軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

169 制 裁 1

とうちゃ~く!

馬車を降り、ミッチェル侯爵と一緒にパーティー会場へ。

初めて訪問するお宅だから、私の顔は知られていないだろうけれど、ミッチェル侯爵を知らない門番や警備兵、案内係等はいないらしく、そのまま素通し。

侯爵様に連れられて、 主催者(ホスト) や主要な人達に挨拶回り。初対面の人達もいれば、既に他のパーティーで会ったことのある人達もいる。

……そしてみんな、私を見る眼が、ギラついている……。

怖いわ!

まぁ、多分、輸入品のことなんだろうなぁ。

商売に食い込んで儲けを、ということもあるだろうけど、ここにいるのは商人ではなく、貴族様達だ。だから、それだけではなく、多分、アレなんだろう。

『旨いものを飲み食いしたい』、『ステータスとして、今評判のものを手に入れたい』というやつ。

そう、香辛料とかは大量に……とはいっても、そう大した量ではないけれど、上流家庭の要望にはそこそこ応えられるくらいに……運び込んでいる。香辛料は、小麦のように大量に消費されるものじゃないから、日本だけでなく、他国も含めて買い集めれば、商会規模ではなく個人購入で手に入る分だけでも何とかなる。通販もあるし……。だから、品薄感はそんなにない。

今後、平民達の間にも広めたいから、そんなに『なかなか手が出せない、贅沢品』というイメージにはしたくないからね。

でも、酒類や高級食材は供給を絞って、市場の飢餓感を煽り、高級感、贅沢感を醸成している。

これらは、別に無ければ無いで済むから一般平民にはあまり関係ないし、下位互換のものはこの国で造られたものが充分出回っているから、品薄でもそんなに問題はない。

だから、儲け目当ても勿論あるけれど、『安くて済む、貴族への顔繋ぎ用のアイテム』として私が使ったりと、色々と活用できる便利商品として使う予定。

……だったんだけど。

ミッチェル侯爵も、ずっと私にくっついているわけにはいかない。なので、私から離れて、時々こっちを見て状況確認、というモードになった途端……。

くるくるくるね。

胡椒、キャビア、このあたりには出回っていない珍しいフルーツ、……そしてお酒。

取引として。ただ自分の家で消費する分だけを求めて。そして、貴金属や宝石の、私の国での相場を探ろうとして。

それらに対して、取引希望ならばレフィリア貿易に言ってくれ、紹介だけならしてもいいよ、と。そして自分が楽しむために高級酒を何本か廻して貰えないか、というささやかなお願いに対しては、物産店に使いの者を寄越してくれれば都合する、と答えて大喜びして貰えたり。

決して大きな約束事は口にせず、愛想を振りまくだけで無難にこなし、それを見て安心したのか、ミッチェル侯爵が私から眼を離し、少し離れた場所へと移動した時、『それ』がやってきた。

ちょびっとだけ髭を生やした、チョイ悪おやじ。

傲慢そうな顔の、若造。

そしてふたりを囲む、パーティーの場なのに剣を佩いた、6人の男達。

そう、私が細心の注意を払って避けまくっている、ウォンレード伯爵とエフレッド子爵とかいうイキリDQN達である。

……何でよ?

今回も、ちゃんと今朝になってから、このふたりの出欠を確認した。メッセンジャーボーイを雇って。そして、ふたりは出席しないことを確認したのだ。

主催者の方を見ると、一瞬私と眼が合った後、すっと視線を外された。

連中がやってきた時に私の方を見ていたということは、……そういうことなんだろうな。

うん、嵌められた、ってことだ。

ふっっっざけんなよオォォォっっ!!

料理コーナーに退避、と思ったら、6人の手下達のうちのふたりが、私と料理コーナーとの間に移動しやがった! くそっ!

周囲の貴族や給仕達も数歩下がり、私と連中の間には障害物がなくなった。完全に、罠だ。

ぷっつん!

よ~し、そういう態度に出るなら、受けて立ってやろうじゃないか……。

「皆様!」

近付いてくる連中に背を向けて、大きな声で叫んだ。

連中は、驚いて、いったん足を止めた模様。

「どうやら私、騙され、嵌められ、売られたようですので、これにてお 暇(いとま) 致します。

この仕打ちに対して非常に不愉快に思っておりますため、本日交わしました皆様とのお約束は、全て 反故(ほご) 、白紙に戻します。では、失礼!」

そう言って、最も人の密度が低いところを駆け抜けて、窓際に到達。誰かに止められたりしないうちに素早く窓を開けて、脚力と両腕の力で窓枠へと飛び上がり、そのまま庭へと飛び降りた。建物の床面がかなり高くなっていたため、窓枠からは2メートル以上ありそうな高さを。

「「「「「「なっ!!」」」」」」

後ろで、驚愕の叫び声らしきものが聞こえたけれど、そんなの関係ない。

身体が窓枠より下になって、皆の視界から外れた時点で、転移!

このまま落ちると、足を 挫(くじ) きそうだからね。

ぼすん!

着地地点は、自宅の、お兄ちゃんの部屋。

そのままにしてあるお兄ちゃんの部屋だけど、ひとつだけ、手を加えてある。

それは、ベッドの上に布団を重ねて、衝撃を緩和するようにしてあることだ。

うん、運動エネルギーは相殺できるけど、急な時には動転して少し失敗したり、誤差が出たりするといけないからね。あの、王都絶対防衛戦の時に、隊長さんのとこのビリヤード台の上に出現しちゃって、背中とお尻に思い切り食い込んだ球の痛みは忘れないよ!

そして、すぐに1階に下りて、手土産を物色。

少し張り込んだ品々を連れて、物産店へと転移。

「こんばんは~!」

そして、やってきました、お馴染み、お隣の警備隊詰所。

「これ、お土産です」

そう言って差し出す、小振りのダンボール箱と紙袋。

「いつも済まないねぇ……、って、こ、これは!!」

受け取った箱を見て、眼を剥く警備兵のおじさん。

そう、以前にもあげたことのある、ちょいお高めのブランデー、6本入りである。

「「「「「おおおおおおお!!」」」」」

他の5人のおじさん達も、大喜び。

だって、侯爵様が飛び付くような代物だからねぇ。

それに、うちのお隣さんなんだから、多分私が始めた貿易のことは、上の方から教えられているはず。その商品のひとつである、高級酒のことも含めて。

「もう輸入販売を始めたから、人に見せたり、転売して小遣い稼ぎに使ってもいいですよ。そこそこの値段で売れると思うから、騙されて買い叩かれないようにして下さいね」

「「「「「「誰が売るかよ!!」」」」」」

ありゃ、そういうものなの?

「で、しばらく留守にする予定です。おかしなのに眼を付けられちゃったようなので……。

戻るまで、お店に忍び込もうとする者がいたら、全部牢屋に入れちゃって下さいね」

「「「「「「任せろ!!」」」」」」

そして、念の為、お店の商品は棚ごと転送。

行き先は、連続転移で、子爵領に造った私のプライベート倉庫へ。

こんな時のために、常に充分なスペースが空けてある。

2階は元々空っぽであり、地球の品は何も置いてない。なので、お店の中は完全に空っぽ、空き家同然である。鍵も掛けずに放置しておいても大丈夫なくらい、何もない。

……いや、掛けるけどね、鍵。

よし、1カ月くらい放置してやる! 新聞記事になるくらい。

……放置新聞。

って、うるさいわ!!