軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

422 もう、メチャクチャだよ 1

デリンジャーは、銃身に直接弾を装填しているから、小さい割にはそこそこの威力がある。

そして王宮の警備兵は、そんなに重装備じゃない。

戦場なら、自分が死なないことが第一優先だ。

だけどここの兵士の第一優先は、王族や貴族を暗殺者や少人数の敵から護ること。

なので、重くて動きづらい金属鎧なんか着けていない。

自分の身を護ることよりも、素早く動いて自分の身体を盾として王族や貴族を護ることが、最優先事項なのだから……。

そのため、身に着けている防具による防御力は、そんなに大きくない。

特に、その防具で防ぐべき攻撃としては対象外である、銃弾とかに対しては。

そして超至近距離だから、なるべく致命傷にはならない部分を狙うこともできる。

……サビーネちゃんと、コレットちゃんなら。

私は、多分2発くらい外してる。

当たったのは、急所を外れている……と思う。多分……。

4人共、動いている……、ね。よしよし……。

まあ、とにかく、国王の命令がないのに勝手に、それも攻撃の意思を示したわけでもない他国の少女に向かって剣を抜こうとした、明らかに異常な行動を取った4人の兵士は、全員が床に転がっている。多分、致命傷はナシで……。

他の兵士達も列席している貴族達も、顔を引き攣らせているが、誰も動こうとはしていないし、何も喋らない。

まぁ、私達が銃を撃った姿勢のままで静止しているからね。

これが、私達が次の行動に移るべく動いていたなら、兵士達は国王や貴族達を護るために反射的に動いただろうと思うよ。

でも、私達は明らかに正当防衛、理不尽な攻撃から自分の身を護るための行動を取っただけであり、それ以上のことをする様子がない。

そのまま撃ち続ければ、ここにいる者達を皆殺しにできるのに。

下手に動けば、自分達も、雷に打たれて殺される。

そしてそれは、自分達兵士だけでなく、貴族や国王の身にも危険が及ぶ可能性がある。

また、一番の理由として、国王からは何の指示も命令も出されていないということがある。

先程の4人の兵士は、明らかに越権行為である上級貴族の命令に従っており、普通ではない。

そんな状況では、動きようがないだろう。

状況が、マズい方向……兵士による実力行使……に動けばすぐに転移できるよう、周りの状況を把握しつつ、ここは国王の動きを待つしかない……と考えていたら……。

「皆の者、動くな!

失礼した、姫巫女殿。危害を加えるつもりはない、そちらも 矛(ほこ) を収めてくれ」

よし、理性的な判断をしてくれた!

何とかなるかな。

「こちらから招いて、わざわざ来てもらったのだ。我らに悪意があるわけではない。

また、ただ招かれて来ただけの姫巫女殿にも、わざわざ我が国との戦争の発端となる行為を行う理由もあるまい。

今の 不幸な出来事(・・・・・・) は、皆、そこのバラル侯爵の勝手な越権行為によるもの。

……案外、先程の姫巫女殿の指摘が当たっておったりしてな……」

ありゃ、急に態度を改めたな。

方針を、強要から懐柔策へと変更したか?

「客人に襲い掛かったその4人と、命令したバラル侯爵を取り押さえ、地下牢へ入れろ。

ああ、死なないように、手当をしてやれ。

後でじっくりと取り調べる。

その者達は誰とも接触させず、また、捕らえられたことを牢の番人以外には知られないようにせよ。ここにいる者達も、他言無用だ。

宰相、直ちにバラル侯爵家王都邸を急襲、家族を捕らえると共に、証拠物を押収せよ。

領地邸にも、情報が伝わる前に調査部隊を向かわせろ」

「はっ!」

おお、急展開だ!

……というか、国王、元々あの侯爵のことを疑っていたのかな?

でないと、他国の下級貴族がちょっと煽った程度で、これはやり過ぎだろう。

こりゃ、邪魔な有力貴族を潰すために、いいように利用されたか?

あ、そうだ!

「ここへ来る途中、明らかに私達を待っていたと思われる賊の一団に襲われたんですよ。

そのあたりも、証拠がないか確認をお願いしますね」

「「「「「「……え?」」」」」」

あ~、皆さん、ご存じなかったか……。

まぁ、これで、私が最初から機嫌が悪かった理由を察してくれただろう。

そして、今、私達が無傷でここにいるということと、先程のデリンジャーの威力から、襲った盗賊達がどうなったかということも……。

ここにいる人達は、小型拳銃の命中精度も連発の弾数も、何も知らないのだからね。

いや、実際には『ビッグ・ローリー』で振り切っただけだから、殺すどころか、怪我ひとつ負わせていないんだけど……。

まぁ、とにかく、私の出番は終わったよね?

「それでは、私の役割は終わったようですので、私達はこれにて……」

そして、何度も練習したカーテシーをバッチリ決めて、と……。

「……待て! 待ってくれ!

病気の子供は……」

あ、本当にいるの?

「その子、本当にお孫さんですか?」

「……あ、いや……。

そっ、そうだ! 国民は皆、我が子供であり、我が孫であるぞ!!」

うわ、そう来たか!

……でも、国王として、いい台詞ではあるんだよなぁ。

まあ、多分、私の『女神の御寵愛を賜りし愛し子』の能力を試そうとか考えて、原因不明の奇病に罹っている子供を用意したのだろう。

平民の子供だと、診察の時に少し言葉を交わせばバレバレだから、多分貴族の子女の中から探して……。

それに、かなり極端な偏食でない限り、船乗り以外が脚気や壊血病になることは稀だ。

平民には、そんな偏食ができるような贅沢は許されないから、こういう世界では船乗りと都会の金持ち以外は罹らない病気だものね。

わざわざ茶番に付き合ってあげるつもりもないし、奇跡の力でどんな病気も治せる、なんて噂が広まるのも、御免被る。

……だけど……、まぁ、いいか……。

「今日、ここで起きたことは、今後一切口にしないとお約束ください。

でないと、私も、問われれば仔細を明らかにせねばならなくなりますので……」

そう言って、後ろを振り返り、サビーネちゃんを右手で指し示した。

……あ、まだ、デリンジャーを握ったままだ。

「ゼグレイウス王国の王女殿下が、この国の王宮内の謁見の間で、剣を抜いた兵士達に、私と共に襲われたこととかを……」

そして、サビーネちゃんが、カーテシーで御挨拶。

うん、私のとは比較にならないくらい、洗練されていて綺麗だよ……。

「「「「「「な、ななな!!」」」」」」

うん、そりゃマズいだろう。

いくら格下の国であっても、謁見の最中に、未成年の女性(に見える)3人に、兵士達が剣を抜いて襲い掛かったなんて話が周辺国に広まったら……。

そしてオマケに、反撃されて軽くあしらわれた、となると、更に……。

よし、固まってる固まってる!

さすがに、私のお付きの侍女が王女殿下だとは、思ってもいなかっただろうからね。

「あ~、病気の子には、野菜や果物を食べさせてあげてね。

野菜は、あまり熱を通さず、生か蒸す程度で。

とりあえず、それで1カ月くらい様子を見てください。

それでは、ごきげんよう!」

手首から先だけを軽く振って、……転移!

「「「「「「消えたああああァ!!」」」」」」