軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25話

レオハルトは何故だか私に親切だ。睡眠香の花は処分していい、こっそり出かけたい時は自分が見張り番をして協力すると申し出てくれた。どうやら全面的に私に協力してくれるつもりでいるらしい。

(やっぱり呪い持ちで大変だから仲間意識を持ってくれたんだろうなぁ……ごめんね本当は呪い掛ける方で……)

その勘違いを都合よく利用させてもらうのはちょっと申し訳ないが、私が人と共に暮らすためには非常に強力な助っ人だ。私も何かあれば彼のために力を尽くすつもりではあるので、お互いに協力関係と言い張りたいところである。

「それらのマンドラゴラは……魔境からここまで逃げてきたものを、魔女殿が捕らえて従わせたことにしましょう。そして無害化するよう、魔法を掛けた。そう説明するつもりですが、いかがですか?」

それで問題ないなら、と思い頷いた。マンドラゴラたちも足元で手をあげているので、その設定を受け入れたようだ。いや、まあ、元から話すことはないので彼らが設定を理解している必要はないのだが。

「あ、魔女さま。レオハルトさん。おはようございま、す……?」

「おはようございます、ノエル殿」

「……あの、それは何ですか?」

目を覚まして家から出てきたノエルはさっそく私の足元に居る五体のマンドラゴラの存在に気づいたようだ。奇妙なものを見る目をしているため、私は心の中で子株たちに命じた。――いまこそ無害アピールをする時だ。

子株たちは自然と動き出し、ノエルの前でV字型に並ぶ。特徴のある凹凸マンドラゴラを先頭に、それぞれがびしりとポーズを決めた。……背後に爆炎でもあれば戦隊ヒーローのように見えるかもしれない。

(全員違う色にしたしかなりそれっぽい……)

違いが分かった方がいいかと思い、子株たちの服の色は花で染色して別々にしてある。最初の子は緑、二体目は黄、三体目は水色、四体目は桃色、五体目が紫で染めた。ちなみに凹凸マンドラゴラは最後の紫だ。

「……変なの」

せっかくポーズを決めたのにノエルからは訳が分からないという顔をされ、子株たちはショックを受けたように地面に手をついて項垂れた。……まあ、害があるようには思われていなさそうなので、無害アピールは成功だろう。

「これは魔女殿が捕獲した動くマンドラゴラです。どうやら魔境から逃げ出してきたようですね」

「え、魔物なんですかこれ!? っていうかマンドラゴラなんですか……!?」

「ええ。やはり竜の死地という特殊な環境で、異質な進化をしたのでしょうね。しかし魔女殿が魔法で従え、無害化しているので叫ぶことはありません。薬の材料として役に立つでしょう」

薬の材料、と言われてマンドラゴラたちはムンクの「叫び」のように両手を顔の近くに当てていた。恐らく体内では叫んでいるが、その声は決して漏れることはない。全員に声の蓋を作らせているから、意図的に叫ばなければ声はでないのだ。なお、その「意図的」に叫ぶことも私が禁じているので、声なき叫びをあげるばかりである。

「じゃあ危なくはないんですね……そっか、魔女さまの 僕(しもべ) になったなら俺の同僚か。お前たち、俺が先輩だからな」

敬礼するように片手を挙げて返事をする五体のマンドラゴラ。ノエルはそれで満足したように頷いた。どうやら子株たちも受け入れてもらえたらしい。このままノエルに世話を任せてもいいかもしれない。

「村人たちにも驚かせないように説明しておいた方がいいでしょう。聖騎士団の方へは、私が説明を」

「分かりました。……魔女さま、このマンドラゴラ村に連れて行って見せた方が説明が早いです。なんか……全然危険そうには見えないですから。すごく変な形のもいるけど、それ以外は可愛いです」

可愛いと言われた四体は嬉しそうに両手を上げ、変だと言われた一体はショックを受けていた。だがこの反応は所詮、彼らが考える「無害そうな可愛い動き」でしかないはずだ。本当にその感情があるかどうかは不明である。

そんなマンドラゴラを連れて私たちは村へと向かった。

村人たちの前であざとい動きを見せる子株たち。ゆるキャラのような存在を知らない彼らも、コロコロとした体を短い手足で動かす姿は微笑ましく見えるらしい。まあ本来呪いを振りまく存在なのだけれど、その能力は封じているので愛嬌を振りまくばかりで危険なものではない。

そして紫のマンドラゴラだけは別の注目を集めている。胸を張り、尻を振って、見せつけるように歩く姿はまるでファッションショーのモデルだが着ているのは全身タイツだ。その姿は特に男児受けがよく、大笑いされている。

「な、なあ! あれ! あれだよ俺が見たの! ナイスバディのマンドラゴラ!」

「うわ、ほんとにいたんですか……でもあれなんですか?」

「魔境から逃げてきたものです。村に入る前に魔女殿が捕獲して使役しました。この目で見ましたので間違いありません」

「へえ、魔女さまはそんな事もできるんですね……」

レオハルトが騎士団のメンバーにうまく説明してくれている。彼は内部からとても信頼されているようで、その証言を疑う者はいなさそうだ。私を調査している彼ら側に味方がいるというのは大変心強い。

「やっぱ魔女さんにそっくッんぐ……!?」

「リッター。……二度と言わない約束ですが」

視界の端でリッターがレオハルトに口を塞がれているのが見えた。周囲の騎士が呆れたようにため息をついている様子からして、よくあることなのかもしれない。

「悪かった……てか、レオハルト、お前少し雰囲気変わったか?」

「そうでしょうか?」

「騎士道をまっすぐ突き進むレオハルト隊長ですからね。リッター隊長が女性に失礼すぎるので当然の対応かと。自分も結構引いてます」

「……そうだな俺が間違ってるな……あのマンドラゴラ見てたら少しは女慣れしねーかな。魔女さんにあれ借りれないか頼めない?」

「お断りします」

騎士団も子株たちや私を疑っている様子はなく、楽しそうに見える。どうやら何も問題はなさそうだ。このまま子株たちが村に居ても何とも思われなくなれば、私は好きな場所に子株カメラを設置できることになる。そうなればまた便利そうだな、と考えていた時だった。

「な、なんだこれは……?!」

そこへちょうど通りかかった行商人の声が、やたらと大きく響いた。