軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新しい従業員を仕入れよう

一晩寝たらニクもすっかり元気を取り戻したのか、いつのまにか俺の抱き枕業務に復帰していた。俺が寝ている間に潜り込んだようだ、仕事熱心な奴め。ちゃんと暑くないように掛け布団をタオルケットに交換する仕事の細かさよ。

人手不足とは言ったが、この宿はダンジョンの秘密がたくさん含まれている。

ダンジョンコアがロクコの部屋の照明に使われているとか。

なので普通に従業員を雇うわけにはいかない。ではどうするか……というわけで手に入れた奴隷がイチカである。だがさすがにイチカほどの掘り出し物はそうそういないだろう。しかししかし、留守番できる従業員を増やす必要がある。

今の人数だと誰かを連れて人里に出かけるということもできないだろう。せっかくトンネル開通したのに、イチカをパヴェーラに里帰りとかもさせられていないしな。パヴェーラの物資はトンネルを使うお客さんから少し貰えたりしてるけど。

……魚とか渡されて、「コレ料理してくれよ!」とか言われても、俺、料理できないんだよな。

それに宿の料理を作ってるのは謎の料理人、キョウ=シャさんという設定だ。シェフを呼べとかいう奇特な人も今のところ居ないから使ってない設定だけど。

イチカは食べるの専門で料理は嗜む程度しかしないらしいし……あ、魚はイチカが焼き魚にした。そして自分で食った。

そうだ、次の従業員はできればまともに料理ができる奴がいいな。俺がDPで出す料理を再現できる腕前があれば、あとは食材さえおいておけば俺とロクコが2人ともいなくても宿が運営できるし。いずれロクコもハクさんみたく出かけられるようにしてやったほうがいいだろう。

「というわけで、今回は従業員を召喚するぞー」

「従業員を召喚……ああ。人型に擬態できるモンスターってことね!」

ハクさんが連れていた執事、クロウェも「サキュバス」というモンスターだ。つまり、人型で知性があり、できれば料理上手で足が綺麗な女の子型モンスターが望ましい。

尚、男型がダメなのは当ダンジョンのスポンサー(ハクさん)の意向であって俺にハーレム願望があるという理由ではない。

「でも、相当高いわよ?」

「そうなんだよ。……安く済ませるならやっぱり奴隷だろうけどな。仮に【収納】を覚えさせる分のDPを差し引いたとしても、安上がりだ」

ではなぜわざわざ高い人型モンスターにするのか。それは、知性あるモンスターであれば、DPを使える可能性があるからである。いや、むしろDPを使えるからこそ人型モンスターは高いんじゃないだろうか。

「なるほど、モンスターがDPを使えるなら私もお出かけできるってわけね」

「そういうことだ。……というわけで、カタログから選んでみたけど、やっぱりサキュバスがいいんじゃないかなと。戦力的にも心強いし、能力もいい」

「クロウェっていう前例が居るし、安心感はあるわね……でも、レドラっていったっけ? レッドドラゴンの。あれみたく人化の術とかつかえればドラゴンも行けるんじゃないかしら」

「戦力は問題ないだろけど人化できるドラゴンとかDP足りないだろ。レドラもあれしっぽとかそのままだったし。それにできれば2,3人欲しいんだが……」

「それだとサキュバスでも足りないでしょ」

尚、貯蓄DPの殆どが吹っ飛ぶ程度だ。今は収入が安定してるからさほど問題はないけど。

「あ、そうだ。不死鳥に人化覚えさせるとか。まだ卵だけど! あれ、でも結構前にドラゴンブレスで孵してもらう約束してなかった?」

「……やっべ、すっかり忘れてた」

不死鳥の卵についてだが、孵ってしまったらもう卵素材はとれないということで、勿体ないからもうすこし素材を溜めてから、ということにしていた。……つまり、全自動卵割りゴーレムにセットしたまますっかり忘れていた。

「……十分素材集まったしそろそろ孵してもらわないとな」

「ケーマ? あんた、不死鳥孵ったら真っ先にくちばしで貫かれるんじゃない?」

「こ、怖いこと言うなよ」

ぶるるっと体を震わせつつ、話を戻す。

「他にできるだけ安くて使い勝手が良いのとかいないの? あ。戦闘力なくてもいいのよね?」

「そうだな。戦闘力より店番できることの方が重要だから……」

「これなんてどう?」

ロクコが示した内容は、「吸血鬼」……って、かなり戦闘力高いしDPも高いのでは。

「なんかしらないけどバリエーション多いのよ、吸血鬼。……ほら、下のほうはかなり安いわ!」

「レッサーだと知能怪しそうだから、通常のにして……お、それでも安いかな。3万DPからか、今のDPなら……そんな痛くないぞ」

多少痛いけど、現金収入をDPに変換すれば問題ない。最近は安定して1日500DP以上入ってるし、使い切っても生活に問題はない。

ちなみに上は100万DPを超える。真祖とか書いてある……。

「……でも吸血鬼ってことは日光にあたったら灰にならない?」

「カスタマイズ項目が多いのよ。ほらみて、日光無効ってのもあるの」

「おいおい、でもそれ高いだろ?」

「そこでこのオプションよ」

攻撃力オプション。……100が上限で、最低は0。DPの割合はそことほぼ連動していた。

「試しにこの攻撃力オプションを0にするとね?」

……日光無効オプションにかかるDPが……1DPになった。

他の弱点克服系オプションも軒並み1DPだ、安い。

蝙蝠変身とか血液武器化とかいう心ときめく吸血鬼能力オプションは高いままだが。

で、カスタマイズオプションを弄りまくった結果。

「……何の能力もない、羽も飛べない、牙は残ってるけど攻撃力もない、ただし弱点もない……吸血……鬼?」

血を飲む必要も無い。普通にお肉食べればいいとかもはや吸血鬼じゃなかった。

しかも元が3万DPだったのに原価割って約1万5千DP。レッサーヴァンパイア並だぞおい。で、戦闘力皆無。……これで知性無かったら完全に役立たずだな。

もはや吸血鬼かどうか怪しいが、候補に入れて保留としておこう。

「このシルキーっていうのは? どうやら家の仕事をしてくれる妖精らしいわよ」

シルキー。家事などの手伝いをしてくれ、わりと美人の姿をしていると言われているお家妖精だ。

美人、いいね。戦闘力も少ないせいか、1万DPというのもなかなかにリーズナブル。

「それならコレもいいかもしれない。『座敷童』っての。5万DPするけど」

「ん? へぇ。幸運の妖精ね……あ、でもこれ子供とか心の綺麗な人にしか見えないって」

あ、そりゃまずいな。お客さんに見えないんじゃマズイ。却下だ。

「ウィッチってのもいるわね。これはどうなの?」

「ふむ、ウィッチか……魔女、いいんじゃないか? 人型だろうし……っていうか、人間と何が違うんだ?」

「え? そうねぇ、魔石の有無じゃない?」

「そういえば魔石があればモンスターなんだったな、この世界の基準的に」

魔女もオプションで見習い、一人前、魔道士とかある。見習いであれば1万5千か……見習いのクセに高い。というか、モンスター分類でちゃんと知性あるやつが出てくるんだろうか?

あ、でも最初から魔法スキル覚えてるのか。見習いだと下級2個だけだけど。

というかそういえば、このモンスターをDPと交換するシステムってどうなってるんだろう。俺みたく異世界から引っ張ってきたりしてるんだろうか。それともモンスターを生成してるのか……

「ケーマみたいな特殊な例を除けば、普通はDPで生成するんだと思うけどね? ……それに普通は命令したら従うようにできてるのよ、モンスターって」

「え、それじゃあなんで俺召喚されたんだ?」

「……ガチャが特別なんじゃない?」

とりあえず、呼び出すモンスターは決まった。

『吸血鬼(カスタム仕様)』『シルキー』『魔女(見習い)』だ。

今後増やす際にどれを増やすか、ということを検討するために今は3種類を1体……1人ずつにしよう。

……まぁ……最悪どれかひとつは知性ありで接客につかえると信じて……

「吸血鬼、シルキー、魔女、召喚!」

魔法陣がヴォンっと部屋いっぱいに拡がり、キュンっと直径1m位に収まる。

そして、女の子が3人。魔法陣から現れた。

まず分かりやすいのはローブに杖を持ったそばかす茶髪娘。まぁ魔女だろうな。見た目は普通に女の子。これで知能がなかったら嘘だろ。

で、次がメイド服の薄緑色の髪……シルキーかな。メイド服、シルクだし。これで吸血鬼っていうことはないだろ。透けてたりしないようで何よりだ。

最後には黒いボンテージ服の銀髪。消去法で吸血鬼だろう。羽も牙もわからないけど。

3人は魔法陣にゆったりと浮遊していたが、ゆっくりと地に足を付けて立つ。

吸血鬼が、背中の中ごろまで伸びた銀色の髪をなびかせ、目を開いた。

ルビーのような紅色の瞳がゆっくりと俺とロクコの方を見る。

「初めまして、マスター……」

「喋った! 喋ったぞ!」

「やったわねケーマ! 知性ありよ!」

「え、あの」

おお、吸血鬼、戸惑ってるぞ! ちゃんと考えている証拠だ!

「後の二人は? 喋れるか?」

「え、あ。はい。初めましてマスター」

「これからお仕え致します。どうぞよろしくお願いします、マスター」

魔女もシルキーも喋れるようだ。全員、無事話ができる。

……見た目も問題なさそうだし、これは完全勝利だ。やったね!