軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

431 婚約破棄ざまぁ大作戦 5

実は、ロテリカは、このふたりに対してそんなに怒っていたわけではない。

浮気相手は、ただローレンツを好きになり、どうしても結婚したかっただけなのかもしれない。

相手に婚約者がいても、自分の方を好きになって、婚約を解消してくれるならば……。

そう考えることに対して、女性として、そう責める気はなかったのである。

いや、婚約者持ちの男性にコナを掛けるのはあまり褒められたことではないが、それでも正々堂々と戦うならば、それもまた女としての途であろう。

ローレンツとロテリカの婚約に関しては、浮気相手には何の関係もない。

それは、ローレンツとロテリカ、そして両家の問題である。

なので、両家の間で婚約の解消の話し合いをして、ロテリカに落ち度があったわけではないという証明のために、幾ばくかの賠償金を貰えれば、それで良かったのである。

あのようなやり方でさえなければ……。

ロテリカに対する冤罪や誹謗中傷、侮辱行為が行われたことは大問題である。

しかし、それらは全て、ローレンツの仕業である。

今回、ロテリカに一方的に婚約破棄を叩き付け、冤罪やら誹謗中傷やらを浴びせかけたのはローレンツであり、浮気相手はあの場で直接虚言を弄したわけではない。

そのためロテリカは、浮気相手の女性に対しては、それほど不愉快に思っているわけではなかったのである。

ローレンツに関しては……。

家同士の契約である婚約を大勢の前で一方的に破棄し、冤罪と侮辱により名誉を 毀損(きそん) された。

それも、ロテリカだけでなく、実家の名誉を大きく傷付けられたのである。

……しかしそれでさえ、ロテリカはそんなに怒ってはいなかった。

ただ、自分の今までの努力が無に帰したこと、あんなに大勢の前で非難されてはもう自分は結婚できないであろうこと、そして家の名誉を傷付けてしまったことが悲しかっただけである。

なので、自分のことはどうでもいいけれど、兄弟の縁談に悪影響が出ること、言い掛かりで賠償請求され家に迷惑が掛かることが心配であったため、冤罪だけは晴らしたいと思っていた。

しかしそれが『ソサエティー』の仲間達のおかげで何とかなった今、もうローレンツのことなどどうでもよかったのである。

家同士で決められた婚約であり、別にロテリカはローレンツのことを愛していたわけではない。

ただ、決められた婚約者と結婚するのが当たり前のことだと思い、これからローレンツのことを愛し、良き妻になろうと努力していただけなのである。

そしてさすがのロテリカも、あのような裏切り行為を行ったローレンツに対しては、もう寄り添う気など皆無であった。

一度平気で人を裏切った者は、また、平気で人を裏切る。

それが悪いこと、決してやってはならないことだとは思っていないのだから、当たり前である。

なので、そういう者には、二度と関わらない。

それが、普通の者の考え方である。

なのでロテリカは、もうローレンツのことなどどうでもよく、二度と関わるつもりはなかった。

……向こうから関わってこない限り。

そしてロテリカは、ローレンツのことを そんなに(・・・・) 怒ってはいなかったというだけであり、全く怒っていなかったというわけではない。

それに、『そんなに怒っては いなかった(・・・・・) 』、……過去形である。

あのままであれば、自分の名誉が回復されれば、それで良かった。

それ以上のことは別に望んではいなかった。

しかし、再び絡んできて、自分のこれからの人生の邪魔をしたり、大切な仲間達に敵対するというならば、話は別である。

自分だけのことであれば、まだ我慢できる。

しかし、仲間達の敵となるならば、……叩き潰す!

ロテリカは、もはや戦う 術(すべ) を持たぬ 雛鳥(ひなどり) ではなかった。

そしてロテリカには、強力な 味方(仲間達) がいる。

……負けるはずがなかった。

……じろり。

冷徹な眼で、ローレンツを見るロテリカ。

そこにはもう、他者の言いなりになる気弱な少女の面影はなかった。

「く……っ……」

がくりと肩を落とし、意気消沈のローレンツ。

どうやら、ようやく状況を認識したようである。

既に、ローレンツの隣には、浮気相手の姿はない。

どうやら、ローレンツより先に状況を察して、撤退したようである。

駄目だと思ったら、躊躇なく、即座に損切りする。

その判断力の高さは、ロテリカへの冤罪や誹謗中傷は全てローレンツに任せて、自分はローレンツ以外の者には具体的なことは一切口にしなかったという見事な保身能力と併せて、ミツハ、ミシュリーヌ、そして『ソサエティー』のメンバー達から、それなりの評価を受け、一目置かれることとなった。

そのため、以後も『ソサエティー』のメンバー達から特に敵視されることもなく、ほとぼりが冷めた後は普通に婚活を再開。窮地を見事に乗り切ったその危機管理能力を評価されて、少々危ない道を渡っている下級貴族からの縁談がちらほらとやって来るようになるのは、また後の話である。

* *

「ミツハさん、『 ソサエティー(うち) 』のメンバーじゃない貴族の女の子達から書簡が届いているわよ。内容はどれもほぼ同じで、全部で8通……」

みっちゃんちへ行くと、会った早々、みっちゃんからの第一声がそれだった。

うむ、どうやら立ち直ったようだ。

……いや、あのパーティーの後、舞台女優のようにノリノリで芝居がかった台詞を連発したことを思い出して、羞恥で顔を真っ赤にしてたんだよね、みっちゃん……。

家に帰った後、自室のベッドで転げ回ってた。

そして、しばらく転げ回った後、私がそれを見ていることに気付き、『どうしてあなたがいるのですかああぁ〜〜っっ!!』とか言って、枕を投げつけてきたんだよねぇ。

いや、あんまり真っ赤だから、心配して付き添っていたんだよ。

それを忘れて転げ回るくらい、羞恥で頭が飽和状態だったのだろうなぁ……。

……と、今はそれより、手紙のことだ!

「どんな内容なの?」

「『婚約破棄されました。助けてください』ってことですわ……」

えええ? それって……。

「それって、絶対、『ソサエティー』に加入させてもらおうという、偽装婚約破棄だよね!」

「でしょうね……」

みっちゃんも、それくらいのことは当然分かっていたらしい。

切れ者のみっちゃんなんだ、当たり前だ。

そして当然、私の返事は……。

「……知らんがな……。

却下! 却下ああァ〜〜!!」