軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

275 戦後処理 1

『どうして儂に声を掛けなかったアァ!!』

「ひえっ!」

ある日、地球に戻っている時に隊長さんに手配してもらったスマホに着信があったので出てみると、いきなり怒鳴りつけられた。

このスマホの電話番号やメアドは、ごく一部の人にしか教えていないのに……、あ!

「学者先生……」

「政府関連の者から聞いたぞ! 異世界で傭兵達と色々採取してきたそうだな。なぜ儂を呼ばなかった!!」

あ~、戦闘の方には興味ないけど、採取に関しては食らい付くか……。

でも、まぁ、こちらから声を掛けておいて、いつか役に立ってくれる時までは放置、っていうのはさすがに酷いか。採取とか、学者先生が一番やりたいことだっただろうから……。

こりゃ、私が悪かったなぁ……。

「ごめんなさい! 今回は戦闘がメインだったから、人類にとって貴重な人材である先生を少しでも危険に晒すことはできなかったの……」

「う……、そ、そうか。それなら仕方ないか……」

ふふ、チョロい!

研究者というのは、自分の功績を称えられたり、自分の能力を高く評価されたり尊敬されたりするのに弱いからねぇ。特に、そういうのに慣れていない人は……。

この先生は政府の仕事を受けているくらいだから評価はされているんだろうけど、政府の仕事のことは部外者には話せないだろうし、政治家や軍人が学者をちやほやするとはあまり思えないから、こういったあからさまな賛辞にはあまり慣れていないのかも。

とにかく、まだ何も頼み事をしていないとはいえ、いつかその専門知識を役立ててもらう時が来るかも、と考えてキープしてある人材だ。顧問料代わりに、何か報酬を与えておくべきかも。

う~ん……。

「本当に、すみませんでした。今度、必ずこの埋め合わせを……」

「うむ、よろしく頼むぞ!」

そして、少し世間話をした後、通話を終了。

あ~、顔繋ぎは大事か……。

そういえば、軍人君ともしばらく会っていないなぁ。

* *

「ミツハ様、実は、お願いが……」

「もう『神兵様を率いた姫巫女』の役は終わったから、以前のように普通に呼んでくださいよ!」

戦後処理に何か問題が生起しないかと心配で、数日置きにレミア王女のところに顔を出していたら、いきなりそんなことを言われた。

「それで、何か問題でも? 周辺諸国の口出しは『講和条約については、帝国軍を退けられた姫巫女様の御意思を尊重する』って言って全部蹴ったんだよね? 幸い、私が使者を転移で運ぶことによって各国の援軍が出動する前に止められたから、謝礼金はごく僅かで済んだとか言ってたよね?」

「はい、おかげさまで……。

ミツハ様の秘術で使者をお運びいただきましたため、援軍要請中止の知らせが届いた時点で既に軍が動いていた国は皆無。大半は、どうするかの会議中か、何もせずに様子見、という状態でした。

つまり、実際に我が国に援軍を出すことを決定して動いた国はひとつもなく、これで何かを要求するような恥知らずな真似は、さすがにできないでしょう。軍部や一部の貴族は騒ぐでしょうが……」

まあ、そりゃそうか。王族が品のない姿を晒せば、それすなわち国の恥。他国からどういう目で見られるかを考えれば、おかしなことは言えないだろう。何せ、自分達は援軍を出してもいないのだから。

そりゃ、帝国がこの国へ侵攻を始めたのを確認してから援軍要請の使者を出したのだから、使者が到着して知らせを受けてから殆ど時間が経っていなかった、という事情はある。

要請キャンセルの使者は転移で一瞬で到着したから、ホント、対応するための時間が短かったんだよねえ。いくつかの国は、援軍要請の使者がまだ到着していなかったし……。

「そして、誰がどこで聞いているか分かりませんから、ミツハ様の呼び方は、このままで……。

神兵様を率いて我が国を護ってくださいました救国の大英雄、雷の姫巫女様を自分より下位に扱ったなどと思われたら、大変なことになってしまいますので……」

あ~……。

先日までは、一国の王女殿下にして国王代行、他国の子爵である私なんかより遥かに格上だったのに、こうなっちゃあ仕方ないか……。

今までは、雷の姫巫女とか救国の大英雄とかいうのはあくまでも『うちの国にとっては』、というにすぎなかったんだけど、今じゃ、この国にとってもそうなっちゃったからねえ……。

「で、帝国は『水に落ちた犬』状態だし、他国も余計な口出しはしてこないなら、いったい何を頼みたいと……。帝国は、無茶なことは言ってきてないんでしょ?」

「はい、お願いしたいことというのは、……戦勝祝賀会のことなのです」

「はああ?」

レミア王女が言うには、国民の大半が知らないうちに戦争が始まって、国民の大半が知らないうちに戦争が終わった、じゃ、現政権の人気取りに繋がらない、ってことらしい。

何じゃ、そりゃ……。

まあ確かに、ヘリの出撃を見ていたのは王都の住民の一部だけだし、戦闘場面を見た者は誰もいない。言葉だけで『戦争になりました』、『勝ちました』と言われても、実感も湧かないだろう。

しかも、こちらの死傷者はゼロ、今のところ戦利品も奪い取った領地もなし。

まあ、そのあたりは現在進行中の和平交渉で 何某(なにがし) かの賠償は得られるだろうけど。

人的被害がゼロとは言っても、国境から一日分の進軍経路にあった村や町は略奪されて大被害だし、戦いがあった場所はメチャクチャ荒れた。オマケに、この国は私に依頼料を払わなきゃならない。……かなりの損害だ。

そして帝国は、切羽詰まって無謀な行動に出たくらいなので、多額の賠償金として払えるような金貨も、お金の代わりになる小麦とかもあるはずがない。無理に取り立てたりすれば、餓死者が出るだろう。さすがに、そこまでやる国は……、こういう世界ではあるんだろうけど、少なくともこの国は、そこまで非情じゃないらしい。

「そういうわけで、国民に事情を知らしめて、パ~ッとお祝いしてバンザ~イ、ってことで人気取りをして、帝国から取る賠償金は被害とミツハ様への支払いでトントンになるくらいに抑えても文句が出ないようにしたいんですよ。

そのためにどうしても必要なのが、神兵様と姫巫女様によるアピールと、『神々のお助けで護られたのだ、文句を言うな!』という 精神的な圧力(プレッシャー) なんですよ……。

それに、神兵様方に国民全てがお礼を言いたい、というのも本当です。

我が国のために戦っていただきながら、そのことを広く告知したり皆で讃えたりしないというのは、国民にとって許せることではありません!」

あ~……。

レミア王女の説明には納得せざるを得ないし、その目的が『帝国で餓死者が出ないように、賠償金の請求額を抑えるため』とあっては、協力せざるを得ないなぁ……。

「分かった。そういう理由なら、協力するよ。料金は要らない」

「本当ですか!」

あ、ヤバい! コイツ、目をキラキラさせて手を組んで、芝居がかった態度を取ってやがる!

「勿論、 無料(タダ) なのは祝賀会関連だけだよ。先日の戦闘行動の分はキッチリ払ってもらうからね。

こっちも神器の消耗やら 天(あめ) の 浮舟(うきふね) の使用料やら整備料金やら人件費やらで、大金がかかっているんだからね。神兵様に働いてもらうのも、 無料(タダ) じゃないんだよ、 無料(タダ) じゃ!」

「……勿論、分かっておりますわよ、それくらい!」

さすがに、そこまであくどくはなかったか。

でも、個人的なことではなく、国のためなら平気で泥を被り、悪役も辞さないからなぁ、この子。

……しかし、既に レミア王女(コイツ) の扱い方を 会得(えとく) した私に、死角はない!

油断はしないのだ!

ふはははは!

* *

「というわけで、ヘリチームを呼んでもらいたいんだけど……。

勿論、依頼料も参加費もなしで」

「何が、というわけで、なんだよ……」

うん、説明なしでいきなり言われても分かんないか。

「姫様が、戦勝国なのに碌に賠償金も取れなかったことを誤魔化すためにイベントをやらなきゃならない、って……」

「…………分かった、理解した。負けすぎた戦いも、勝ちすぎた戦いも、共に後が面倒なのはどこでも同じだ」

さすが隊長さん、そのあたりのことを察するだけの知識と経験があるみたいだ。

やっぱり、苦労人は違うねえ……。

「あと、ヘリだけじゃ見栄えが良くないから、軽装甲機動車とトラックも出してよ。戦闘に参加しなかった隊員さんも連れて……」

「何だよ、そりゃ……、って、分かった分かった! ヘリじゃパレードはできないからなぁ……」

うん、そういうことだ。

「じゃ、連絡、よろしくね!」