軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

158 アレスター

私はちゃんとディディエとマークを指名した。

ないとは思うけれど、やっぱりアレスターに不敬は付きものだから。

いくら身分を伏せて「ガイ」なんて名乗ったところで、 一度(ひとたび) 何か起これば間違いなく責任問題だ。

後見人の公爵をも巻き込んでしまうことになるから、お行儀の良い二人に来てもらう手筈だったのに。

いや二人も来ているけどさ。どうしてアレスターと一緒なのよ。

「あの、皆様。少し外させていただいてよろしいでしょうか。夜間の警護の件で、少々確認すべきことがございまして」

「私たちはお茶をいただいているので行って来なさい」

「はい」

公爵のお許しが出たので急いで外に出た。

「みんなこんな時間からどうしたの? 今日は夜間の警護をお願いしたはずよ? 夜通し働くのだから、今は仮眠を取るなりして体力を温存しておく時間じゃないの? それにそもそもアレスターには頼んでいないのだけれど?」

「ん? 迷惑な客が来たと聞いてな!」

おーい! それ言わないでよ! 絶対に本人の前で言わないでよ!

「ワシに任せとけ!」

ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って!

まさか王太子に突撃するつもり?

本当に、私が「あっ」と言う間にドアを開け放って部屋に入って行った。

「ほお。背だけは伸びたんじゃなあ」

いーやぁー!

王太子に向かって平民の子どもを相手にするような喋り方はやめてー!

「うわぁっ」

へ? 王太子が飛び退いた。いつぞやの私とおんなじような反応をしている。

王太子くらいの歳の男子でも、やっぱり巨大熊みたいな大男は怖いのかな。

とにかく早く追い返さなきゃ。

「なっ、どうしてあなたがここに!」

あれ? 知り合い?

「アレスター? あなた……この方と面識があるの?」

「一度声をかけたことがあるが、逃げられたから話はしておらんなあ」

そういえば王宮に呼ばれるような人だったんだよね。

「なっ、あれは違う。私はまだ六歳だったし、たまたま廊下ですれ違っただけだ」

「成長された今なら構わんでしょう。ぜひ手合わせを――」

やめてぇー!

「アレスター! そんなことをするために来たのではないでしょう! それに、今はワークショップに不備がないか確認しているところなのだから邪魔しないでちょうだい!」

「ほぉ」

な、何で主人に向かってそんな挑発的な顔をするのよ。

「とにかくあなたたちは警護の下見とか、役割分担とか、ほら、何かやることがあるでしょ」

王太子の顔色が悪いから早く部屋から出て行ってほしいんだけど。

それにしても王太子は本当にアレスターが苦手なんだね。まあ小さい頃にこんな強面に絡まれたらトラウマものだよね。

……あ!

じゃあ、今みたいにアレスターが出張ってくるモンテンセン伯爵領にはもう二度と来ないね?

アレスター、グッジョブ!

「ワシらも客として利用していいと聞いたが違ったか?」

何だ。ついでにご飯を食べたいと? まあ、いいでしょう。

まさかご飯を食べた後、ここで仮眠を取ろうなんて考えていないよね?

休むにしても客室は駄目だよ?

「しっしっ」と小さく手を振ってアレスターを外に追い出した。

一応ディディエに言っておくか。最悪、救護室のベッドを使ってもらおう。

「アレスターの手綱を緩めないでね」とディディエに念押しして、三人にレストランに入ってもらった。

アレスターが片付いたところに公爵がやって来た。うーん相変わらず表情を読ませないなぁ。

「王太――ガイは街並みを見て回りたいそうだ」

なるほど。メンタルが落ちてしまってブレンドする気力がなくなったんだね。

「馬車で少しだけ遠出するが風景を見るだけなので案内は不要だ。夕食の時間までには戻る」

つまり、『車窓から観光』で下車しないのね? よかった。

こんな身なりのいい人を領民が見たら腰を抜かすよ。一発で貴族だってわかるもんね。

本当は森林浴プランをお勧めしたかったけれど、まだ整備できていないしね。

「君は屋敷に戻りなさい。明日の見送りは不要なので来なくてよい」

「え? でも――」

「不要だ。ガイはお忍びで訪れただけで、モンテンセン伯爵を訪ねて来た訳ではないからな」

「はい」

でも本当にいいのかなぁ?

「来るなと言っても来るものだろう」などと、言外の意味を読み取らせるようなことはしないと思うけど、ちょっぴり不安。

一応早起きして見送るか。朝食は抜いてもお茶の時間にサンドイッチを作ってもらえばいいし。

よし、そうしよう。