軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

410 ソロリティ 15

……で、どうしてあんなに不機嫌そうなのかな、アデレートちゃん……。

揉め事が無事解決して、メンバー達の結束が強まった。

ハッピーエンドじゃん!

「美味しいところを、全部カトルナちゃんに持って行かれたからだよ。

アデレートちゃん、完全に空気だったじゃないの。

そして、『ソロリティ』に下級貴族のヒロインが爆誕!

そりゃ、面白くないよね、アデレートちゃんとしては……」

いや、今回は、さすがにうっかり喋っていたりはしないよ。

これくらいは、簡単に私が考えていることを推察できるんだよ、サビーネちゃん……。

そして、相変わらずの、見事な洞察力だ。

私以外の者の思考も、ある程度は読めるんだよね、サビーネちゃん。

その人の思考過程をシミュレートして……。

さすサビ!

で、まぁ、確度85パーセントくらいのサビーネちゃん予想を教えてもらったわけだけど、……うん、まぁ、正解っぽいなぁ……。

アデレートちゃんは、『ソロリティ』の会長という自分の立場が私に支えられたものであり、自分だけじゃあ何もできないと思っているから、あまり余裕がないんだよね。

だから、何とかみんなからの信頼を集め、求心力を強めようとして頑張っているんだ。

そこへティーテリーザちゃんとラステナちゃんからの突き上げが来たものだから、焦って私のところに相談に来たわけだけど……。

そしてその問題は解決したけれど、それはアデレートちゃんを完全に 蚊帳(かや) の外にした解決手段であり、カトルナちゃんというヒロインを誕生させてしまった。

……そりゃ、頭が痛くなるか。

何とか、いいフォローの仕方はないかなぁ……。

サビーネちゃんなら、何か思い付いてくれるかもしれない。

でも、ここで絶対的な上位者である王女殿下からのお言葉があれば、それは拒否できない 命令(・・) になっちゃうからなぁ。

それは、親睦団体である『ソロリティ』としては、ふさわしくない。

あああ、どうすれば……。

「アデレートちゃん、ティーテリーザちゃんを副会長に、そしてラステナちゃんをその補佐に任命してはどうかな?」

え?

今まで黙って推移を見守っていたベアトリスちゃんの突然の発言に、私もアデレートちゃんも、そして他のメンバー達も、ぽかんとしている。

「それと、カトルナちゃんをアデレートちゃんの補佐に……」

……え?

ベアトリスちゃん、いったい何を言って……、って、そうか!

今のままじゃ、いくら丸く収まったとはいえ、ティーテリーザちゃんとラステナちゃんの立場が微妙だ。そして、カトルナちゃんという新たなカリスマ令嬢が誕生して、『ソロリティ』内に勢力の偏りが発生する。

だから、上位貴族の纏め役ができるティーテリーザちゃんとラステナちゃんを副会長とその補佐にすることによって、ふたりが今までの立場と統率力を失わないようにして、なおかつアデレートちゃんと協力し合う立場につける。

そして、立場としては、あくまでも会長であるアデレートちゃんの方が上。

また、一瞬でメンバー達の人望を集めたカリスマ令嬢のカトルナちゃんをアデレートちゃんの補佐にすることにより、その人望をアデレートちゃんが利用できる。

カトルナちゃんは人たらしの才能があるけれど、それは意図してのものではなく、ただ彼女が魅力的な少女だということに過ぎない。

彼女自身は真面目で誠実、正義感溢れる好人物だから、アデレートちゃんにとってマイナスとなるようなことは絶対にせず、会長補佐という重職を懸命にこなしてくれるだろう。

……御両親も喜んでくれそうだし。

あ、御両親は、カトルナちゃんがクルバディ伯爵家とヴィボルト侯爵家ではVIP待遇、そして両家の御令嬢から大親友扱いされていることを知った時点で、泡を吹いて倒れちゃいそうだな。

そのことを伝える時には、ちゃんと御両親がソファに深く腰掛けていることを確認して、なおかつ執事やメイドさんを待機させてからにするよう、忠告しておくか……。

とにかく、ベアトリスちゃんの提案は、グッドアイディアだ。まるで、サビーネちゃんが言い出しそうなことだよね。

普段は温厚でおっとりした感じだけど、それはベアトリスちゃんが本気で何かをしなきゃならないという機会がないせいだ。

ずっと 実家(侯爵家) にいるベアトリスちゃんが、侯爵様やイリス様、お兄さんや使用人達がいるというのに、自分の才覚を活用しなきゃならない事態なんて、起きるはずがないよね。

……でも、ベアトリスちゃんは侯爵様とイリス様の子供だよ。

そして、15年間もそのふたりを見ながら育ったんだ。

だから、『やる時には、やる』。普段は、本気を出していないだけ。

ニート男性の言い訳じゃなくて、本当にそうなんだよ。

さすが、以前サビーネちゃんの 先輩指導員(チューター) を務めていただけのことはあるよ。

「「「「え……」」」」

驚いて固まっているのは、指名された本人達と、アデレートちゃんだけ。

他のメンバー達は皆、納得の表情と、歓迎の表情だ。

伯爵家と侯爵家の令嬢達は、今回の件で上位貴族の者の立場が悪くなることを危惧していただろうけど、これなら何の心配もなくなる。

そして下位貴族の令嬢達にとっても、変に上位貴族との関係が混乱するのは望ましくないし、貧乏男爵家の7女という、下位貴族の中でも最底辺であった少女の大活躍と大抜擢は胸の 空(す) く思いであり、上位貴族との垣根を踏み越えたその友情は、『ソロリティ』における楽しい未来を期待させるに十分なものだっただろう。

あ、サビーネちゃんが、邪悪な笑みを浮かべている。

多分、アデレートちゃんとその取り巻きを取り込む計画の中に、カトルナちゃんも組み入れようとか考えているな……。

天才悪魔と、天然天使。

……何か、私の頭の中に、こんな言葉が書かれたフリップが浮かんだ。

『混ぜるな危険!!』

大丈夫だよね?

……だよね?

* *

そして、一段落した後は、化粧品の件。

いや、もう一件落着したから、必要ないような気はするけれど、せっかく準備しているし、みんなには戦闘力を上げて、当初の目的である、私の弾避けとしての任務を全うしていただきたい。

なので、問題がなくなったので予定を少し変更して、みんなの前でサビーネちゃんとベアトリスちゃん、コレットちゃんの3人による、アデレートちゃんへの化粧実演会にした。

その結果……。

……失敗した!!

オマエら、さっきのしおらしい態度は何だったんだよ!