軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

やらせ

ここは洞窟――ダンジョンの中。

『な、ナリキンよ。どこのダンジョンに挑んでいるのじゃ?』

「それについてはまだ秘密です。ここまで言っておいて、1ヶ月で攻略できなかったときに恥ずかしいですからな……!」

狼狽する老神官に対し、ナリキンはお茶目にウィンクを飛ばす。

ここでナリキンに「そろそろ終了で」とあらかじめ伝えていたハンドサインで指示。

「おっと。そろそろ魔道具の通信限界です。今日の通信はここまでですな。ではまた明日、同じ時間にお会いしましょう! 皆も是非また明日見に来てくれ! ではな!」

『な、ま、待て! もっと説明を――』

と、ここで撮影をストップ。

老神官にはブツ切りになってしまったが、まぁいいだろう。こういうのは少し気になるくらいで終わるのが丁度いいのだ。

「はいカーーーーーーーーーーーット!」

「……ふぅ、お疲れ様ですマスター」

「おう。ナリキンもお疲れ」

俺はナリキンにねぎらいの言葉をかけた。

その胸元にはしっかりと聖書が括り付けられている。

ここは『欲望の洞窟』の派生ダンジョン。名前もなく、今回の撮影の為だけに作った――しいて言えば『撮影セットダンジョン』である。

ナリキンの移動についてはソトのアレだ。

「マスターの発想はとんでもありませんな。まさかダンジョンを攻略する様を魔道具で見せつけようなどとは……」

「いずれ使おうと思ってた戦略のひとつだ。丁度いい魔道具もあったしな」

今回の撮影機材――まぁ実際はダンジョンのモニター機能等を駆使しているわけだが――この魔道具は本来は町3つ分くらいの距離しか通信できないので、それがまたいいカモフラージュになるだろう。

とはいえ、聖王国の人はこの魔道具の正確な性能を知らないだろうけど。

……カモフラージュ相手は主にハクさんだな。もし聞かれたらだけど、10番の管理してたダンジョン跡地をいい具合に改造して撮影したとでも言っておこう。

「しかしこの魔道具、どうやって借り受けたのです? 移動はソト様経由ですか?」

「トイが管理してたんだよ」

「ああ。 トイ(ナーナ) があらかじめ持っていたのですか」

トイ、レオナが作ってダイードに置いていた魔道具を持ち出していやがった。

今回の撮影が全部終わったのち、あとでダイードに渡せば「ダイード王国から借りてた」ということになるだろう。

その際は「持ち出した犯人から取り返した」とでも言っとこう。一切嘘が無いし勝手に名前を借りた対価にもなる。多分。

借りた先が 帝国(ウチ) じゃないのは、ダンジョン国家たるラヴェリオ帝国との繋がりを出すのはまだ早いだろうからだ。教皇になってから存分に繋がりを出して行きたい。

今回やったことをまとめてみると……

・派生ダンジョン『撮影セットダンジョン』を作った

・ソトのダンジョンを使ってナリキンを『撮影セットダンジョン』に呼び寄せた

・トイに魔道具を使わせた(実際はダンジョン機能を駆使)

(あとでダイードに魔道具を返す)

……と、こんなとこである。

あ、『撮影セットダンジョン』は最終的にダミーコアを破壊して崩壊するまでやるよ。

実際は再利用できる程度にするけど、セットを破壊して撮影するシーンはクライマックスの見所だよねぇ。

「本を抱えて大衆に向けて配信してやれば『誰がどう見ても所持していると分かる』状態だし条件には合うだろう」

「所在不明のダンジョンにいれば、まず暗殺者や妨害を心配する必要はなくなりますしな。それに、『ダンジョン攻略をしている』となればあの国で文句を言う 輩(やから) はおりますまい」

そういうことだ。聖王国は絶対にダンジョンぶっ殺す国家。

ダンジョン攻略がなによりも最優先であり、ダンジョン攻略中であれば「細けぇこたぁ良いんだよ!」となる。

大抵のイチャモンも「お前もダンジョン攻略してこいよ」って言えば黙る。

そう。「配信してない時は見せてないってコトで、ダメじゃないか……?」とか言われても「うるせぇ! こっちはダンジョン攻略してんだよ!! 見たけりゃダンジョンに来い!」でゴリ押せるのだ。

ダンジョンの位置は非公開だけどな。

「生憎、魔道具の魔力消費の都合で一日数時間しか配信できないからなぁ」

「それ以外は実質休養ですな」

自前のダンジョンだから、敵が出てくるかどうかも自由自在。

敵はスポーンだから実質タダだし。こっちの命令を聞くので、本来味方で襲い掛かることのないナリキンにも自然に襲い掛かる。

そして『本を狙うな』といった命令も有効なので本の安全は保たれる。

「これが『ヤラセ』……ってやつだな」

「ヤラセ、ですか?」

「ま、適度にダンジョン生活を楽しんでくれ。丁度いい里帰りだろう」

「ええ、生まれてから聖王国に居た時間の方が長くなってしまっていましたからな。ここいらでダンジョン生活のなんたるかを思い出しておきますか、攻略側ですが」

心なしか嬉しそうだ。

「んじゃ、明日は環境部屋にするか。今日は『明らかにダンジョン!』と分かりやすい洞窟ダンジョンだったけど」

「もう2日くらいは良いのでは? あくまでダンジョンに居るということを強調するなら、最初の3日はダンジョンの方が良いかと」

「おお、言うじゃないか。採用」

「3日目の最後に環境部屋を発見しても良いですな」

かくして史上初、安心安全のダンジョン配信in教皇選が始まった。

期間は1ヶ月ある。ダンジョンの宝箱を開けたり、安全地帯でキャンプしたり、食料の現地調達ハウツー等々……配信ネタには事欠かないだろう。

「ところでナリキン、その本はもう外しても良いんじゃないか?」

「ああいえ、一応ずっと身に着けておけと言う話ですしな。このままにしておこうかと」

「律儀だなぁ」

ま、いいけどね。