軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

193 勢力拡大

「なるほど、これがミツハの詐欺の手口……」

「人聞きの悪いこと言わないでよ!」

コレットちゃんに、とんでもないことを言われてしまった。

「さっき私があの子に喋ったことの中には、嘘は何ひとつ入っていなかったでしょ。私が他国の子爵で、ヴァネル王国のレフィリア貿易に商品を卸していて、他国にもレフィリア貿易のようにその国での輸入を一括して引き受けてくれる商会が欲しいと考えている、っていうことは、全部本当のことじゃない!」

「う、まぁ、それはそうだけど……」

そう、私は、何ひとつ嘘は吐いていない。

既に周辺国にはレフィリア貿易の商品とその出所についての噂は広がっており、家の商売の手伝いをしている商家の子供達がそれを知らないはずがなかった。

若き少女の、ただの商家の娘から一躍有名商会の商会主への彗星のようなデビュー、そしてその大成功は、周辺国の商家の娘達の間で憧れを持って注目され、噂されている。そのレフィリア貿易の大成功の立役者たる、『異国の少女、ヤマノ子爵』が、この国に第二のレフィリア貿易を立ち上げようとして、自分に声を掛けてくれた。

……うん、そりゃ、舞い上がるわなぁ……。

そういうわけで、話は簡単に進んだ。

レフィリア貿易から仕入れた商品は他国に売ってはならないというルールと同じく、この国でも、他国への販売は許可しない。小売りで購入した人が個人的に持ち出すのは、そりゃ止めようがないけれど。

……うん、だから、レフィリア貿易の商品も、少量は他国に流れている。『個人的に買うのだと言い張るのに、ぎりぎり許容できる程度の量』を買った連中によって。

そのため、他国の貴族や金持ち連中、そして商人達は、レフィリア貿易の商品の何たるかは充分に承知している。なので、この国では、レフィリア貿易の立ち上げの時のような、 伝手(つて) を頼っての売り込みとかは最初から全く必要ない。『ヤマノ子爵から仕入れる商品である』と宣伝し、そして私がそれを承認しているという証拠があれば、後は完全な売り手市場である。

人材を確保した後は、『ヴァネル王国の、レフィリア貿易に指示を仰ぎなさい』と言って、後は全てレフィリアに丸投げ。

あちこちの国の商会全部を面倒見る暇なんかないよ!

なので、後はレフィリアに全ての面倒を見させる。一度自分が辿った道なんだから、私が指示するよりもずっと安全で確実だろう。そして、皆がレフィリアを中心にして強固な結束を固めてくれれば万々歳だ。

仕入れについては、各国の商会主がレフィリア貿易に発注し、レフィリアが色々とアドバイスをしながら取り纏めて、私に取り次ぐ。そして私が、こっそりと配達。

いや、発送までレフィリアに任せたら、商品がヴァネル王国を経由することになってヴァネル王国に余計な税金を取られるし、貴族や金持ちに高値で売りつけられる商品だから、途中で商隊が襲われる危険があるから、そこは仕方ない。損金が発生することより、襲われた商隊に人的被害が出ること、そしてレフィリア貿易とヤマノ子爵家が舐められることは許容できないからね。

女と商人は、舐められちゃあやっていけないんだよ。舐めたことをしてくれた奴は、どれだけ経費が掛かろうとも、絶対に叩き潰さなきゃ。

……でも、まぁ、事後の見せしめより、未然に防止するに越したことはないからね。

取り纏めをレフィリアに任せても、それはあくまでも『ヤマノ子爵家に頼まれて、仲介役を引き受けているだけ』であり、別にレフィリア貿易が売買しているわけでも、商品がヴァネル王国を経由しているわけでもないから、ヴァネル王国の貴族や王宮、商人達から文句を言われる心配はないだろう。……もし言われても、気にせずスルーするけれど。

各国の商会とレフィリア貿易との遣り取りには少し時間がかかるけれど、それは仕方ない。全ての国の商会にレフィリア貿易と同じようなサービスをしていては、私が保たない。これでも、レフィリアが発注を受けてから後はすごく早いんだから、それくらいは我慢して貰わないと。

何しろ、本来であれば、レフィリアが注文を受けてから私に連絡し、それから私の本国に連絡が行き、商品を揃え、船で運び、陸路で運ぶ、という手順になるのだから、これでも異常に早い納品になる。それに、たまには私が様子見のために直接顔を出すしね。

「よし、じゃ、次行くよ、次!」

「アイアイマム!」

「みつは、テレポテーション!」

そして、ヤマノ子爵家との取引を武器に商業界に華々しいデビューを飾った若い女性による商会が三つ目となった時、ヴァネル王国周辺の各国において、たくさんの荷物を抱えた少女が商家の娘に体当たりされるという事件が 頻発(ひんぱつ) し、少々問題となったのであった……。

* *

「……というわけで、みんなに商会を経営して貰いたいの」

「……何が、『というわけで』なんだよ……」

ここは、勝手知ったる傭兵組織『ウルフファング』の会議室。団員の、ほぼ全員が集まっている。

「いや、地球のお酒や香辛料を捌いて稼いでるんだけどね、今までは大した量じゃなかったから、私が量販店を回って買い集めていたんだけど……、必要量が増えすぎて、個人的な購入じゃあ、手が回んなくなっちゃった。助けて!」

「「「「「「…………」」」」」」

呆れたような顔の、隊長以下、傭兵団の面々。

いや、専門店を回って業務用の大袋入りを買い集めるのも、ひとりでは限度というものがあるんだよ。もう、そういう地味な単純作業は、下請けに廻したいんだよ……。

「販路を開拓して商売を始めてくれ、ってわけじゃないから! 私の代わりに、小さな商会を設立して色々なものを仕入れてくれればいいだけだから、営業とか客商売とかをやって貰うわけじゃないよ。

注文を受けた品を仕入れるだけで、間違いなく、確実に売れる。絶対に損をしない商売だよ。だから、お願い! 他に、こっちの世界では安心して頼める人がいないの!」

「……嬢ちゃんからの頼みなんだから、受けてもいいんじゃねぇか?」

「ああ、大金稼がせて貰った恩があるし、この話も、充分な取り分が貰えるんだろ? 危険な仕事はやらなくて済むようになって、みんな結構暇だしよ……」

おお、団員のみんなから、肯定的な意見が!

隊長さんは……?

「やってもいいって奴は、手を挙げろ」

おおお、全員が挙手! やったね!

「……見ての通りだ。すぐに営業許可とかの用意をするから、とりあえず仕入れて欲しい物の種類や量のリストを用意しろ。あと、うちの取り分とか色々と調整するから、3日後くらいに来い。

全然知らない分野だから、ちょっと調べてみないと話ができんからな」

隊長さんが言うとおりだ。傭兵にいきなり商売の話を振って、即答できるわけがない。

でも、それでも何とかしてくれるのが、隊長さんとウルフファングのみんなだ。頼りにしてるよ!

* *

「な、ななな、何ですってええええぇ! そ、それを黙って了承したの! ええ!!」

「す、すまん……。なぜ怒られているのか全く分からんが、とにかく、すまん……」

サビーネちゃんに怒鳴りつけられて、首を竦めて小さくなっている、王様。

「じ、人工の島、『奇岩島』ですって? そして、そこの商館の主、若き女性商会主ベアトリスうぅ? どうしてそんな美味しい役職を、この私じゃなくてベアトリスちゃんになんか振るのよぉ!

ミツハの領地にある島なら、ずっとミツハと一緒にいられるじゃないの、どうせ実務は配下の者にやらせるのでしょうから……。

くそっ、他のことで忙しかったから、油断した……」

悔しがるサビーネちゃんであるが、もう、全ては遅かった……。

「ヤマノ子爵領に人を遣って、ミツハが作ったという新大陸とやらの言葉の辞書を筆写させたり、それを片手に牢の囚人相手に言葉を勉強したりして忙しかったから、ミツハがそんなことをやってるなんて全然気付かなかったよ。失敗したああぁ!」

確かに、ヤマノ子爵領には、ミツハが拿捕船の乗員達のために作った辞書があり、それが筆写を繰り返して既にかなりの冊数が作られていた。

そして王都の牢には、あの、王都へ護送された『短艇による上陸組』が何人もいた。サビーネちゃんが平民の恰好をして食べ物を差し入れ、ヴァネル王国の言葉を学ぼうとすれば、自分達の話を上の者に伝えて貰えるかも、という希望と、あまりにも退屈な囚われの日々の慰みに、そして差し入れのお礼として、喜んで相手になってくれる者が大勢いた。

……というか、サビーネちゃんの勉強の相手をする順番を巡って、壮絶な争いが繰り広げられるくらいであった。

そのため、サビーネちゃんの新大陸語の勉強は、着々と進行しているのであった。

「コレットに続き、ベアトリスちゃんにまで抜け駆けを許すとは、何たる失策、何たる屈辱!

負けない! 負けないわよ! ミツハは、私のものなんだからああああぁ~~!!」

娘の雄叫びを聞き、その台詞はふたりの息子達のうちのどちらかに言って欲しかったなぁ、と、ため息を漏らす王様であった……。