軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

442 その後 1

「……というわけで、活動実績を作ります」

「何を、突然……」

雑貨屋ミツハでのお茶の時間に、急に真面目な顔で何やら言い始めたミツハ。

今は、ミツハとサビーネのふたりだけである。コレットは、領地邸にいる。

そして、どうやらミツハはサビーネの突っ込みをスルーして、話を続けるようであった。

「いや、今回の事件は、ティーテリーザちゃんとラステナちゃんの焦りによる 勇(いさ) み足が原因なんだけど、……それって、他のメンバーも多かれ少なかれ抱いている感情だと思うんだよね……。

新大陸の『ソサエティー』の時は、最初からメチャクチャ順調だったからそういうのは全然気にしていなかったんだけど……。

でも、こっちの『ソロリティ』では、対外的には、まだ何も成果を上げていないからね。

……いや、貴族家息女の親睦組織なんだから、別に成果を上げる必要なんかないんだけどね。

みんなが仲良く交流して、情報を持ち寄り合い、そして困ったことが起きれば協力し合う。

事件が起きないということは、平和で問題がないということだから、歓迎すべき状況のはずなんだ。……そのはずなんだけど……」

「夢多き御令嬢方は、それでは物足りない、と?」

「うん……」

「それで、マッチポンプで何かやらかそうと?」

「いやいや! そんなつもりはないよ! そういうのは、もしバレたら私も『ソロリティ』も、一瞬で信用を失うじゃん……」

「ということは、 バレなければいい(・・・・・・・・) 、と?」

「…………」

「……いや! いやいやいやいや!!」

思わず、 そういう方法(・・・・・・) を考えかけて、慌てて首を左右に振ってその考えを振り払うミツハ。

「姉様、そういうのは、焦っておかしなことをしない方がいいよ。

無理をすると、大抵は失敗して、より状況が悪化するものだよ」

「やっぱり、そう思うか……」

サビーネちゃんの判断力には一目置いているミツハは、計画を断念し、がっくりと肩を落としたのであった……。

* *

あれから、数週間が経過した。

アルシャちゃんの傷口……断端部の状態は、良好らしい。

そして既に、義手の訓練が始まっている。

傷口が塞がって断端部の耐圧性が向上し、義手が装着できるようになるまでに、アルシャちゃんをしばらく ヤマノ家(うち) で預かって、座学での教育を行った。

義手の、電子機器の部分を水洗いしたり、バッテリーの扱いを誤って感電したりしないように、基礎的な科学知識を教える必要があったからね。充電設備の扱い方も教えなきゃならないし。

……そしてなぜか、サビーネちゃんとコレットちゃんも一緒に授業を受けていた。

まぁ、講師は私だから、別にいいんだけどさ……。

更に、ついでだからと、うちのベテランメイド達が空き時間を利用して、勝手に『メイドの極意』とか『メイドの裏技』だとか、怪しい授業を行っていた。

……私が 助け損なった(・・・・・・) として気に病んでいることを察知されてしまい、使用人達がアルシャちゃんに対して大サービスしたらしいのだ……。

これもまた、サビーネちゃんとコレットちゃんが一緒に授業を受けていた。

いや、王女様と家臣候補が、メイドの仕事を覚えてどうするんだよ!

……まぁ、いいけどさ……。

そして勿論私も、アルシャちゃんが自信を持てるよう、義手に直接関わること以外にも、メイドとして役立ちそうな知識を色々と教え込んだ。

地球の料理とか、お祖母ちゃんの知恵袋的なこととか……。

ガラス窓は新聞紙で 擦(こす) るといい、と教えたら、『しんぶんし、って何ですか?』と聞かれたりしたけれど……。

うん、ここには新聞はなかったね。

まあ、とにかく色々と教えたわけだ。日本の洗剤とか、研磨剤……金属磨きのピカール……とかの使い方やらを……。

勿論、アルシャちゃんからのお掃除用具の発注は、いつでも受ける。

代金の請求先は、侯爵家。

アルシャちゃんの価値を上げるために色々と画策したけれど、経費を負担するのは、私でもアルシャちゃんでもなく、それによる恩恵を受ける侯爵家だよね、常識で考えて……。

うむうむ。

アルシャちゃんには、お掃除関連だけでなく、お菓子とかも売ってあげる。

……こっちは、 発注者(アルシャちゃん) の自費だよ、勿論。

アルシャちゃんは、転売を考えるような子じゃないけど、多分同僚に 無料(ただ) で分けてあげるのだろうなぁ……。

原価くらいは取るように言っとくか。

とにかく、そういうわけで、アルシャちゃんへのメイド英才教育と物資支援が行われたのだ。

今は、それらの教育も終わり、侯爵家に戻って、片手でできる仕事をやりながら義手の訓練を行っている。

時々、転移で地球に連れて行って、診察や訓練の指導とかも受けている。

勿論、その時は私が通訳に付いている。

アルシャちゃんは、『姫巫女様に通訳をしていただくなど、 勿体(もったい) ない……』って恐縮してるけど、それくらい大したことじゃない。

転移した後は、通訳をコレットちゃんにお願いして私は別の仕事をすることもあるしね。

……サビーネちゃんに通訳をお願いするとアルシャちゃんが卒倒しそうだから、さすがにそれはない。

まぁ、そんな感じで、まったりとした日常に戻っていたのだけど……。

* *

「……招待状?」

「どれどれ……、あ~、ヴィボルト侯爵家の、叙爵記念日兼夫妻の結婚記念日のパーティーの招待だね。

節約のためにパーティーの回数を減らそうと、結婚は元々パーティーが行われる他の記念日に合わせる家が多いんだよね……。

まぁ、令嬢が『ソロリティ』のメンバーだし、例の件もあるから、姉様を招待してもおかしくはないけど……」

私が、ティーテリーザちゃんの家から届けられた招待状を怪訝そうな顔で見ていたら、横からヒョイと奪い取ったサビーネちゃんが、そんなことを言ってきた。

「『ソロリティ』のメンバーは大半が 未成年(15歳未満) だけど、姉様は貴族家当主だから正式に招待しても問題ないからね。

……でも、それだけで、姉様を招待するかなぁ……。

姉様をパーティーに招待したがっている貴族家は多いけれど、姉様がそういうのに全部出られるわけがないのは常識だから、その程度なら普通は遠慮して招待しないと思うんだけどなぁ。

他の『ソロリティ』メンバーの家からは、今まで 招待状(そんなの) は来なかったでしょ?」

「あ、うん……。さすがに、本人の誕生パーティーは招待が来るけれど、御両親やお家の歴史的なイベントにはお呼ばれしないね……」

そうなのだ。だから、招待状を見た時に、少し戸惑っていたんだよね……。

「とにかく、アルシャちゃんのこともあるから、一応は顔を出してみようかな」

「うん。勿論、私もついて行くよ」

あ~、子爵を招待したら王女殿下がついてきた、なんて、先方を驚かせてしまいそうだな。

出席の返事に、 オマケ(・・・) がついて行くことを、ちゃんと書いておかなきゃなぁ……。

さすがに、侯爵家に不意打ちで恥を掻かせるわけにはいかないからねぇ……。