軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

59 シュークリームは難しい

自室の壁を見ると、「有言実行」「やればできる!!」と書かれたポスターが見える気がする。

もう、妄想大爆発状態な私……。

言霊って本当なのか、ああやって三人の前で口に出した途端に動き出した感がある。

あれこれとタスクを洗い出す作業は頭を使うけど、勉強と違ってものすごく楽しい。

優先順位とスケジュールを考慮した結果、なんと一番急ぐのは、「絵師へのロゴデザイン発注」だった。

そしてスムーズな依頼に繋げるための袖の下的なものとして、「心躍るスイーツの開発」がそれとセットになる。

パトリックは食に対する執着はなさそうだけど、芸術家なだけに、美しい物や変わった物への感度が高い。

だから見たことや食べたことのないスイーツには素直に感動していた。

なので、今、ここ。スイーツの開発。

講義がお休みなので、パトリックとは別行動。

もう四の五の言っていられないので、レイモンに見つかったら速攻謝る前提で厨房にいる。

アルマとシュークリーム開発の真っ最中なのだ。

ローラはもう随分前に諦めてくれたみたいなので助かる。

「マルティーヌ様。卵の量を五段階に調節した結果がこれです。ミルクやバターは全て同じ分量にしています。いかがでしょうか。真ん中のものがマルティーヌ様が以前おっしゃっていたものに近いと思うのですが……」

そう言ってアルマが差し出したお皿を受け取り、代わる代わる粗熱が取れたばかりのシュー皮を食べ比べてみる。

「そうね。私もこれが、皮も柔らか過ぎずしっかりしていて一番美味しいと思うわ」

シュー皮の「味」に関しては、これで決まりだな。

嬉しそうなアルマは、次の課題クリアを目指してまたシュー皮を作り始めた。

焼き上がりまでの間、先に作っておいたカスタードクリームをつまみ食いすることに。

出来上がったときにクリーム自体の味見は済ませているので、クリームブリュレにして食べていると、アルマにバレてしまった。

「マルティーヌ様! お待ちください。いったい何をされたのですか? 私にも見せていただきたいのですが。もう一度作っていただけないでしょうか」

えぇ……。

新作スイーツに貪欲なアルマ。

まあでも、これはこれで新メニューになるかもね。

「大したことはしていないわよ? ココット皿にカスタードクリームを入れて、プリンと同じように蒸し焼きにしたら、最後は砂糖をまぶして、その砂糖が溶けて焦げるまで焼くだけ。冷ますとパリンと表面が割れて面白いの。簡単でしょ?」

「すごいです! マルティーヌ様! それも是非皆様にお出ししたいです」

「そうね。でもこれは お(・) 客(・) 様(・) が帰られてからにしましょう」

「かしこまりました」

そうこうしているとシュー皮が焼けた。

「マルティーヌ様。私なりに練り具合を変えて焼いてみたのですが、こちらでいかがでしょうか……?」

「アルマ! これよ――そう、これ! これに決めましょう」

なかなかシュー皮が定まらなかったようだけど、やっと完成したかな?

アルマにシュークリームという食べ物を一生懸命説明して、彼女なりにイメージしてもらったところで作り始めてもらったんだけど……。

私が正確なレシピを覚えていなかったせいで、彼女が一人奮闘する羽目になったのだ。

材料を常温に戻すのは基本中の基本として、作り方のコツがうろ覚えで、これまでのスイーツのようには伝授できなかった。

確か、シュー皮の生地は小麦粉を入れてから、ある程度練らないといけなかったような……とか、卵はちょっとずつ入れていたような……とか、記憶が曖昧なのだ。

霧吹きをしてから焼いたことだけは覚えていたんだけど。

なにせ数回しか作ったことがなく、どれも満足のいくものが作れなかったからか、記憶から消してしまったらしい。

シュー皮の方にも砂糖を入れた方がいいと言ったのはアルマだ。試食すると砂糖が入った方が美味しかったから採用となった。

私のレシピから砂糖が抜け落ちていたのか、それともアルマの才能なのか。どちらにせよ、すごいよ、アルマ。

この調子なら一両日あればマカロンも作れるかなぁ? いや、さすがに時間が足りないか。

シュークリームでパトリックを落とせたらいいんだけど、保険としてマカロンも作っておきたいんだよね。

このままの予定でいけば、パトリックは三日後に王都に帰ってしまう。本当に時間がない。

マカロンもレシピがはっきりしないからなぁ。

小洒落たレストランで食事をしたとき、「自家製のマカロンです」と出されたマカロンがサックサクでおいしくて、レシピを検索した記憶はあるんだけど、肝心の材料が思い出せない。

卵白と砂糖に何かを混ぜていたのは確か。何だったっけ?

でも結局いろんな味のマカロンがあったから、要はメレンゲに味をつけてサクッと焼けばいいことにして、そのままをアルマに伝えた。クリームをサンドすることだけは忘れずに言って。

後は――アルマに丸投げと相成った。ごめんなさい。

あの淡いグリーンの有名店のマカロンは、ねっとりとして少しだけ重い感じがしたんだよね。何が入っていたんだろう?