軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28 ドラゴンバスター

竜の谷で生まれて328年。竜は少子で次の子供がなかなか生まれないため、俺は村で長い間ずっと子供扱いされていた。ようやく生まれた女の子が今年127歳、次の男の子が76歳となった。

俺の後、200年以上経ってようやく生まれた子供であるし、男女が続いたこともあり、村中大喜びであった。俺もようやく子供扱いから脱することができ重畳である。兄のように慕ってくれるのも良いものである。

2頭のあとはまたしばらく子は生まれておらず、村では何とはなしにこの2頭が番いとなるのが当然のように思われていた。2頭もまたそれを意識している。特に女の子、リュリュはその思いが強そうである。女の子は早熟だからな。

俺? 俺は、少し上にウロコの色が可愛い娘とかしっぽのラインが絶妙な娘とか、色々いるから不自由していない。

で、男の子、ティエリが最近あの病に罹患したようである。そう、幼年竜特有のあの病、『我は強く賢き古竜種である、世界に君臨し愚者を導いてやろう病』である。微笑ましいものであるが、兄と慕ってくれているし、ここはひとつ楽しませてやるとするかな。

以前は、人間にちょっかいをかけて遊ぶと、山の洞窟に一頭で住む頭のおかしな偏屈じいさんがすぐに『人間に関わるな』、『人間に手出ししてはならぬ』と言ってうるさかったが、しばらく前に亡くなったので問題はない。

そこで、人間の国のひとつに力を貸してやり、調子に乗ったその国が馬鹿をやるのを楽しんだり、うまく周辺を支配できれば裏から操って君臨ごっこが楽しめるというわけである。

俺も子供の頃そういう遊びをしたかったのだが、偏屈じいさんが五月蠅かったのと、上が女の子ばかりだったため、そういう遊びは出来なかったのである。いや、病に罹患していたわけではない。ただ、ちょっと遊んでみたかっただけなのである。

うむ、ひとつ、誘ってやるとするか。

リュリュもやる? そうか、大歓迎だ。

では、野心のある国に魔物の言葉をいくつか教えてやり、魔物を少し使役できるようにしてやるか。そのあとは、しばらく手を出さずに観察だな。

などと考えていたのに、最初で躓くとは何事か。

ここでこの国の王都を落とさねば遊びが始まらないだろうが。無能な下等生物めが。このままではふたりを楽しませてやれないだろうが。

仕方ない、最初だけ少し手伝ってやろう。とりあえずこいつらを潰して門をブレスで破壊すれば良いだろう。

というわけで、何か凄いのキター! 大きいの一匹、小さいの2匹。

言葉が喋れるみたいなんで、一応ファーストコンタクトをば。

「ドラゴン様、御機嫌麗しゅうございます」

「何を言っておる。機嫌は良くない。お前達のせいだ。さっさと潰れろ」

あ、大きい方、問答無用ですか、そうですか。まぁ、向こうのお味方さんですもんねー。

交渉は一瞬の内に決裂。仕方無いので、とりあえず撃ってみる。

パパパン、パパパン

「何だそれは?」

痛くもありませんか、そうですか。

「オレがやる!」

あ、若い方の練習台ですか。なんか嫌なことを思い出して左腕がむずむずするんですが。ムカつくんですが。でも相手が若い方が何とかしやすいよね。

「じゃ、あとは若い人同士で」

って、何言ってるんですか私は。お見合いですか。

あ、大きいドラゴンは下がった。その横にはもう一頭の小さいのが。大人竜、子竜、と呼びましょう。とりあえず今は目の前の小さいやつですね。

「あの、お話を」

「死ね」

あ、ダメだこりゃ。

『アサルトライフル、撃て!』

タタタタタン

「さっきのやつか。痛くも何ともないぞ」

って、ちょっと目が泳いでますが。拳銃弾とは威力が全然違うよ、アサルトライフルは。それにこれ、5.56ミリじゃなくて7.62ミリだし。それとも、大きいドラゴンよりお肌が弱い?

『全武装、いつでも撃てるよう準備。軽機、撃て』

うん、必殺技はあんまり早く出しちゃダメだよね。

まぁ、今後に備えての調査の一環なんだけど。ドラゴンはどの程度の武器から効くのか、とかの。世間知らずの若い竜が下手に余裕かまして意地張ってるうちに色々確認、弱点探し、と。

ドタタタタ

「い、いた、いたっ!」

おお、子竜はこれで…、って、痛がるだけですか。もしかすると打たれ弱い? 竜なんてあまり痛い目に遭わないから? 子供だから?

あ、今の竜語? 痛さについ母国語?が出ましたか。あ、竜語や他になんか…魔物の言葉?も覚えたらしいよ、さっきの大人竜から。竜が人間語以外の複数の言葉を知っていた模様。

そろそろ詰めかな。あとは変に反撃される前に一挙に畳み掛ける。ちらりと目をやると、うん、アレもアレもちゃんと狙いをつけてるね。流石、隊長さんの部下達だよね。

『重機、撃て』

ドドドドド

「うぎゃあああぁ~~!!」

ウロコが弾け飛び、弾丸が食い込む。飛び散る血と肉片。

大人竜ともう一匹の子竜は驚きのためか眼を見開いたまま動かない。うん、いくら武器を使っても人間に竜が傷つけられるなんて思ってもいなかったんだろうね。そりゃ反応できないわ。

「ぎ、ギザマあぁぁ~!!」

あ、痛みと怒りで歪んだ、狂ったような顔。口をいっぱいに開けて思い切り息を吸い込んで…。ブレス、来る!!

『RPG、クチへ!!』

ぼひゅぼひゅぼひゅ

3発のRPG-27、使い捨て式対戦車擲弾発射器から飛び出したロケット弾が次々と竜のクチ目掛けて飛翔し、1発が大きく開かれた口腔内へ飛び込み、残り2発は顎と頭に命中して爆発した。地響きを立てて倒れる子竜。

「ティエリいいいぃ!!」

怒りと絶望に狂ってミツハに迫るもう一匹の子竜。

『神様助けてぇぇぇ!』

ドドドドドドドドドドド

20ミリ機関砲の前にひとたまりもなく倒れ伏す子竜。

固まったまま全く動かない大人竜。

機関砲に倒れた子竜が、肉が派手に抉れた身体から大量の血を流しながらじりっ、じりっともう一匹の子竜に向かって這いずって行く。じりっ、じりっ、と少しずつ。

そしてようやく辿り着き、前脚をいっぱいに伸ばしてもう一匹の子竜の身体に触れ、動きを止めた。永遠に。

「うあ、うあ、うあああああああああああッッ!!」

ようやく動きを取り戻し、半狂乱の大人竜。

「ああ、ああ、リュリュぅ、ティエリいいぃ!! 死んだ、死んだあァァ!」

竜語で泣き喚く。その言葉が分かるのはミツハだけである。

「子が、200年振りの、俺の妹分、弟分、ヨル兄って、アニキってえぇ! 俺のせい、俺が馬鹿な遊びなんかに、ああぁぁぁ~~~」

しばらく泣き喚いていた大人竜がふと気付くと、神たる20ミリ機関砲、重機関銃、そして複数のRPG-27対戦車擲弾発射器が全て自分に向けられていた。

「ぎゃああああぁぁぁぁぁ~~~」

死ぬ!

殺されるうゥ!

古竜たる自分が。ひ弱で無力だと、下等生物だと思っていた人間に!

ひいいぃィィィ!!

古竜は逃げた。死に物狂いで逃げた。走って走って、人間を踏み潰し跳ね飛ばし、かなり走って、もう絶対にあの死を吐くものから見通せない場所まで逃げたあと、ようやく空へと飛び上がり一目散に竜の谷へと逃げ帰った。

帝国軍は大被害を受けていた。竜が城門近くから走りやすい場所、つまり街道へと真っ直ぐ走ったため、帝国軍のほぼ中心を踏み潰し吹き飛ばしていったのである。そこには前線司令部があったし、街道にはまだ輜重部隊が食料や水、馬の飼い葉、補充の矢、その他の様々な軍需物資を輸送中であった。また、運び終わったものの集積所も、その直線上であった。どこに置いても同じなら運んできた街道の近くに置くに決まっている。そのため、大量の物資と指揮系統を一瞬のうちに失って大混乱に陥っていた。

無茶な侵攻を成功させるための切り札であった空中騎兵、古竜の支援の両方を失い、更に魔物のコントロールも失った今、検討すべき事項は「いかに被害を少なく撤退するか」だけであった。

また、魔物達は、僅かにでも意思が伝えられていた兵士が死に、強さの象徴である竜、それも古竜が簡単に2頭も殺されたうえ1頭があまりにも惨めに敗走する姿を目撃し、動揺が激しかった。そこにミツハが再び重機で掃射を命じ、竜から覚えたオーク語やオーガ語で『おまえらうまそう。オレ、オマエ、マルカジリ』とかマイクで流すと全力で走り去った。帝国軍の中を突っ切って。

あとはもういいや。事後処理とか追撃とかは王都軍や駆けつけてくる領主軍に任せよう。傭兵さんたちの仕事も残しといてあげないと。

あ、他の門には、裏切った領主の軍が来たらしい。王族や貴族を逃がさないよう封鎖するのが目的だったらしいけど、一部の部隊が手柄目当てで門を破ろうとしたとか。重機関銃の掃射と擲弾筒でボロボロになったらしい。うん、他の門を任せた人達も出番があったようでなにより。あとで拗ねられちゃ堪んないからね。

もう街に戻ろう。

そう思って隊長さんに声をかけようとしたら、なんか、みんなで子竜の片方をトラックに積み込んでた。いや、いいけどね…。

疲れて何も考えずに街に戻ったら、大変なことになってた。

雷の姫巫女様って、いや、そのネタはもう終わったから。

神の御使い? あ、全部聞こえてましたか、そうですか。

あの啖呵に惚れた? 吊り橋効果です、恐らく。

息子の嫁に? いつの間になに紛れ込んでますか国王様。キラキラした方はイヤですよ。ルーヘン君? あ、それはちょっといいかも。癒されるよね、あの子。

あ、もみくちゃにするはやめて下さい、左肩が、あ、傷口が開く、ああ、血が、血があぁぁ!

ウルフファングのみんなも大人気! 神兵様扱いだよ。赤ん坊抱えた女性が『子供に触ってくれ』って言ってるよ、触ってあげなよ。あ、こら、なに母親の方を触ってますか、そこの若いの! 『胸を触ってくれ』って言ってる女の子はいないか? いないよそんなの!

まぁ、ウルフファングのみんなはあまり長居させると問題なんで、速やかに帰還して貰おう。色々と都合もあるし、銃とか盗まれたりしないうちに。

まぁ、こんなところで転移はできないから、また中庭かな。

そして中庭でみんなと転移し、色々と用事があるので私はすぐに戻ってきた。

あ、アレクシス様のところにも顔を出したよ。だいぶ不安だったらしいけど、王国の勝利に喜んでた。

今日はもう寝る。お店は明日もお休み。いや、多分仕事になんないと思うから。

長い長い年月が経った頃、竜の谷で幼い幼竜たちが遊びの話をしていた。

「なぁ、人間のところへ行って遊ばないか? ちょっと突くとすぐ死んじゃうけど、ゲームのコマにして遊ぶと結構面白いらしいぞ」

1頭の子竜が誘うが、他の子竜が難色を示す。

「う~ん、でもなぁ、ほら、山の洞窟に一頭で住む頭のおかしな偏屈じいさんがいるだろ。あのじいさんがすぐに『人間に関わるな』、『人間に手出ししてはならぬ』って怒鳴り込んで来るからなぁ。なんか人間に酷い目にでもあわされたのかなぁ」

「あ~、あのじいさんかぁ。じゃ、ま、やめとくかぁ。なんか、大人達はあのじいさんにはあまり関わりたくないみたいだしなぁ」

「そうだなぁ。じゃ、また明日!」

「おぅ、また明日!」