軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7話

(あの明かり……! ゴブリンの集落じゃない! たぶん、人間の家だ!)

小高い丘のような場所に出た時、遠目に人間の家らしき明かりがいくつも集まっている場所を見つけた。すでに日が暮れているので、明日の朝にでも向かおう。

夜に知らない人間が訪ねてきたら不審に思われそうだし、私には話せないというハンデもある。せめて感じのいい笑顔が良く見える明るい時間帯の方が受け入れてもらえる可能性が高いと思う。

(じゃあ今日はこのあたりで野宿だね。明日が楽しみ!)

人間らしい野宿をするためにあたりで薪を集めることにした。マンドラゴラには必要ないのだが、人間であれば火を使い、明かりと暖を取りながら野宿をするはずだ。

私の場合は暗くても普通にあたりが見えるから明かりは必要ないけれど。暗闇の中を人間が明かりもなしに過ごしていたら異様だろう。ここまでは普通に昼夜も関係なく進んできたけれど、もう集落も近いし、もし誰かに見られたらまずい。

(まあ、ランプ草を使えば明かりは確保できるけど……まだ夜は寒いから、やっぱり火があった方が自然でしょ)

ランプ草というのは私が取り込んだ植物の一つで、拳二つ分ほどの大きさのスズランに似た形の花が、ランタンのように光っているものだ。【ステータス表示】のスキルで情報を得たところ、人間もこれを明かりとして使うことがあるらしい。

薪を集める間はランプ草であたりを照らすことにした。服の蔦を通して手の先にランプ草を生み出し、それをプチッとちぎった。

(痛ッ……やっぱり痛いな、これ、痛くないようにできたらいいのに)

そう思ったとたん「ピコン」という音がして『【痛覚遮断】を獲得』と表示される。……しまった、これ以上レベルを上げるのは難しそうだからポイントを使わないようにしようと思っていたのに、意図せずスキル取得をしてしまい、10ポイントも消費した。望んだら勝手に進化してしまうのが魔物の体の悩みどころだ。

(でもまあいいか、痛いのは嫌だしね……必要な進化だったということで……)

ランプ草を片手に薪を集めていく。だいぶ薪も集まった頃、妙なものを見つけた。地面に横たわる、土に汚れた毛玉のようなもの。よく見てみると呼吸をしていて、生きている。

(……犬?)

だらりと舌を出して横たわる毛玉。よく見てみると四本の脚が生えている。毛玉ではなく、獣であるらしい。私の記憶では毛の長い犬に該当する姿だ。

薪をその場において代わりに犬を拾う。ランプ草で照らしながら観察してみたが、病気なのか酷く弱っているようだ。

(犬かぁ。病気の動物はたぶん美味しくないよね……それに元日本人としては食べるのにはそれなりの抵抗が……あ、そうだ。ペットにしよう!)

犬は人間と非常に深い関わりのある生物だ。そして犬を飼うのはとても人間らしい行いと言えるだろう。つまり、ちょっと変人っぽい見た目であっても犬を連れていれば、人間味があるのではないかという考えだ。

(弱ってるけど、回復薬飲ませてあっためておけば回復するんじゃないかな。完全回復薬も作り放題のこの体に感謝だね)

薬をどう与えるか悩んだが、相手は犬だ。人間に唾液を飲ませるのは問題になるだろうけど、犬なら問題あるまい。

多様化のスキルでストローのような空洞のある茎の植物を生やし、蔦を使ってうまく茎の先端を犬の口に咥えさせ、自分の口から薬を流し込んだ。一瞬口移しが早いと考えたのだが、直接触れると多分「吸って」しまう。私の顔は根の部分にあたるので、生き物に触れない方が無難なのだ。

(正確にいえばこの口だって口じゃないしね……食事は手でするし……)

私の口は、根の部分にある口の形をした声や薬を出せる穴であって、ここから食事をするわけでもなく唾液もでない。そんな体が人間ではないせいか、この行為に対して抵抗も何も感じなかった。……なんだか人間の感覚が失われつつある気がする。

しかし大抵の傷や病であればこの薬で治るだろう。この犬も明日には元気になっているはずだ。

(早く焚火を作って犬を温めてあげようっと)

早速その場に拾った枝を組んで焚火の用意をし、それに火をつけようとして、今度は火をつける道具がないことに気が付いた。

(改めて考えると人間って本当にいろんな道具に頼ってるよね。……うーん、火か……花火草の実でいいかな)

髪の先に花火草を生やし、その実を摘み取った。もう痛みを感じないのは痛覚遮断スキルのおかげだろう。痛くないだけで効率が段違いだ。……うん、ポイントは残り20とちょっとになってしまったけれど、身に付けて良かったスキルだと思う。

花火草は実を潰せばパチパチと火花が散るので、人間はそれを利用して火種とする。ただ私は自分で生み出した植物なら自由に操ることができるので、その実に爆ぜるよう命令を下せばいい。

花火草の実を地面に置き、その上に枯草や枝を組みなおす。実に爆ぜるようにと念じれば、薪の中で火花が散って燃え始めた。これで焚火の完成である。

(これだけで温まるのかな。……ベッド的なものも作ってあげた方がいいかなぁ)

温めるために草のベッドでも作ってあげたほうがいいかもしれない。柔らかい芝生のような植物の種を作り、地面に落としていく。「多様化」で生み出した植物の成長は、私の体を離れた後も自由自在であり、私の眷属のような扱いなのか、思う通りの形に成長させたり、多少は動かすことも可能なので結構便利だ。

密集した状態で育つように命じ、ふかふかの草のベッドが完成した。そこにそっと犬を寝かせてやる。

(明日にはこの草を枯らせば証拠隠滅できるしね。まずはこの犬を回復させて……懐かせるのはどうしよう?)

食べ物を与えれば懐くとは思うので、明日はあたりの動物や魔物を探して狩るべきかもしれない。声は使えないから、植物で罠でも作ろう。私も力を使ってちょっとお腹が空いてきたので、自分の食事も必要だ。……一応、この犬は非常食になるかもしれないけれど、せっかく助けたし食べたくはない。

そんなことを考えながら、犬を寝かせた草のベッドに腰を下ろす。本当は地面に埋まった方が心地よく休めるのだが、人間が地面に埋まっていたらまずい。即身仏に間違えられたら大変だ。

座ったまま目を閉じ、火が爆ぜる音を聞きながら朝まで休んだ。

(そろそろ朝かな……犬はどうし、てぇええぇ!?)

そして朝、隣を見ると――――何故か犬ではなく素っ裸の子供が寝ていて、私は驚きのあまり体の内側で叫び声をあげた。