軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

504 探 偵 2

う~ん……。

こりゃあ、しばらくはサビ・コレコンビはこっちに連れて来られないな。

勿論、ベアトリスちゃんもだけど。

仕方ない。私と離れている時に襲われたり誘拐されたりしたら、大変だものね。

いくら人質だから殺される可能性は低いとはいえ、虐待されたり、さっさと殺しておいて生かしている振りをするとか、考えられる危険は多い。

犯罪者は、まともな者には考えられないようなことを平気でやるから、常識で判断しちゃいけないのだ。

……うん、この件が片付くまでは、みんなを連れてくるのはナシだな。

早急に何とかしないと……。

* *

「何よ、ソレ!」

「ふざけないでよ!」

「ミツハ、大丈夫なの?」

……ほら、こうなるんだよ……。

サビーネちゃんは、『ソサエティー』のみんなとかなり仲良くなっているからねぇ。

王女殿下としてではなく、異国の貴族の娘、私の妹として可愛がってくれるみんなと交流するのが楽しいみたいなんだよ。

ベアトリスちゃんは、日本語の勉強で精一杯であり、まだ新大陸の言葉は勉強していない。

でも、サビーネちゃんの通訳で自国より文明が進んだ国を観光するのを楽しみにしていたからなぁ……。

以前新大陸に連れて行ったことはあるけれど、あれは調査に同行しただけであって、観光なんて碌にできなかったし。

あ、勿論地球のあちこちを観光しているけれど、地球はあまりにも文明が隔絶し過ぎていて、異世界に迷い込んだみたいな感じだったらしいのだ。

……いや、事実その通りなんだけど……。

それで、『自国より少し進んだ感じ』であるヴァネル王国あたりが、自領の発展や『ベアトリス商会』の金儲けのネタを探すのには丁度いい、とか……。

そして、自分の都合ではなく、私のことを案じてくれている、コレットちゃん。

……うう、やはり真の友は、コレットちゃんだけか……。

「あ」

「あ」

「姉様、大丈夫?」

「ミツハ、しばらくあの国へ行くのは控えた方がいいんじゃない?」

私がうるうるとした目でコレットちゃんを見詰めているのに気付いたらしく、慌ててそんなことを言ってきた、サビーネちゃんとベアトリスちゃん。

……遅いわっ!!

* *

「いや、とにかく、そういう事態に参謀役の私がいなくてどうするのよ!」

「そうだよ! そういう時に護衛役の私がいなくてどうするんだよ、ミツハ!!」

あ~、確かに頭脳戦ではチビっこくて腹黒い参謀、人呼んで『チビくろ参謀』、サビーネちゃんがいてくれると助かるんだよなぁ。情報の分析・解析とか、それから導かれる推測とかで……。

でも、危害を加えられたり人質にされたりする可能性がある以上、絶対に連れていくわけにはいかない。

……そしてコレットちゃん、あなたは私の護衛じゃないからね!

私がコレットちゃんを護る側だからねっ!

もう、二度とコレットちゃんを傷付けさせるものか!!

……でも、確かに頭脳戦、心理戦ではサビーネちゃんがいてくれると助かるんだよね。

うむむ……。

あ、そうだ!

「別に、参謀役は現地じゃなくてもできるよね?

集まった情報を分析するのは、どこだっていいよね?

だから、サビーネちゃんはこっちで私から聞いた話から推測してよ」

そう、『安楽椅子探偵』だ。

頭が良ければ、現場に足を運ぶ必要はなく、他者から聞いた情報だけあれば自宅の安楽椅子に座ったままで事件が解決できるというヤツ。

シャーロック・ホームズの兄であるマイクロフトや、ミス・マープルとかが代表格のヤツね。

「うっ……」

よし、サビーネちゃんが反論できずに言葉に詰まったぞ。

「護衛は、現地でなきゃできないよ!」

コレットちゃんが、そう怒鳴ってきたけれど……。

「だから、コレットちゃんは私の護衛じゃないって! 私がコレットちゃんを護る側だよっ!!」

このコレットちゃんの誤った認識を、どうにかしなきゃなぁ……。

* *

物産店の2階に、檻を設置した。

あの、監獄島の 囚人(プリズナー) 達の前に姿を現した時に、自衛のために私が中に入っていたやつね。

あの後、出番がないから領地邸の倉庫に置きっ放しになっていたのだ。

あの檻は鉄製で大きく、格子棒だけでなく目の細かい金網が張ってあるから、剣も槍も通らない。

出入り口は付いていないから、カギを壊して、というわけにはいかない。

そしてサイズ的に、戸口や窓からは運び出せないのだ。

……そう、この檻に出入りするためには、私の転移能力がなければ駄目、というわけだ。

これ、どうしてもリアルタイムでサビーネちゃんの指示が必要な時に備えて用意したんだよね。

サビーネちゃんにこの中に入ってもらって、私が小型のヘッドセットとバッグの中に仕込んだ小型の無線機で指示を仰ぎ、ここから応答してもらうというわけだ。

檻の中には、無線機とバッテリーだけでなく、飲食物とポータブル簡易トイレも入れておくから、安心だ。

もし不測の事態が起きて私が戻らなくても、その時には官憲が調べに来るだろうから、助け出してもらえるだろう。

ま、大声で叫べばお隣の警備隊詰所まで聞こえるだろうし……。

あ。退屈しないように、コレットちゃんも一緒に入ってもらえばいいか。

そうすれば、いざという時には、コレットちゃんの怪力で鉄格子の格子棒をねじ曲げて、隙間を広げて脱出できるかも。

一応、金網を切断するためにワイヤーカッターも入れておくか……。

この檻に入っていれば、 中身(・・) を誘拐することも、危害を加えることもできないだろう。

そもそも、私と同じく、殺すのではなく誘拐できなければ意味がない。

……それに、金網は剣や槍は通さないけれど、9ミリの拳銃弾は通す。

両足と両肩を撃ち抜いて逃げられなくしてから大声で助けを求めれば、お隣の詰所から警備兵のおじさん達が飛んでくるだろう。

ちゃんと、『 物産店(うち) で火事や騒ぎが起きたら、遠慮なく突入してください』と言ってあるからね。

……まあ、出入り口のない檻に入ったふたりの少女を見て、驚くかもしれないけどね……。

よし、UFO撃退の、準備はできた!!

あ、UFOっていうのは、『U(うちの子に手出しする) F(ふざけた) O(男共)』のことね。

『O』は、(女共)でも可。