軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

299 帝国の受難 4

「……というようなことがありました」

「「「「「「…………」」」」」」

黙り込み一言も発さない、列席者達。

時は未来。所は宇宙。

……ではなく、時は翌日。所は王宮。

つまり、王様に状況を報告しているというわけだ。

列席者は、私と王様の他には、宰相様、アイブリンガー侯爵、第一王子、第一王女、 第三王女(サビーネちゃん) の、お馴染みのメンバー。

……しかし、なぜいるのか、最後のふたり……。

私の後見人であるボーゼス伯爵は、領地が大変なので王都には来ていない。

そして、今から知らせてもどうせ間に合わないからと、今回の報告会ではハブられることになったのである。

……仕方ないよね、うん。

で、第二王女と第二王子がハブられているのは、なぜ?

……いや、いい。ちょっと思っただけだ。

あのふたりは癒し要員であって、悪だくみの場には似合わない。

というか、第一王女と 第三王女(サビーネちゃん) がいるということの方がおかしいだろうが!

「……で、王様。私の代わりに帝国から賠償金と誓約書を受け取ってきてもらえませんか?」

「え……」

勿論、別に王様本人に受け取りに行ってもらうわけじゃない。配下の者に命じて、金貨と誓約書を受け取りに行かせてもらうだけだ。

多分、遣いの者が殺されるようなことはないだろう。

そんな、『殺しても何の意味もない、ただの遣いの者』に危害を加えるとは思えないからね、帝国の確実な滅亡と引き換えにして……。

私は、防御力が低いし、身体的な戦闘能力もない。

転移能力と拳銃を持っていることを除けば、紙装甲の、ただの無力な小娘に過ぎないのだ。

治癒能力は、『ゆっくりとだけど、完全に治る』というだけのものだから、大怪我とかならばともかく、即死レベルの致命傷を受ければ、その場で簡単に死ぬだろう。

生きていればこその『ゆっくりと治る』だから、首が飛んだり頭が潰れたり、心臓を射抜かれたりすればアウトだ。別に、両断されたらふたりに増殖するというわけじゃない。

暗殺者や伏兵、弓矢による狙撃、馬車で移動中に山の上から岩を落とす、その他諸々で、私を殺すのは簡単だ。

殺される前に敵の存在を感知したならば、自分か相手、もしくは武器を転移させることによって防げるが、感知が間に合わなかったり、至近距離で急襲されて反応が遅れれば、一発アウトだ。

なので私は、確実に安全だと断言できる場合を除き、絶対に帝国側の者とは会わない。

私が 殊更(ことさら) に『女神の力に守られた御使いは勿論無傷であったが』と強調するのは、私に危害を加えようとしても無駄であり、そして報復は恐ろしいぞ、と思わせて、私を攻撃しようと思わせないためだ。

なので、それを実行した者には必ず報いを与えなければならない。

それと、その事実を広く知らしめること。

……強力な抑止効果を維持するために。

「そして、私の代理で帝国からそれらを受け取ったということを、その内容と共に大々的にリーク……じゃないな、『公表』してもらえれば……」

「「「「「「……鬼か!」」」」」」

それが帝国にとって、そして皇帝一族にとって何を意味するかが分からないような者は、この場にはいない。

……勿論、 第三王女(サビーネちゃん) を含めて。

「……しかし、本当にそれで良いのか?」

王様がそう確認してくるのには、勿論、 理由(わけ) がある。

「それを公表するということは、即ち、『姫巫女様は、ひとりで帝国を屈服させ、無条件で降伏させることができる』と公表することになるのだぞ?」

うん、分かってる。

今までのは、私に攻撃力があるのではなく、ただ『強力な攻撃力を有する者達を率いていた』というだけのものだ。

なので、その『強力な攻撃力を有する者』がこの国の秘匿部隊や秘密兵器だと思っている者達も、そしてもう少し真実に近く、 私の祖国の軍隊(・・・・・・・) だと思っている者達も、私個人を手に入れてもそれらの戦力がオマケとして一緒にくっついてくるわけではない、と考えていたはずだ。

前者であれば、私がどこかへ嫁いだら、神輿の役目は次の 姫巫女役(貴族の娘) へと移される。

そして後者であれば、嫁にいったならば私は既にその国の者であり、祖国の者が無条件でその国のために戦力を出したりはしない。もう、私は母国のお姫様じゃなくなったのだから、私を護るのはその国の役目だからね。

……つまり、どちらにしても、その戦力は自分達の都合で自由に使えるようなものじゃない、ということだ。

しかし、それらの戦力を必要とせず、私ひとりで帝国と渡り合えるということが露見したなら。

それが何をもたらすのかというと……。

「……縁談が殺到する?」

「…………まぁ、それもあるだろうな……」

そう、私の身柄の争奪戦が勃発するかもしれない、ってことだ。

いや、そりゃ、確かに今でも『雷の姫巫女様』であり、『御使い様』とか言われているけれど、それを本当に額面通りに信じている人は、そんなに多くない。

この国の貴族の多くは、私のことを『海の向こうの大国の王姉殿下』と思っていて、『渡り』という秘術が使えるだけの、……そしてそれも使うと生命力を削るため余程のことがないと使えない、便利使いするにはあまり役に立たない小娘だと思っているはずだ。

そして、もし本気で怒らせたら、あの、古竜をも 屠(ほふ) る軍隊が現れる。

自分の領地に。

自分の邸に。

……そして、自分のすぐ後ろに……。

勝てば、その 度(たび) にちょっぴり儲かる。

そして一度でも負ければ、一族郎党皆殺しで、お家断絶。

そんな賭けを続ける者なんか、いるはずがない。

そして貴族の皆さんは、私が 平民(コレットちゃん) を助けるために命を懸けて、大怪我をしたということを知っている。私が、 自分達には理解(・・・・・・・) できない行動を取る(・・・・・・・・・) ということを……。

……そう、貴族の皆さんにとって私は、『爆発する条件も信管の感度も分からない、他国製の謎の爆弾』なのだ。

この国には、まだ爆弾は出回っていないけどね。

とにかく、彼らにとって私はリスク&リターン、メリット&デメリットのバランスが悪すぎる。

なので、おかしなことを考える者はあまりいないだろう。

……と考えていたわけだ。今までは、ね。

それが、今回のことを全て公表すれば、事情が変わるわけだ。

そう、それは私が、戦意高揚のための神輿ではなく、本当に『御使い』としての力、それも洒落にならない戦闘力を持っているということが周辺国に知れ渡るということだ。

帝都に間諜を出していない遠くの国は、そんなの信じないだろうけどね。

噂が遠くへ伝わるうちに、蛇がドラゴンになるのは普通のことだ。

だから遠国のことは関係ないけれど、この国の貴族達、そして間諜や情報収集によって正確な情報を掴んでいるであろう近隣諸国の上層部は、それを知る。

そうすれば、どうなるか……。

ま、この国や、大半の近隣諸国は態度を変えることはないと思う。

この国は他国を侵略するような国じゃないし、そもそも、『本物の御使い様』だと分かっていて、喧嘩を売るようなことはないだろう。

せっかく今現在味方に付いているというのに、わざわざそれを敵に回すような愚かなことをするはずがない。

近隣の友好国にしても、同じだろう。

なので、多くのデメリットが発生するのは承知で、それでも私に危害を加えようとする敵対者からの『私や、私の身近な人達への攻撃』を防ぐため、その抑止力を強化することを優先するのだ。

……みんなが、私のことを腫れ物のように扱うようになるという心配?

いや、それは既に『王都絶対防衛戦』の時に色々と見せちゃっているから、あまり変わらないだろう。

あれを見て普通に接してくれている人達が、今更態度を変えるとも思えないよ。

何しろ、あの時は帝国の侵攻軍と魔物の群れ、そして3頭の古竜を 退(しりぞ) けたんだ。

それに較べれば、帝都をひとつ落とすくらい……。