軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

017 エヴァルドとの買い物

数日後に、エヴァルドの休みが取れてセレスティーヌと一緒に買い物に行く事になった。午前中に出てドレスショップに行き、エヴァルドお勧めのお店にランチを食べに行く予定だ。

ドレスショップは、事前にオーレリアにお勧めのお店を聞いておいた。

セレスティーヌが玄関を出ると、既にエヴァルドが馬車の前で待っていてくれた。

「おはようございます。エヴァルド様」

セレスティーヌが、笑顔で挨拶するとエヴァルドも笑顔で挨拶を返してくれる。

「おはようございます、セレスティーヌ。では、行きましょう」

そう言って、エヴァルドが手を差し出してくれた。セレスティーヌは、こう言うのは何だか新鮮だなと、エヴァルドの手を握り馬車に乗り込む。

続いて、エヴァルドが向かいの席に座り、従者に合図を送ると馬車が動き出す。

セレスティーヌが、向かいに座るエヴァルドを見ると少し緊張しているような顔をしていた。

「緊張しています?」

セレスティーヌが、無遠慮に聞く。

「実は少しだけ……」

エヴァルドが、素直に頷く。

「大丈夫ですよ。エスコートするのが、こんな年上のおばさんで申し訳ないくらいですから」

セレスティーヌは、扇子を取り出して恥ずかしそうに呟く。

「セレスティーヌは、おばさんなんかじゃありませんよ! 綺麗で素敵な方です」

エヴァルドが、真剣な表情で言葉を返す。セレスティーヌは、エヴァルドの言葉を聞いて照れる。

エヴァルドから言われると、お世辞とか嘘ではないと分かるからくすぐったい。

「でも、私、五人も子供がいるんですよ? 立派なおばさんです」

セレスティーヌは、照れている事を隠したくて余計な事を言ってしまう。

エヴァルドは、初めて知った事なのか凄く驚いた表情をしている。

「セレスティーヌは、ご結婚されているんですか?」

セレスティーヌは、あれ? アルバート様何も話してない? と驚く。

もしかしたら、極プライベートな事だから話さないでくれていたのかもしれない。

「アルバート様にお聞きになっていないのですね。私、実は結婚していたんですが、離縁してこちらの国に来たんです。離縁した理由を話すとかなり長くなるのですが……」

セレスティーヌは、困ったような顔をする。

「そうですね、今聞くような話ではないですね……。よければ、後でランチの時にでもゆっくり話して貰えますか? 行くレストランは個室なので大丈夫です」

セレスティーヌは、頷く。いきなり結婚していたって聞いたら驚くよね……。アルバート様に話して、エヴァルド様に話さない理由はないし。何より、お世話になっている身で隠しておく事じゃない。

ドレスショップに到着すると、エヴァルドが先に馬車から降りてセレスティーヌをエスコートして降ろしてくれた。

エヴァルドは、少し緊張した面持ちでいるが当たり前に迷いなく手を差し出してくれる。些細な事だけれど、セレスティーヌは嬉しく思う。

女性として扱われるってこう言う事なのかなと少し思った。

ドレスショップの中に入ると、すぐに店員に声を掛けられる。

「いらっしゃいませ。どういった物をお探しですか?」

手慣れた女性店員が、笑顔で二人を迎えてくれた。

「オーレリア・フローレスの紹介で伺ったのだけれど、部屋着から外出着やディナー時に着るドレスなど一通り見せて貰いたいの」

セレスティーヌが、ハキハキと迷いなく答える。

「セレスティーヌ・フォスター様ですね、お待ちしておりました。オーレリア様よりお話は伺っております。ご案内いたします。お連れのお客様もご一緒に見られますか?」

店員が、エヴァルドに声を掛ける。エヴァルドは、こう言った事に慣れていないようで困った顔をしている。

「エヴァルド様、宜しければ一緒に選んで頂けます? 私、男の人に選んで貰った事ってないから、そうして貰えると嬉しいのですが……」

セレスティーヌが、助け船を出す。

待合スペースで待って貰っても構わないけど、折角一緒に来たのだし選んで貰いたいなと思い言葉にした。

「私で良ければ……」

そう言って、エヴァルドが恥ずかしそうに返事をした。

先ずは、外出着から見ようと店内を移動する。こちらですと案内されたスペースには、ドレスがカラー順にラックに綺麗にかかっている。

セレスティーヌは、今までは特に目立つ必要もなかったのでおしゃれに興味もなく無難な物ばかり着ていた。

折角だから、自分に似合う色のものを着てみようかしら? と思う。

「エヴァルド様、私って何色が似合うと思います? 今までは、地味な色味のものばかり着ていたので」

セレスティーヌは、エヴァルドの意見をまず聞いてみる事にする。一体何色って言うのかしら? とちょっとワクワクする。

セレスティーヌの言葉を聞いたエヴァルドは、驚いた顔をする。

「本当に、私が選んでいいんですか?」

「もちろんです」

セレスティーヌが、にっこり笑顔で返す。

エヴァルドは、若干オドオドしつつもドレスを見て考え始める。気になる色のドレスを手に取っては、ラックに戻し別のドレスを見ている。

その様子を見ていると、とても真剣な表情で考えてくれていて、セレスティーヌは嬉しくなる。

「素敵なお連れ様ですね。あんなに真剣に探されている方は、中々いらっしゃいませんよ」

店員が、セレスティーヌに向かって微笑む。それを聞いて、セレスティーヌはとても嬉しかった。

やっぱり、エヴァルド様は誰が見ても素敵な人に間違いないんだと再確認できたから。

そこに――――

コツッ コツッ と靴音を響かせて誰かが歩いてくる。

セレスティーヌが音のする方を見ると、とても華やかな一団がこちらに向かって来ていた。

一際、華やかな女性を先頭に、後ろには三人の女性を従えている。

一体、どなたなのかしら? とセレスティーヌが不思議に思っていると……。店員が口を開いた。

「シャルロット殿下、どうなさいました?」

セレスティーヌが驚く。今、殿下って言った? もしかして、エヴァルド様と婚約するはずだったあの?

セレスティーヌは、エヴァルドの方を見るとドレス選びに夢中で全く気づいていない。

「見知った馬車が止まっていると思って来てみたら、とても珍しい方がいて驚いちゃったわ」

シャルロットが、可笑しそうに笑っている。セレスティーヌは、王女の顔がエヴァルドを馬鹿にしてるように見えて苛立ちを覚える。

「エヴァルド。貴方、こんな所で何をやっているの?」

シャルロットが、エヴァルドに向かって声を掛けた。

漸くエヴァルドも、こちらに気づきシャルロットに顔を向けた。とても真剣な顔だったけど、どこか楽しそうにも感じていた表情が一転して無表情へと変わる。

「シャルロット殿下、お久しぶりです」

エヴァルドが、手を止めてセレスティーヌの方に歩いて来る。セレスティーヌをシャルロットから隠すような立ち位置で止まった。

「貴方にドレスを選ぶような相手がいるなんて知らなかったわ。そちらは、何方?」

シャルロットが、一々癇に障るようなしゃべり方でエヴァルドに訊ねる。

「こちらの女性は、隣国から来た私の客人ですので……。シャルロット殿下に紹介する必要はないかと存じます」

エヴァルドが、はっきりとした物言いで告げる。

「あら、やだ。リディー王国の人間じゃないのね。どーりで、エヴァルドなんかにドレスを選んで貰っている訳ね。ふふふ。貴方、もう少し選んで貰う相手を考えた方がよろしいのではなくて?」

シャルロットが、セレスティーヌに向かって言葉を発する。セレスティーヌは、聞いていてイライラが爆発しそうになる。

でもここで爆発させたら、エヴァルド様のご迷惑になる。自分に必死で言い聞かせながら、小さく深呼吸した。

「初めてお目にかかります。インファート王国から参りました、セレスティーヌ・フォスターと申します。ご忠告感謝いたします。ですが、大丈夫ですわ。私は、エヴァルド様に選んで貰いたいので」

セレスティーヌは、これでもかと言うほどにっこり笑顔で微笑み言葉を返す。

「そう。何も事情を知らない方なのね……。可哀想な方。早く、こちらの事情を教えて貰った方がよろしいわよ。では、失礼するわ」

そう言うと、シャルロットは踵を返して颯爽と去って行く。後ろの三人の女性達も、哀れみの視線をセレスティーヌに投げるとシャルロットの後に続いた。

シャルロット達の姿が見えなくなると、エヴァルドが口を開く。

「すみません。私の所為で、嫌な雰囲気になってしまい……」

セレスティーヌは、大きく首を振る。

「エヴァルド様の所為ではありません。あの方が、馬鹿なんです」

セレスティーヌが、はっきり言い切る。

6歳の子供じゃあるまいし、何なのあの態度は? もしかして今も昔と同じように思って見下しているのかしら? 本当に信じられない。

しかも、あの方未だに殿下って事は、もしかして結婚してないんじゃないの? 自分の方が、可哀想だって気づいてないのかしら?

「セレスティーヌ……。そんなはっきりと……」

エヴァルドが、何やら複雑な表情を浮かべる。次第に、笑い声が零れる。

「くっくっく。馬鹿って……。そんな事言う人を、初めて聞いたよ。あはは」

エヴァルドが、今まで見た事ない楽しそうな顔で声を出して笑っている。

ほら、やっぱり。楽しそうに笑っているエヴァルド様、凄く素敵。

「エヴァルド様、楽しそうに笑っている顔が素敵ですよ」

セレスティーヌが、微笑む。

「セレスティーヌといると、楽しい事ばかりだね」

そう言って、エヴァルドは目の涙を拭いながら一番の笑顔を見せてくれた。