軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョン攻略

ダンジョン内の移動は、俺がナリキンに背負われながら魔法を乱発する方針に変わった。

今の俺は『神の寝具』によるMP回復はないものの、なんかこう、使いまくってたおかげでMPは素で大量にある。

初級魔法6個分くらいしか消費しない【エレメンタルバースト】は自然回復で賄えるのである。

まぁ体力が尽きるわけだが。

ナリキンの背中、意外と揺れずに快適だから助かるわ。

『おいおい、今ので何発目だ?』

『【ジャッジメントレイ】をあんな連発できるだなんて、神の使いよ!』

『まさか隠された第二の聖女……ってコト!?』

『いや、魔法特化の聖女候補生だろう。体力があれば違っていたはずだ』

あぶね。神のパジャマ着てHPも回復して動き回れる状態だったら俺が真の聖女だとか言われてたかもしれなかったな。

やはり神のパジャマを着てこなかったのは正解だったか。

「というかキョウ様、トラップ相手にも【ジャッジメントレイ】はやり過ぎでは?」

「これが一番早いんだよ。マネはしなくていいぞ」

「そうだぞ聖女アルカ。キョウ殿の言うことに間違いはないのだ」

「そこまでは言ってないぞナリキン」

ナリキンお前、教皇になるならそういう発言は控えた方がいいぞ。

なにせ光神教のトップだ。トップが正体不明な女の言いなりは不味いだろう。

『ナリキン様、キョウちゃんのこと大事にし過ぎじゃないか?』

『そりゃ事実上の妻なんだし』

『教皇とはいえ妻は大事にしないとだから好感高いわ』

妻じゃねーっつってんだろチクショウめぇ!!

『まって? もしかして……キョウ様って……光神様の化身なんじゃ!?』

『……!! いや、しかし。体力が……だが、辻褄は合う……!』

『そうだ、体力なんていくらでも演技できる。だがあの無尽蔵な魔力は!』

『少なくとも光神様の使徒以上の存在なのでは……!?』

おいおいさすがにそれは……

いや地味に合ってたな。そういや俺勇者だから聖王国基準では『神の使徒』って呼び方も間違いじゃないんだったわ。

「アルカ殿? なぜ得意げなんだ?」

「うふふ、ナリキン様。私達のキョウ様が皆に認められていて嬉しくないわけがありませんよね」

「なるほど。一理あるな」

「お前ら……俺は俺のモノだからな? お前らのじゃねぇからな!?……おっとジャッジメントレイ」

ナリキンの背から、前方に出てきたリザードマンを薙ぎ払った。

ここら辺はロクコがケチったのか、見た目赤く塗っただけとかの実は弱いモンスターが配置されていた。

実はロクコから『どうせ【エレメンタルバースト】で一撃だし節約しといたわ。だからバレないよう一撃でやっといてね』と少し不機嫌な通信が来たのはここだけの話。

配信的にも、弱さが露呈しないようにロクコのリクエスト通り圧倒的一撃で屠っておくのが正解だろう。

ちなみに不機嫌の理由は、『順調に攻略され過ぎててむかつくけど、ケーマが偽の姿とはいえ聖女と結婚するのもなんだから見逃してあげるわ、チッ!』とのことである。

「ふふふ、キョウ様ったらもうすっかり一人称も『俺』で、打ち解けてくれたようでなによりです」

「うむ。やはりキョウ殿はこうでなければな!」

「お前ら??」

仲いいじゃねぇか結婚したらどうだ? おい?

『キョウちゃん意外と口悪くて良い』

『見た目幼な妻、中身最強冒険者なのって理想的な妻じゃん』

『俺も夫婦になりたい……でも聖女様の夫婦とか畏れ多すぎる無理』

『そもそも選ばれねぇわ! 自惚れてんなボケ!』

「お前ら???」

既に好循環ループ……好きな人が好きと言ったものも好き、みたいな流れに組み込まれているのか、配信視聴者共はもはや何でもいいようだ。

ともあれ、ダンジョンは順調に進み、2日目の昼に最後のボス部屋と思われる扉の前へとたどり着いた。

『ナリキン様の背中で安心して寝ちゃうキョウちゃん可愛いかったです!』

『いやー、ノンストップ攻略で仮眠といいつつガチ寝しちゃったからな』

『ダンジョンの中でも安心できる――夫婦の愛に守られている、って 理解(ワカ) ってるってコト? 尊いっすね?』

ちょっと徹夜に負けて居眠りしたらこの有様だよ!!

「おいナリキン、俺、変な寝言とか言ってなかったか?」

「大丈夫でしたぞ。一応音声は切っておきましたしな」

「キョウ様がお休みの間にもちゃんと進みましたからね。感謝してください」

「……ありがとよ」

お前が足引っ張らずにちゃんと攻略していれば、俺が来る前にダンジョン攻略できただろうに……と思いつつ、一応感謝の言葉は返しておく。

ちなみにナリキンと聖女アルカは寝ていないようだが、実はリビングアーマーのナリキンはもちろん、ソロ攻略に慣れているアルカも3日程度の徹夜はどうということは無いらしい。

なんということか。オフトン教としては由々しき連中である。

(ちなみに視聴者の方は事前の入場チケットの都合で1日で入れ替わった模様)

とはいえダンジョン攻略としてはそれで良いのだが。

「ここが最下層であれば、1ヶ月には間に合いますね」

「あとはボスを倒すだけだ。いけるか?」

「さすがに小休止したいです。1日で構いませんのでお茶しませんか?」

「1時間だけ休んでいいぞ」

1日経ったらみなし夫婦成立ギリギリになるだろうがよ。

俺にはチキンレースする趣味はないんだ。

「あら、キョウ様なら『一人で行くから休憩は不要だ、待ってろ』とか言うかと思いましたが」

「……おお。その手があったか」

配信の取れ高が一切なくなるが、俺一人でボスを処理するという手がある事に気が付いた。

確かボスは無印ドラゴンだったはず。それなら俺一人でも倒せるだろう。

言っては何だが、俺の魔法はただのドラゴンには酷な威力を持っているのだ。

「よし、じゃあちょっと行ってくる――」

「お待ちください。さすがにキョウ様とはいえ、未知のボス相手に一人で挑むのは不味いでしょう」

「ですな。アルカ殿なら万一も大丈夫だろうし。……ああ、いや、そういえば試練でしたな。それは失敗になるんだろうか?」

「別に良いのでは? 私を連れてダンジョンを攻略せよという試練ですが、私が最後まで一緒にという話ではありませんし。いえ、勿論最後までご一緒したい気持ちしかないのですが」

なるほど。

そう考えると別に聖女を守る必要がないということで、いっそもう殺して先に帰らせるべきかとも思えてきた。

「まぁ、休憩の前にボス部屋を覗いて見てみましょう。もしかしたらボスが待機しているタイプかもしれませんし」

「そうだな。待機していたら休憩しながら戦略を立てられるもんな」

そういうわけで、ちらっとボス部屋の扉を少しだけ開けて中を覗いてみた。

そこにはドラゴンが――

――明らかにノーマルではない、白黒のドラゴンが待機していた。