軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

402 地図にない島 2

あ~、失敗した!!

ビンゴカード、わざわざ作らなくても、売ってた! 数字部分に何も書かれていないやつが!

それを、数字をビンゴカード用の規則性の範囲内でランダムに割り当てるソフトウェアを使って、プリンターで印刷できるんだってさ。

なら、その数字の部分のフォントをこっちの世界の数字に差し替えれば、いくらでも作れるじゃん。

あああ、事前調査の不足は、大損に繋がるなぁ……。

ま、今回用意したのがなくなれば、どこかのプログラマーさんに副業として依頼するか。

あ、数字フォントの作成は、あそこに頼むか……。

いや、こっちの世界の言葉で書類やら何やらが作れるよう、フォントの制作を依頼したところがあるんだよね。もう納入が終わっていて、使ってるよ。

あそこに頼めば、話もスムーズに行くか……。

初めて話を持ち掛けた時に、『ゼントラーディ文字ですかっ!』って言われたなぁ……。

そうそう、ボーゼス家では、イリス様がビンゴで賞品をゲットしたよ。

割と後の方だったから、あんまりいいものじゃなかったけど……、って、それは私が原価を知っていて、簡単に入手できるものだからそう思うだけか。

ここの人達にとっては、私とは価値感が違うものね。

侯爵様やアレクシス様、テオドール様は、残念ながらハズレ。

ベアトリスちゃんは、サビーネちゃんやコレットちゃんと同じく、 運営側の人間(ゴッドサイダー) なので、不参加。

まあ、この3人は今回のビンゴゲームの賞品程度のものは、いつでも入手できるからね。

……とはいっても、ゲームで当てる喜びと高揚感は、また別物なんだけどね。

あ、イカンイカン、今日は用事があったんだ……。

* *

「あ、明日、みんなを海岸の砂浜に集めてね」

「え? えええええっ! 今まで、正式には一度も 囚人(プリズナー) 達の前には姿をお見せにならなかったというのに……」

うん、まぁ、これだけじゃ、私の意図が分からないか。

「何人か、恩赦で解放してあげようかと思って。

ベアトリスちゃんの成人祝いの恩赦だから、6号さん、あなたも入ってるよ」

「……え? えええ? ええええええぇ〜〜!!」

あ、地面に両膝をついて、泣き出しちゃったよ……。

「それで、あなたの役割を引き継ぐ人を決めたいんだけど……」

* *

「……それで、その後継者として、私が……」

「そうだ。

一見、見捨てられて放置されているように見えるが、姫巫女様は慈悲深いお方なのだ。

我々、 囚人(プリズナー) 達が本当に危機に陥った場合……重病、大怪我、水や食料の不足、仲間割れでの殺し合いが起こりそう、とか……には、それとなく援助してくださっているのだ。皆には知られぬよう、情報提供者である私を介してな。

そしてたまには、贅沢品を賜ることもある」

No.6の説明に、はたと膝を打つNo.28。

「……そうか! 時々海岸に漂着する、『波が荒れて、船の甲板から落ちたと思われる木箱』とか、『沈没した商船の積荷らしきもの』とかいうのは……」

「ははは! そう都合良く、工具や釘、釣り鉤や医薬品が入った箱が漂着するかよ!

そんなのを信じるなんて、お前、本当に凄腕のエージェントだったのかよ!」

「……はは、は……」

少し顔を赤くして、頭を掻くNo.28。

しかし、それも仕方ないであろう。

普通の状態であれば違和感を覚えることでも、こんな状況で海岸に漂着している木箱を見つけ、その中に渇望している物資があれば、何も考えずに飛び付くのも無理はない。

「……で、そういうわけで、俺は解放されて、お役御免だ。

そして、その任を引き継ぐのが……」

「……」

黙り込むNo.28に、No.6が 厳(おごそ) かに告げた。

「2年続いた、流刑島の守り役。……お前の番だ、No.28……」

「……それは理解した。だが、ひとつ聞きたいことがある。

なぜ俺なんだ? 俺は新入りだ。ここには俺より長い者が大勢いる。なのに。なぜ俺が選ばれた?」

No.28の至極尤もな疑問に、少し気の毒そうな顔で、No.6が答えた。

「……だからだ。お前は新入りだから、まだ当分はここにいるだろう? そんなにコロコロと情報提供者が代わると、説明やら何やらが面倒だから、だってさ……」

「…………」

それを聞いて、両手を地面について 項垂(うなだ) れる、No.28であった……。

* *

翌日、『姫巫女様からお話があるとの連絡が来た』ということで、 囚人(プリズナー) の皆が海岸に集まっていた。

時刻など分からないため、明るくなってすぐにやって来て、暇潰しに貝やら食べられそうな海藻やらを集めていたが……。

「 私、登場(アピア) !」

そこに、ミツハが現れた。

……2メートル四方くらいの 檻(おり) に入って……。

「「「「「「何じゃ、そりゃあぁ!!」」」」」」

皆がそう叫ぶのも、無理はない。

囚人(プリズナー) である自分達が入るのであればともかく、どうして姫巫女様の方が檻に入っているのか。

それも、鉄の棒で作られた頑丈そうな檻に、目の細かい金網が張られているという厳重さである。

「「「「「「あ……」」」」」」

何もなかったところへの唐突な出現に驚いて、思わず突っ込みの叫びを上げた 囚人(プリズナー) 達であるが、すぐにその理由を理解したようである。

ここにいる連中は皆、それなりに優秀なのである。

……そう。

この檻は、姫巫女様を閉じ込めるためのものではなく、『 囚人達から身を護る(・・・・・・・・・) ためのもの(・・・・・) 』なのであった。

これだけ頑丈で、かつ目の細かい金網が張ってあるとなれば、素手だろうが棒を使おうが、一瞬のうちに中の者に危害を加えることはできない。

コンマ数秒あれば、ミツハは転移で退避できる。

……そしてその後、ミツハがこの島にやって来ることは、二度とないであろう。

そもそも、ミツハの身に何かあれば、 囚人(プリズナー) 達がここから脱出する方法が完全に失われるのである。

ミツハ以外には、この場所を、いや、囚人島が存在することすら誰も知らないのではないか。

そんな状況で、ミツハに危害を加えようとする者など、いるはずがない。

それに、もしミツハを害して脱出できたとしても、 そんなことは(・・・・・・) 望んでいなかった(・・・・・・・・) 雇い主に、その情報を隠蔽するために 消される(・・・・) 可能性は、決して低くはないだろう。

ミツハもそれくらいのことは分かっているのであろうが、楽観視して無用な危険を冒すつもりはない、ということなのであろう……。

「皆さんに、お知らせがあります」

皆、姫巫女様に聞いてもらいたいことがあった。

自分達は決して姫巫女様に敵対する者達ではなく、友好的な貴族家の使用人であること。

ほんの少しばかり、ヤマノ子爵領の発展のお 零(こぼ) れに 与(あずか) りたいという雇い主の命令で、情報を集めていただけであること。

雇い主に、自分達が捕らわれており、まだ生きているということを伝えて欲しいこと。

……でないと、死んだと思われて妻が再婚してしまう可能性があるため、どうしてもそれを阻止して欲しいこと。

その他諸々……。

しかしそれは、まず姫巫女様のお話を聞いてからである。

「この 度(たび) 、ボーゼス伯爵が陞爵され、侯爵となられました。そして、御令嬢であるベアトリスちゃんがデビュタント・ボールを終え、成人されました。

その慶事により、 囚人(プリズナー) の皆さんに、恩赦が与えられることになりました!」

「「「「「「おおおおおおおおお〜〜っっ!!」」」」」」

歓声に沸く、囚人達。

あれ程待ちわびた、解放の日。

妻子の元へと帰れる日が、やっと来た。

皆と肩を叩き合い、喜びの涙を流す、囚人達。

そして……。

「……ふたりだけ!」

ミツハの無情な宣告に、絶望の底へと叩き落とされたのであった……。