軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

358 敵 5

照準は、 光学照準器(スコープ) ではなく、照門照星式のもので行う。

超至近距離での 掃射(なぎはらい) に、精密照準の必要はない。適当に撃てばいいだけだ。

そっと、引き金を引く。

タタタタタタタタタ!

軽快な連続発射音と共に銃口から 弾丸(死の使い) が吐き出され、敵を薙ぎ倒す。

一応、足を狙ってはいるけれど、敵が綺麗に整列しているわけじゃないし、背の高さも違うし、そもそも私の射撃の腕はそこまで高くない。

なので、足ではなく、 もうちょっと上(・・・・・・・) に当たってしまうこともあるけれど、それは仕方ないよね。

盗賊団に襲われた小娘が、動転しながら無我夢中で正当防衛射撃を行っているのだから、そりゃ弾道もブレるよ。曳光弾も混ぜていないし……。

こんな至近距離だと曳光弾の必要性は低いし、発光体が燃え尽きるよりずっと早く着弾するから、何だか被弾者が悲惨なことになりそうだし……。

サビーネちゃんの方は、指定任務を終えて、弾倉を交換して一般目標の足を狙い撃ちしている模様。

そのまま待機してくれていてもよかったのだけど、最後まで戦いに参加するつもりか……。

まぁ、サビーネちゃんにとっては、これは王族である自分の役目であって、私はお手伝いをしているだけ、という認識なのかもね。

私は他領の領主であり、この領地とは直接の関係はない。

でも、サビーネちゃんはこの国の王族だ。

……それはつまり、この領地は自分達王族の指揮下にある、ってことかな。

でもそれって、王様や王太子殿下には当てはまっても、第三王女殿下であるサビーネちゃんには関係ないと思うよ。

って、いかん、弾切れだ。

撃ちっぱなしだと、200発のベルト給弾でも17秒しか保たない。

弾薬帯を入れたパックを交換して再装填するより、軽機ごとチェンジした方が早い。

連続転移でこの軽機を横に 避(よ) けて、別の軽機を、向きと高さに気を付けて連続転移で台の上にセットして……。

あ。

既に、あらかた片付いてる。

200発で40人だと、ひとり当たり5発?

いや、5発に一発が命中って、私の射撃の腕はそんなに……、あ、サビーネちゃんの狙撃があるか。

それと、最初の 開幕花火(クレイモア) 。

あ、またひとり、逃げようとしていた男が転がった。

サビーネちゃん、腕、良すぎ!

……そして、軽機の連続射撃が止まったからか、邸から警備兵や使用人達が飛び出した。

まぁ、手柄を立てたいわなぁ、自分達も……。

* *

……終わった。

開幕花火(クレイモア) とサビーネちゃんの狙撃で、無傷の敵はあっという間に30を切った。

そこにベルト給弾の5.56ミリ弾200発と、更に継続するサビーネちゃんの狙撃。

逃げる、という考えは浮かんだかもしれないけれど、それを実行に移す前に、一発も被弾していない者はいなくなった。

射撃が 止(や) んだ後に逃げようとした者もいたけれど、足を撃たれた者は勿論、腕や肩を撃たれた者もまともに走れるわけがなく、邸から走り出た警備兵や使用人達に次々と取り押さえられた。

中には当たり所が悪くて残念なことになっちゃった人もいるけれど、それは仕方ない。

貴族邸を襲撃した凶悪犯の末路なんだから、拷問を受けることなく即死に近い形で死ねたことを幸運だと思ってもらうしかないだろう。

……そして、盗賊達のうち3分の2くらいは、生きている。

尤も、そのうちの半分くらいは、あまり保ちそうにない。

弾が胴体に当たった者は勿論、脚に当たった者でも、太い動脈が切れちゃって出血が止まらない人とかもいる。

勿論、代官と指揮官っぽい人達……数人のうち、どれかが『当たり』だと思う……は、生きている。そうなるように配慮したので。

一応、銃創の少し上を縛り、出血多量で死なないようにしている。

出血大サービス、って、うるさいわっ!

戦いへの参加を宣言していなかった使用人達……メイドさんとか……も出てきて、怪我人の傷口を縛ったり、水を飲ませたりと働き始めている。

暴れる敵兵を取り押さえようとして怪我をした味方だけでなく、敵兵にも怪我の処置をしている。

伯爵の指示なのか、自発的な行動なのか……。

どこの世界にも、馬鹿やお人好しはいるか……。

* *

代官が召し上げた女性達は、帝国兵が潜んでいたところに捕らえられているらしい。

連中が吐いたので、既に救出部隊が出発している。

見張りに残した兵はふたりだけとのことなので、本隊が壊滅したことを教えてやれば、戦闘なしで問題なく解放できるだろう。

「では、私達はこれにて。あとは、お任せします」

「え……」

私の言葉に驚く、伯爵。

でも、この先は私達が口出しすることじゃない。

今回の事件は、伯爵が少しばかり 私達の助力を得て(・・・・・・・・) 、自分で解決したのだ。

……そうした方が、この領地にとっては都合がいいだろう。

それくらい、伯爵にも分かっているはずだ。

そして駄目押しに、サビーネちゃんから……。

「帝国の特殊工作部隊の浸透作戦を見破り、 寡兵(かへい) でそれを打ち払ったエスノール領の力、しかと見届けました。そしてその 礎(いしずえ) となった、勇敢なるひとりの護衛兵のこと、陛下への南方領支援の具申と共に、必ずやお伝えいたしましょう……」

ぶわっ、と涙を流す伯爵。

「あ、ありがたき幸せ……」

伯爵の脳裏に去来しているのは、エスノール領の未来か、それとも、自分の盾となって死んだ、ひとりの警備兵のことなのか……。

「隊長さん達、帰るよ!」

「えええ、もう終わり? 出番のないまま撤収かよ!」

「だから、最初に説明したじゃないの!」

武器弾薬だけでなく、周りに散らばった薬莢や分離式弾帯の金属製リンクパーツとかも、忘れずに全て転移で回収する。

「よし、転移!」

* *

一瞬のうちに姿を消した、ヤマノ子爵、サビーネ王女殿下、神兵達、そして数々の御神器。

エスノール伯爵は、流れる涙を拭おうともせず、立ち尽くしていた。

「おお、おお……。戯れ言と思っていた噂話は、全て真実であったのか……。

御神器、神兵、そして雷の姫巫女様……」

そして、第三王女殿下と雷の姫巫女に対する狂信者達が、ひとつの領地丸ごとで、誕生したのであった……。

* *

サビーネちゃんとふたりで、王様に直接ねじ込んだ。

あれだけ言っておけば、南方領の状況確認と支援を行うだろう。『帝国軍特殊工作部隊の浸透作戦』とか言って脅しておいたしね。

そして、問題は……。

「何ソレ、酷い!!」

そう、エスノール領の件で置いてけぼりだったコレットちゃんが、お 冠(かんむり) なのだだだ!

まぁ、分かるよ。私とサビーネちゃんのふたりだけで旅行、そして危険な大冒険。

そりゃ、怒る。私だって、そんなことにハブられたら、怒り心頭だよ!

サビーネちゃんと一緒に領地邸に来て、事情を説明したのだけれど……、コレットちゃんの機嫌が直りそうにない。

……どうすべえ……。

おや? サビーネちゃんが自信ありげな様子で私の方を向いたぞ。

これは、コレットちゃんをうまく宥める方法を思い付いたな!

さすが、サビーネちゃん。さすサビ!

さあ、早くその案を述べるのだだだ!!

「ミツハ姉様、私とコレット、日本に留学してみたい!」

「……え? ええ? えええええええええ〜〜っっ!!」