作品タイトル不明
314 新たなる作戦 3
「そういうわけで、希望調査を行います!」
お茶会にて、簡単な説明の後、そう言ったところ……。
「「「「「「……は?」」」」」」
みんなには、よく理解できなかったようだ。
「……ミツハさん、説明が雑過ぎ!」
「あ、ハイ、すみません……」
みっちゃんに駄目出しされた。
なので、もう一度、詳しく説明し直した。
* *
「……つまり、意に染まぬ婚約は断れるし破棄できる、そして望む婚約は思うがまま、というわけですの?」
メンバーから、ギラギラした眼でそんなことを聞かれたけれど……。
「……いや、破棄やお断りはできるけど、婚約するのは、相手方の御希望もないと……。
なので、婚約を成立させる方は、御自分の力と、ここの仲間達の協力のみを武器としてください。我がソサエティーの最初の作戦であった、カーレア様の時のように……。
女神様や御使い様にお願いするのは、こっちが拒否する場合だけです」
うん、こっちが、嫌がる相手にゴリ押しする側に回ってどうするよ。
まあ、婚約者や想い人がいない男性なら、うちのメンバーに請われて嫌がる者は少ないだろうとは思うけれど、相手の婚約を潰しての強奪とかには、関わりたくないからね。
悪役令嬢婚約破棄ざまぁ物は、小説だけで充分だよ。
そして、うちの最初の作戦活動の依頼者であったカーレア・ド・シーレバート伯爵令嬢は、無事、 目標(ターゲット) であった伯爵家長男との婚約に成功している。なので、みんな、自分にもそれくらい可能であるとの自信に満ち溢れているため、私の少し挑発的な言葉も全く問題ない。
「あくまでも、『御使い様にお願いして、罪無き 敬虔(けいけん) なしもべに御助力いただく』ということですから、悪事や、他者の心を踏みにじったり、女神様に向かって胸を張れないようなことは駄目ですよ!」
うむ、みんな、こくこくと頷いてくれている。どうやら、納得してもらえたようだ。
「そういうわけで、御使い様にお願いしたいことがある人の希望をお聞きして、それが御使い様へのお願いとしてふさわしいものかどうかを審議しました後、正式に受理し、お願いすることとなります」
ここで、具体的に誰に、どうやってお願いするのか、などと聞く者はいない。
どうしてわざわざこんな手間を掛けるかというと、大雑把にみんな纏めて『ソサエティーのメンバーにコナをかける者には、神罰が!』などとやってしまうと、みんな、縁談が一切来なくなってしまうからだ。
それに、現在良い縁談が来ていたり、互いに満足している婚約者がいたりする子達が、全部破談になってしまう。
だから、そのあたりを慎重に見極めて、嫌な話は潰し、望む話には影響がないように計画しなきゃならない。
具体的な方法? まだ考えてないよ。調査結果を見てから、じっくり考えるのだ。
* *
「うむむむむむむ……」
希望調査の結果、『今の婚約者に満足。その他の申し込みは断りたい』、『どんどん来い! そしてその中から、一番良いのを選びます!』、に大きく2分された。
そして前者の中で、立場を利用したゴリ押しに参っているのが3人、父親から乗り換えを強要されているのがふたり。……あと、今の婚約者との婚約を破棄したいという者がひとり。
その他は、申し込みが殺到してはいるけれど、そう酷いものはなく、普通に『既に婚約者がいますので』とお断りすれば済む程度らしい。
「今現在、対処の必要があるのは6人か……。
そして、それを何とかしたところで、またすぐに他のタチの悪い連中からの申し込みが来たり、その他のメンバーのところにも、いつそういうのが来るかも分からない……。
今の状況を何とかして、以後も問題が再発しないようにするには……」
「だから、御使い様にお願いするしかないよ!」
「うんうん!」
コレットちゃんとサビーネちゃんが、勝手なことを言っている。
……でも、本当に、それしか無さそうなんだよなぁ……。
うむむむむ……。
朝刊で注目、夕刊で決心! 神戸新聞アルバイトニュース!
「やるしかないか……」
よし、それじゃ、詳細情報の収集・調査を始めるか!
* *
あれから、様々な情報を集めた。
……まあ、その大半は本人から聞いたのだけど、一応は本人がいない時に他のメンバーからも聞いて裏を取ったり、うちのメンバーじゃない他の貴族の子女からも色々と情報を集めた。
私から話し掛けて、嫌そうにする子はいないよ。何せ、レフィリア貿易に商品を卸しているヤマノ子爵家の当主にして、ソサエティーの副会長だからね。何とか私の歓心を買って食い込もうと、みんな、何でもペラペラ喋ってくれた。
勿論、私が直接聞くんじゃなくて、コネやお金を使ったりして、間接的な情報収集も行った。
情報は、様々な方法で収集し、互いに補完、多角的に検証しあって、精度を上げなきゃね。
いくらメンバーからの話でも、一方からの説明を真に受けて、相手の言い分を聞かずに行動する程の馬鹿じゃないよ。
普段は『いいお友達』であっても、自分に直接の利害があるとなれば、 途端(とたん) に信用できなくなるという者は多い。
そして今回は、自分の結婚相手に関することだ。自分も、そしてお家も、利害関係バリバリだ。
なので、相手に何の落ち度もないのに、相手を悪者にして婚約破棄し、賠償金を取ろうとしたり自分達に有利な契約を結ばせようとしたり……。また、相手に婚約を強要したり……。
そしてそれに、ソサエティーとヤマノ子爵の名を利用しようとしたりする可能性が……。
なので、裏は取る。
困っている者を助けるためならば、多少ヤマノ子爵家の名が落ちようと構わないけれど、騙され、利用されて名を落とすことは許容しない。それがヤマノ家、いや、『山野家』の家訓だ。
騙し取られた100円を取り戻すためなら、1万円の経費がかかっても構わない。
そして、相手には確実に100円以上の損害を与え、山野家の者を騙そうとしたこと、舐めたことをしてくれたことを後悔させる。それが、我が家の伝統だ。
たったひとりになっちゃったけど、その伝統は私が守り、次世代に伝えてゆく。
……『次世代』が作れたなら、だけどね。
うん、次世代は、私ひとりじゃ作れないよ……。
いかん、話がズレた。
とにかく、うちは情報収集には力を入れるし、裏切り行為は許さない、ってことだ。
そして今回は、多少の誇張や認識のズレはあったものの、メンバーからの申告は概ね間違ってはいなかった。
……うん、メンバー達は、虚偽の申告をすることなく、本当のことを話してくれたというわけだ。
そしてみんなが誠意を見せてくれたなら、今度はこっちの番だ。
* *
御使い様の役を、誰がやるか……。
政治的配慮により、最近会う機会が少なかったベアトリスちゃんに?
サビーネちゃんが、ベアトリスちゃんも仲間にしたいと思っているみたいだから、この機会に……、って、新大陸の言葉が喋れないじゃん! ボツ!!
コレットちゃんか、サビーネちゃん……。
まだ新大陸の言葉があまり 流暢(りゅうちょう) じゃないし、私の妹としてあちこちに紹介済みだ。これからも連れて回るし……。ボツ!
他には……、って、いないよ! そもそも、新大陸の言葉がネイティブ並みに喋れて、私の秘密を教えてもいい人なんか、いるはずがないよ。
……仕方ない、自分でやるか……。
声は全て拡声器を通して、オマケにボイスチェンジャーを噛ませれば、大丈夫だろう。
そして、ウィッグ、カラーコンタクト、ファンデーション、含み綿、お面、馬マスク、ネコミミ、パッド……どこのかは聞くな!……、その他諸々の、地球の科学の粋を集めた変装道具を駆使すれば、多分バレない!
「胸にパッド入れるだけでいいんじゃないかなぁ?」
「うん、それだけで、絶対にミツハだとは分からないよ!」
「うるさいわっっ!!」