軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第314話:戦士の死

オプスたちから説明を受けた『ワーロフ族』の里の状況は、思っていたよりも酷かった。

攻めてきたダーバルド帝国軍の数はおよそ300人。そして戦いの途中で、気持ちの悪い魔力を振りまきながら異形の姿へと変じた兵士が5人いたらしい。

普通の兵士は、『ワーロフ族』の戦士にとっては取るに足らない敵だったが、異形の姿の戦士、『魔人』は別物だった。

「里の戦士たちが、あの強い戦士たちが、あっという間に吹き飛ばされて・・・。親父や戦士の中でも特に強い何人かが、手分けして相手してたんだけど・・・」

オプスが最後に見たのは、『魔人』の猛攻の前に押されている、父親の姿だったそうだ。

それが、ちょうど2日前。

「とにかく、時間が無いね。アーロン、どう?」

「はっ。急ぎ、里の方に斥候を放っております。戦闘の有無、状況、『ワーロフ族』の戦士の状況、敵兵の状況等、戻り次第、作戦を立案する予定でしたが・・・。ここは、進軍しながら状況に応じて判断するほかないかと」

「・・・出たとこ勝負か」

「ええ。騎士ゴーレムを前に出し、敵の奇襲に備えます。今のお話を聞くかぎり、『魔人』以外のダーバルド帝国兵は大したことないようですので、連れてきた騎士ゴーレムの半分もいれば十分かと。残りの騎士ゴーレムと騎士で、『魔人』を片付けます」

「そうだね・・・。『魔人』は、私とホムラも出るよ」

「・・・それは」

「分かってる。レーノにも言われたし、アーロンが言いたいこともね。確かに、今回の発端が私にあるとはいえ、もう領の問題。だから、騎士団が担当するのは分かってる。でもね、そうは言っても私が始めたこと。そもそも、私の一番得意なことだからさ」

「分かりました」

「ふふっ。『魔人』の中で特にヤバそうな奴、たぶん魔力が多い奴かな? それは私がやる。ホムラは私の指示で『魔人』を」

「心得ましたわ」

「アーロンたちは残りを。場合によっては、私とホムラで『魔人』は対処して。残りを任せるかも。『ワーロフ族』の戦士を助ける必要もあるし、臨機応変に」

「はっ」

「って感じで、オプスもいい?」

少し置いてけぼりになっていたオプスに問うと、問題ないとのこと。

この場所やここにいる『ワーロフ族』は、オプスに付き従っている戦士やその見習たちで守ることになる。率いるのはゼップらしい。

そして、オプス、ベイルと4人の戦士が私たちの案内兼『ワーロフ族』の戦士との顔つなぎ役として同行する。

♢ ♢ ♢

里に向け、慎重に、だができる限り素早く移動していた中、突如怒声が聞こえてきたかと思うと、多数の金属音が響き渡った。

「戦闘音か!? 各員、戦闘用意!」

アーロンが素早く指示を出し、騎士たちが抜剣し騎士ゴーレムや分隊ごとで戦闘隊形をとる。

すると、

「申し上げます!」

戦闘音のする方向から、1人の騎士が走ってきて、そう叫んだ。

どうやら、斥候に出した部隊の1人らしい。

「何事だ?」

アーロンの問いかけに対し、

「はっ! ここから400メートルほどの場所で、『ワーロフ族』の戦士と思われる数人が、ダーバルド帝国の兵士と思われる一団に今にも処刑されそうになっておりましたので、曹長の判断で介入。目下、戦闘中です」

「分かった。・・・ここから先は白兵戦か。コイル少尉、その『ワーロフ族』を救え」

「はっ!」

アーロンの指示で、コイル少尉の率いる騎士団第2中隊第1小隊に所属するいくつかの分隊が走って行った。

「コトハ様。我々も、後を追いたいと思います。『ワーロフ族』の戦士であれば、敵のより詳細な情報が聞けるかと」

「そうだね」

「はっ。よし、我々も行くぞ!」

それぞれの隊長格がそれぞれ返事をして、斥候について救出に向かった方向へと進む。

到着すると、既に戦闘は終了していた。

「コイル少尉、報告を」

アーロンの指示に従い、

「はっ。当方に戦死、負傷はありません。斥候に出していた部隊もです。騎士ゴーレム1体が戦闘不能、2体が中破。『ワーロフ族』と思われる男性13名を保護しました。現在、応急手当中です」

「ご苦労。破壊された騎士ゴーレムは手筈通りに。『ワーロフ族』と話せるか?」

「可能です」

「よし。コトハ様、オプス殿。一緒にお願いします」

「うん」

「はい」

騎士の案内で、『ワーロフ族』が治療を受けている場所へと移動した。

元は家だったようだが、壁が大きく破壊されており、中の家具もぐちゃぐちゃだった。

そんな建物の中で、複数の『ワーロフ族』が横になっていた。

「師匠!」

建物に入ると、オプスが声を上げた。

「師匠! 師匠!」

オプスは横になっている1人の大きな『ワーロフ族』に向かってそう叫ぶ。

だが、オプスが必死に声を呼びかけるも反応はない。

師匠と呼ばれた彼には、右肩から左の脇腹にかけて、一本の深い傷がある。その周りや服は血で真っ赤に染まっているが、今は流血している様子はない。それどころか、見るからに重傷だが、うちの騎士たちが治療している様子もない。

そっと、魔力を探ってみると、既に魔力の流れが完全に停止していた。横たわっているのに、胸が上下している様子もない。

既に・・・・・・

「オプス!」

オプスに気づいた『ワーロフ族』が、彼と「師匠」の周りに集まってくる。

どうやら「師匠」以外に、亡くなった『ワーロフ族』はいないようだ。

「みんな・・・。師匠は・・・」

「デステイさんが、俺たちの盾になってくれたんだ・・・。既に戦いでボロボロだったのに、俺たちが首をはねられる直前に、俺たちの間に出て・・・。デステイさんがいなければ、この人たちの助力も間に合わなかった・・・」

そうだったんだ・・・

少し落ち着いた様子の彼らに話を聞くことができた。

『ワーロフ族』の戦士たちは、里での戦闘に敗れ拘束された。一部の戦士には処刑が宣告され、少し離れたこの場所で処刑されようとしていたところ、デステイさんが最後の力を振り絞って、ダーバルド帝国兵の前に出て彼らを庇った。その一瞬の攻防が、偵察に出ていたうちの騎士団が介入する隙を生み、間に合った。

デステイさんは、オプスたちの「師匠」。若手の戦士を鍛えるベテランの戦士だったらしく、オプスはもちろんベイルや多くの戦士が教えを受けていたらしい。

「里には、50人ほどの戦士が残っています。里長も・・・」

「50人!? 残りのみんなは・・・」

「・・・・・・・・・」

元々どれだけの戦士がいたのかは分からないが、魔人やダーバルド帝国兵との戦いで戦死したのだろう。もしかしたら、彼らの外にも処刑された戦士がいるのかもしれない。

「アーロン・・・」

「はい」

「準備はできてるんだよね?」

「はい」

「なら、早いとこ行くよ」

「はっ」

動くことのできない戦士の護衛に、騎士ゴーレムを数体残し、里へ向かう。

『ワーロフ族』の戦士から聞いたダーバルド帝国兵の所業に、うちの騎士たちはブチギレ中。冷静さを欠いたり、指示に従わなかったりするようなことはないが、明らかに怒っている。

もちろん私も。とりあえず、『魔人』はこの手でぶっ飛ばす。

そうして堂々と里へ入ると直ぐに、ダーバルド帝国兵がこちらに気づき、

「敵襲!」

と叫ぶ。

結局、ここまで気づかれることはなかったが、この先は関係ない。敵はまだ200人は残っているようだし、『魔人』も3人はいるらしい。多くの犠牲を出しながらも、『ワーロフ族』の戦士は2人の『魔人』を討ち取った。

間違いなく、ミリアさんとは比べものにならない強さなのだろう。失速するまで、ジャームル王国相手に無双していた『魔人』と同一のものかもしれない。

「・・・処刑に向かった連中は、あいつらに?」

ダーバルド帝国兵がつぶやいているが、その通り。処刑の場に介入したうちの騎士は、処刑に関わっていたダーバルド帝国兵を皆殺しにしている。

今回、基本的に敵を生かしておくつもりはない。いや、完全に降伏すれば拘束するが、拘束を狙いに行くことはない。大切なのはうちの騎士と『ワーロフ族』。ダーバルド帝国兵に逃げられれば、私たちの情報が漏れることになるが、構わない。というか、集団で、おそらく連中の十八番の魔道具を用いての行軍だったからこそ魔獣・魔物に襲われなかったのであって、バラバラに逃げ出せば、あっという間に腹の中だろう。

「ダーバルド帝国兵に告ぐ! 我はアーロン。カーラルド王国クルセイル大公領騎士団の騎士団長である。『ワーロフ族』からの救援要請に応え、クルセイル大公領当主、コトハ・フォン・マーシャグ・クルセイル大公殿下の名の下に、貴様らを討つ!」

アーロンによる宣言。

それと同時、騎士ゴーレムを先頭にうちの騎士がなだれ込んだ。

「かかれぇ!」

少し慌てた様子のダーバルド帝国兵。

「せ、戦闘隊形! 『魔人』を出せ!」

「捕虜を盾にしろ!」

そんな声が飛ぶ。

私も今は、一戦闘員として、ダーバルド帝国兵に『石弾』を浴びせていく。特に、「捕虜を盾に」と叫んだやつ。こいつから確実に仕留める。

そうして、度重なる戦闘でボロボロになっている『ワーロフ族』の里は、再び戦火に包まれた。

そして本命の『魔人』が姿を現したのだった。