王族の方を迎える準備ができておらず、失礼いたしました」

このお屋敷、部屋の数は多いんだけど、お客さん、それも王族を迎えるに足りる部屋の用意はできていなかった。

とりあえず、一番広い部屋を急いで片付けたのだけど、お二人を少し待たせてしまった。

「気にしないでくれ。いきなり押しかけたのは俺たちだ」

ダンさんの言葉でこの話は終わり。

本題に入ろう。

「ありがとうございます。それで殿下方。この度は・・・」

ベイル殿下が話した内容は、まずは2つ。

「飛空団」の飛行、そして『獣人族』について認めた内容の再確認。改めて、「飛空団」は王国内を自由に飛び回る許可を得たし、『獣人族』は国王の名の下にカーラルド王国の国民と認められた。

また、研究所への攻撃、その後の処理についても一任することを明言された。「王宮は一切関知しない」と。

実は研究所の前にも、いくつか実験施設らしき場所を破壊している。それはもう、跡形もなく綺麗に。

今回狙う研究所は、その大本みたいな施設らしく、レーベルもすぐには気づけないほど念入りに隠されていたらしい。

なのでおそらく、この研究所で、『魔人』に関する研究結果は完全に消え去るのだけど、改めて王宮が関与しないと聞けて安心した。

「次にクライスの大森林沿いにあるというダーバルド帝国の砦についてだが、王宮からの要請という形にしてはどうだろうか?」

ダンさんがそう提案してきた。

王宮からの提案ということは、うちの独断ではなくなる。

王宮としては、ダーバルド帝国対策に乗り出していることのアピール兼事後の砦利用の正当化かな?

そう思い聞いてみたところ、その通り。

うちとしても、「クルセイル大公領が暴走した」などの戯言に付き合う必要がなくなるし、王宮にも恩を売れるしで、損はない。

元々、砦は手放す予定だったしね。

「感謝する。後ほど、王宮からの要望書を持ってこさせよう」

「分かりました。砦と研究所への攻撃は、早ければ僕たちが戻り次第着手します。完了したら、王宮にも伝令を送ります」

「感謝する」

ここまでは僕たちにとっていい話ばかり。

わざわざそのために王子が2人も?

いや、そんなわけ・・・

「最後になりますが、カイト殿。ダーバルド帝国の皇帝を狙うとの点、こちらの準備が整うまでの間、待っていただきたいのです。」

なるほど。

ベイル殿下の本題はこれか。

「お伝えしましたように、帝都を攻撃し皇帝を討つというのは、あくまで案の1つです。ですが、殿下がそのように仰る理由を伺っても?」

「ええ。・・・・・・我々は、近い将来、ダーバルド帝国を解体する予定です」

「解体、ですか?」

「はい。ダーバルド帝国をさすがにどうにかすべきというのは貴領のお話にもありました。現在、先にコトハ殿が制圧したケーリンという町を中心に帝都と距離を置き、我が国に恭順の意を示している地域があります。まずは、そこを我が国へ併呑し、切り取ります。コトハ殿のおかげか、凝り固まった人間至上主義が綻び、また支配層が軒並み消えたことで、柔軟な若い層が町を率いているようでして」

「協力的な町を受け入れるのは分かりますが・・・、それ以外の町というか帝国の大部分はどうするんですか?」

「皇帝を退位させ、新たな皇帝を即位させた上で、ケーリンの町を中心に新たに興す公爵家に従わせます。事実上の属国化です」

「新たに興す公爵家というのは、第2王子殿下が?」

「はい。ガインです。ゆくゆくは宰相として王宮に戻ってもらう予定ですが、父も宰相も健在ですので、しばらくの間はダーバルド帝国への対応に集中させます」

「つまり、その準備が整い、いざ現在の皇帝を退位させるというときに、うちに攻撃してほしいと」

「そのとおりです」