軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

情報収集(盗聴)

「よし、それじゃあ今日も『土下寝』しないとなー」

「ケーマも大変よね、毎日『ドゲネ』しないといけないなんて……それも12時間も。で、その間ニクも抱き枕で使えないからその分私が働くハメになるんだけど?」

「ん? ロクコも働きたくないのか? でも雑用ならほとんどゴーレムがこなせるから料理出すだけだろ?」

「……ゴーレムがこんなに頼もしいとは思ってなかったわよほんと」

宿の雑用についてはクレイゴーレムに特製の靴と手袋をつけ、ロクコとイチカのいう事を聞くようにして働かせている。

といっても特にすることはない。料理の配膳くらいのはずだ。問題を起こす冒険者はギルドに押し付けるし、掃除や洗濯は俺がまとめて『浄化』で一発だからな。

「ニクは【収納】あるんだから、そこに料理つっこんでおけば私がいなくてもいいのよね」

「……いや、ニクは抱き枕なんだからそもそも食堂で働く方がおかしいんだって。なー?」

「はいっ! 私は抱き枕なのでっ」

犬耳と尻尾をぴこぴこさせながらのいい返事だ。そんなに働きたくなかったのか、さすが俺の抱き枕。

触り心地の良い犬耳をつまんでこりこりするように撫でてやると、目を閉じてぷるぷると体を震わせる。

「むむむ……じゃああれよ、私のこともちゃんと褒めなさいよ!」

「ん? いつもホントに感謝してるよ。ロクコが居るから俺はここに居るわけだしな」

ダンジョンマスターになったおかげで、日本に居た時よりも睡眠時間が多くなっているのだ。

DPで交換できるから食べ物にも別段不満もないし。

「これからもよろしく頼むぞ、ロクコ」

「あっ、あったりまえよ! ふふん、まぁ私は休まなくても大丈夫だからね!」

ロクコは上機嫌で出て行った。

……休まなくても大丈夫とか、ホントすごいよなぁ。俺には到底耐えられそうにないわ。

*

「いやぁッ、なかなかイイやつだったねッ!」

「だなァ。これで裏切者の一派じゃなければ言うこたァねェんだがなァ……」

『火焔窟』ダンジョンマスター、レッドドラゴンのレドラ。そして、第112番ダンジョンコア、イッテツ。

二人は最近唐突に現れた隣人についての話題で盛り上がっていた。

「俺にもイッテツってェ新しい名前くれたしなァ」

「へぇ、ま、アタイのつけた『112』の方がいい名前だけどねッ!」

「ハハ、ニンゲンには言い難いらしいぜェ。まァ、俺もレドラからもらった名前の方が大事だァ」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないかッ! やっぱり素敵な旦那様だよぉ『112』ッ」

レドラがイッテツを呼ぶ際の『112』はドラゴン語のため、ドラゴン語を習得しているか、さもなくば翻訳系のスキルがなければ咆哮にしか聞こえないだろう。

ニンゲンには発音が難しいそれだったが、レドラは人化していながらも流暢に発音していた。

「しっかしこのクリスタル像はキラキラしててかっこいいねぇ、ふへへっ」

「おォ、俺も苦労した甲斐があったってなモンよォ」

お目当てのお宝を手に入れてだらしない顔になっているレドラを見て、イッテツは満足げに小さく火を噴いた。

「……あァ、ダンジョンバトルするんだったァ。『転換期』の兆候だしておかないとなァ」

『転換期』、というのは以前他のダンジョンコアに教えてもらったもので、ダンジョンバトルをするにあたって邪魔なニンゲンを追い出せたり、ダンジョンバトルの後で構造がガラリと変わっていてもニンゲンが疑問に思わない便利なモノだ、とイッテツは認識していた。

罠を増やしたり、心なしか通路を狭めたり、モンスターの数が増えたり普段見かけないようなモンスターを出現させたりといったことが『転換期』の兆候になる。それもまた、ダンジョンバトル前としては実に都合がいい。

……もっとも、その話の出所が『裏切者』の第89番ダンジョンコアだということは、そもそも頭の中に入っていなかった。うまい話を考えたヤツがいるものだと感心だけしていた。

「さて、そんじゃァ罠やモンスターを増やすかァ」

「なぁなぁ『112』ッ! もちろんアタイにも出番があるんだよねッ?!」

「…………おォ、しっかりあるぞォ?」

「なんだいその間は……」

イッテツとしては、モンスターとしてレドラを出すことは避けたいことだった。

なにせダンジョンマスターであるし、愛しい妻でもある。もっとも、その本人が『暴れたい』というのであればそれを叶えるのは 吝(やぶさ) かではない。実際、この『火焔窟』の最大戦力にしてボスなのだ、レドラは。使わない理由はない。

「……5階層にボス部屋作るから、そこで待ち受けとけェ。レドラが突破されたら負けだぜェ?」

「アタイが雑魚共をそっから通さなきゃいいんだね、分かりやすくて気に入ったッ!」

カッカッカ! とレドラは上機嫌に笑う。その表情に、自分が負けるという想像は一切なかった。

「ククク、楽しみだァ。だがケーマの野郎ォ、ありゃ何か策がある顔だったぜェ。……まァ、最悪勝負に負けても50階層まではこれねェだろォ、さァすがに山の半分はくれてやれねェからなァ?」

*

と、『火焔窟』でのやりとりの一部始終を、クリスタル像ゴーレム越しに見ていたわけだが。

「なるほど、5階にボス部屋な……そして50階層、と。なるほど、クリスタルゴーレムの点もそのあたりにあるな」

「むぅ、罠はどう増やしてるのかしら。112番がメニュー動かしてるだけだからよくわかんないわ、メニューは覗けないし」

メニューについては、見せようとしない限り自分にしか見えないということが分かっている。最初からそこまでは期待していなかったからまぁ想像通りだ。

あ、ちなみにこの映像は録画である。実際このやり取りがあった時に俺は寝てた。もとい、『土下寝』で意識を飛ばしてた。仰向けになったりうつ伏せになったり、間をとって横向きになったりと実に忙しかったのだ。忙しかったのだ。

「……ケーマ、普通にやってドラゴンに勝てるの?」

「いや、ドラゴンと戦ったことないからなんとも。作戦はあるけど」

ダンジョン自体はここのところちまちまと作り溜めておいた対策でどうにかなるとしても、ドラゴンは正直全くわからない。天然モノのレッドドラゴンってやっぱり強いんだろうか。

まぁ、勝ちは確定してるんだし気楽にいこう。

今回はこっちの改装が無い分、準備が楽でいいな。やはり防衛戦を持ち掛けて正解だった。