軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

83 連絡

私からの泣きがはいり、ようやくゲームを中断して運転席の方に来てくれた、サビーネちゃんとコレットちゃん。本当に、いい加減にしてくれないと、泣くぞ!

ふたりは、ゲームをやりながら色々と話したらしく、すっかり打ち解けて、仲良くなっていた。

よし、計画通り!

……あんまり仲良くなり過ぎて、私を仲間外れにしないでね。

あ、復活の呪文は、ちゃんとサビーネちゃんがメモしたらしいから、安心。

そのうち、書き間違えてのたうち回るに違いない。

「じゃ、そろそろ昼2の鐘(15時)だから、連絡を入れるよ」

そう言って、私はHF通信機を操作した。

走行中は電力の心配がないので、無線機は電源を入れっぱなしである。なので、陛下や使節団から連絡があれば、すぐに分かる。クルマに乗っていない時は仕方ない。また後で呼び出して貰うしかない。

まぁ、そんなに急ぎの用事はないだろうし、普通ならば帰国するまで全く連絡できないのだから、それくらいは我慢して貰おう。

だから、定時連絡とは言っても毎日ではなく、もし何か用件があれば、大体この時間くらいに、という目安でしかない。わざわざ毎回待ち受ける必要はないけれど、あえてこの時間を選んでわざわざシャワーを浴びたり車外で体操をしたりはしない、という程度だ。

そして今回は、出発後、初めての連絡である。

「チェックメイトキングワン、チェックメイトキングワン、こちらホワイトルーク、どうぞ」

『おお、こちらキングワンだ。感度良好!』

一発で返事がきた。どうやら、通信機の前で、ずっと待っていた模様。

『キングセブンは元気か?』

昨日別れたばかりだから、そんなにすぐに病気になったりしないって!

あ、通信の時は、固有名は使わず、コールサインで統一するようにしっかりと念を押しておいた。私が領地と連絡する周波数は変えてあるから、使節団の馬車以外で傍受される心配はないんだけど、通信している時に間者が聞き耳を立てていたりすると、誰と連絡を取っているかが丸分かりになるので、それを防ぐためである。

王都邸の通信機は取り外して自宅に持ち帰っているので、そっちの心配はない。

使節団の通信機は、用事がある時以外は電源を切っておくよう指示してある。屋根の小さなソーラーパネルだけでは充電能力に不安があるし、移動中に王宮や私から連絡しなきゃならないことは、まずないだろうから。

もし使節団から私にどうしても連絡が必要になった時は、そう急ぎでなければ、かなりの間隔を置いて数回呼び出すか、私達同様に電力の心配がないため電源を入れっぱなしで、おそらく常時誰かが番をしているであろう王宮に連絡し、王宮から何度も呼び出すことによって私に連絡して貰う。一応、クルマで移動中には、昼2の鐘(15時)頃にはなるべく車内にいてモニターしている、と伝えてあるし。

こちらから急ぎの用がある時は、使節団の移動速度から割り出した大体の予想位置に近い町に私が転移して、使節団が通過したかどうかを確認して位置を局限、その後、連続 跳躍(リープ) で目視捜索すればいい。

街道上にいることは間違いないのだから、見つけるのは簡単だ。

使節団は、常時受信態勢の王宮とはいつでも連絡が取れるのだから、そちらに時々状況報告を入れて貰えば楽ちんだ。

「キングセブンは元気。……いささか、元気過ぎ。

予定通り、昨日本隊から離脱、自由行動にはいりました。その他、報告事項は特にありません」

『分かった。こちらも、特にない。では、サ……キングセブンをよろしく頼むぞ!』

「了解です。では、今回はこれにて」

『うむ』

というわけで、通信は無事終了。

この時間帯だと、7MHzはよく飛ぶ。

あ、使節団と別行動を取ることは、勿論王様には事前に許可を取ってある。さすがに、王様の了解もなくサビーネちゃんを連れ出すようなことはできないよ。そこまで常識知らずじゃない。

「で、今夜は宿に泊まろうかと思うんだけど……」

「「反対!」」

……宿に泊まったら、ゲームができませんか、そうですか。

暗くなっても、ヘッドライトを 点(つ) ければ走り続けることはできる。

しかし、そうまでして急ぐ必要もない。本隊は遥か後方だし、のんびりゆっくり、旅を楽しめばいい。

それに、ヘッドライトを点けて走ると、文字通り、闇夜に提灯。数十キロ彼方からでも目立ちまくる。盗賊達の大半は、そんな怪しい光に手出ししようなどとは思わないだろうけど、おかしな連中を引き寄せないとも限らない。

というわけで、暗くなってきたところで、道から外れて停車。

夕食は、キッチンでレトルト物を温めて、簡単に。

コンロの燃料は5KgのLPGボンベ。このクルマには電力を使うものが多いから、電磁調理器ではなく、ガスコンロにした。シャワーとヒーターも、全てガス。でないと、いくらクルマのエンジンとは別に発電機を搭載していても、電力に不安が出てしまう。ガスなら、ボンベを交換すれば済むから、気が楽だ。

そして、食事が済むと、サビーネちゃんとコレットちゃんは、ふたり揃ってゲーム機に……、って、だから、私に構ってよぉ!

翌朝は、パンとコーヒーに、リンゴだけの簡単な朝食を済ませて、すぐに出発。

サビーネちゃんとコレットちゃんは、眠そうだ。そりゃ、夜更かしの習慣がないのに、昨夜はかなり遅くまでゲームで盛り上がっていたから、当たり前だ。

……こりゃ、ゲーム時間の制限をしなきゃ駄目かなぁ。

小・中学生の子供を持つ母親の気持ちがよく分かったよ。いや、ホント。

今日は、国境を越える。

まぁ、国境通過といっても、別に壁もなく警備兵もいない、単なる立て看板があるところを通過するだけなんだけどね。

不審者の確認や徴税は、街にはいる時だ。こんなだだっ広いところにぽつんと衛兵が立っていても、何の意味もない。

さすがに連日車中泊、というのはアレなので、今日は宿に泊まる。いくら反対意見が多くても!

いや、寝台は、就寝モードにした車内の方が快適だよ? 発電機の音を気にしなければ、エアコンも使える。食事も、レトルトとか乾麺とか色々あるし……。

でも、ゲームをやりたいがために毎日車中泊って、それは違う! 何か、致命的に間違っている! 旅の醍醐味が全くない!!

ゲームなら、自分の家で……やらせると、引き籠もりになるから駄目だあぁ!

しまったなぁ、とんでもないものを与えてしまったぞ……。

などと考えているうちに、国境を示す看板を通過。

これからは、他国だ。自分の子爵家当主としての身分も、サビーネちゃんの第三王女としての身分も、もうその国の人々にとっては『他国の下級貴族』、『他国の継承順位が低い王族』に過ぎない。その国の貴族や王族の命令の前には、大した権威があるわけじゃない。

いや、勿論、他国の貴族や王族に危害を加えたとなれば大問題になるし、外交上、かなりまずいことになる。だから、普通は丁重にもてなすに決まっているし、おかしなことにはならない。『普通は』ね。

でも、『到底断ることなどできない軍事同盟の加盟打診に来た、驚異の新式武器を持つ小娘。しかも王女連れ』にちょっかいを出したくなる者がいないとも限らない。『それなりの権力を持つ者』や、『それなりの権力を持つ者になりたい者』、とかが。

それに、使節団と合流している時以外は、必要もないのにあまり大っぴらに身分をひけらかすつもりはない。

そんなことをすれば、行く先々で誘拐犯に狙われたり、領主に招待されたりして、面倒くさい。そんなことになったら、旅を楽しめなくなってしまう。

いや、私はともかく、サビーネちゃんは、これでも王女様だからね。悪党にとっては、身代金を取るなり交渉に使うなり、捕らえるメリットは多いし、貴族達にとっては他国の王族にコネができる絶好のチャンスだ、見逃すはずがない。だから、身分は隠して、普通に旅をする。

え? こんなクルマで旅をして、普通も何もない?

それはそれ、これはこれ! そういうことは、心に棚を作って、そこに入れておくんだよ。

でも、必要な時には、躊躇なくサビーネちゃんの身分を利用するよ、勿論。

権力とコネとお金は、必要な時に使うためにあるんだよ。それらは、自分が持っている武器なんだから。

たとえそれが親のおかげであっても、そういう親を持っている、ということ自体が、自分が持っている武器であり、戦力なんだから。

敵と戦う時に、『お前は親から受け継いだ強力な武器を持っているから、それを使うのは卑怯だ』とか言われても、知らんがな、である。

大口径の銃は非人道的? 使うのは卑怯?

じゃあ、22口径の非力な銃で、数十発の弾を撃ち込んでなぶり殺しにした方が人道的なのかな? 127ミリ速射砲とか、銃より口径が大きいけれど、使っていいのかな?

そもそも、武器というものは、相手より強力なものを、相手よりたくさん用意するのが戦いの鉄則だ。卑怯じゃない武器、非人道的じゃない武器なんか、存在しないよ。戦いは、騎士の果たし合いじゃないんだから。

人を傷付け、命を奪うための武器は、これ皆すなわち、非人道的なり、だ。

ハーグ陸戦協定でも、「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること」を禁じているのみであって、口径なんか決めてないし。

というか、じゃあ、必要な苦痛を与えるためなら、何を使ってもいいのか?

ま、いいんだろうね。殺すことが必要だ、という理由で、武器を使ってもいいんだから。

……いかん、話が逸れた。

ま、そういうわけで、私は『正義と自分のためならば、どんな悪事も躊躇しない』という、ダーク・ヒーロー信奉者なのである。ふはははははは!

「……今のが、ミツハが妄想に浸っている時の顔ね。こういう時は、話し掛けても聞こえてないから、肩を掴んで揺するか、しばらく待ってるといいから」

「うん、わかった」

コレットちゃんが、サビーネちゃんに何やら講義をしていた。

う、うるさいわ!