軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

制圧

シドの協力を得て、俺達はパヴェーラに向かった。

そこからの話はとても早い。シドの護衛、ハーヴィがさくっと門番に話を通すと、それから1時間後には既に商店を包囲しつつあった。

相手の商人に気付かれないように、こっそりと私服の兵士達が集まっている。号令ひとつで一気に包囲が完成するだろう。

うーん、相手の商人が可哀そうになるレベル。俺達のメイン商人が暗殺されかけたんだから正当な報復だけどね。

「クロ殿、生け捕りで頼むぞ。ああ、生きているなら骨折くらいは問題ない」

「わかりました。ところで、首の1本や2本切り落としても構わないでしょうか?」

「生け捕りで頼むぞ? 首ではなく腕にしておいてくれ。止血すれば死なない」

ハーヴィはやれやれと肩をすくめた。すまんね、血の気の多い猟犬で。

「ミチルを連れてくればよかったでしょうか……」

「うん? あのシスターの少女か? 関係ないだろう?」

「ミチルにシド様を説得してもらって、シド様にハーヴィさんを説得してもらえたかなと」

「あー。あの少女は確かにシド様と仲が良いらしいな。平民だとパヴェーラ家に娶るには少し手間ではあるが」

「お、おい! 僕とミチルはそんな関係ではないぞ!?」

「呼び捨てする仲ですか、語るに落ちましたな」

へぇ、シドはサキュバスシスターのロリと仲が良いのか……

オフトン教はシスターの結婚を禁止していないので、恋愛を止めたりはしないが。精々口説き落とすといいよ。

さて、俺は魔法で地下通路がないかを探るとしよう。

地下の様子を探るという魔法は、あるかもしれないが俺は覚えていない。だが、【クリエイトゴーレム】の前段階として魔力を流すことで、変な感じがないかを見るという魔法キャンセルテクニックによる探査だ。流した分の魔力は消費する。

「ところでシド殿。ここの地下には下水道とかあるのか?」

「む? 下水道? とはなんだ?」

「ああ、そこからか。地下を通す人工の川だな。下水、汚れた水を流したりする」

「なるほど。……それは、最初からそのように作らないと大変そうだな?」

「そうだな」

この世界では魔法があるし、俺の【クリエイトゴーレム】ならその点特に問題なく増築出来そうではある。

だがそもそも【浄化】などの生活魔法がある以上、下水道は水が豊富なら魔力の節約になるって程度の話だったりもする。

ぶっちゃけ割に合わないのだ、下水道。勇者の知識ってことで概念は記録されている。

「まぁ、そのような設備は作っていないのでないはずだ」

「じゃあここにある地下の空洞はなんだろうな? 道みたいだが」

「……あるのか?」

「天然の地下水脈か、洞窟かもしれないな」

あるのだ。ゴーレムが1体通れるくらいの通路が。

魔力の感じでは大雑把にしか把握できないので、本当に地下通路なのか、あるいは天然の何かなのかは分からない。

だが十分に人が通ることができるのであれば、そこを逃げ道にする可能性はあるのだ。

「というか、そういうの分かるのかケーマ殿」

「まぁちょっとな。いっそ穴をあけて待ち伏せするか、あるいは塞いでおくか」

「できるなら頼みたいところだが……お代はいかほどだ?」

「気にするな、ウチのクロが暴れたいだけだから」

「……分かった、生死を問わずとしておく」

はぁ、と肩を落としてため息をつくシド。

んん? いやそういう意味で言ったわけじゃないんだが……まあいいか。

「じゃあ俺はここに穴をあけるとしよう。おーいクロ、商人だけは間違っても殺すなよ、背景がないか尋問しないといけないからな」

「わかりました」

ぺこ、と頷くニク。

「ケーマ殿、穴をあけるのはどれくらいかかる?」

「今からやろう。すぐ終わる――【エレメンタルバースト】」

俺は地面に向かって【エレメンタルバースト】を放つ。バォン! と地面に人が下りれる程度の穴が50cmほど空いた。円柱を綺麗にくりぬいたような穴だ。

「……【エレメンタルバースト】【エレメンタルバースト】【エレメンタルバースト】」

連発すると、50cmずつ穴が掘られていく。そして、7発ほどで通路まで貫通した。

少し通路の床まで掘ってしまったが、まぁ地下3mちょいくらいのところに通ってたようだ。

「よし、届いたぞ。ロープはあるか? 縄梯子の方がいいんだが」

「……あ、ああ。とんでもないな、一瞬だったぞ。灯りはいるか?」

「んー。【ライトボール】があるからいらないかな」

そしてぽいっと光属性の下級魔法、【ライトボール】を穴に落とす。うん、中は坑道のような、木の柱で補強された通路のようだ。

「こりゃかなり本格的な通路だな。どうするシド殿?」

「おい、おいおい! これどこまで繋がってるんだ!?」

「そりゃー……最低でもスラムまで通じてるんじゃないか? ほら、スラムに対して影響力のある商人なんだろ?」

「……町壁の外まで? ハハ、とんでもないものが見つかったな」

両手で頭を抱えるシド。

うん、よく考えると密入国し放題だもんね、これ。一介の商人ができる仕事かどうか怪しいし、もしかしなくても聖王国が関わってるんじゃないかな?

「……シド様。ゴレーヌ殿に協力していただいて正解でしたね」

「ああ、罪状は国家反逆罪に格上げだな。事後承諾の説明が容易になったよ。……ハーヴィ、捕縛はこちらでやるので、一部の兵士を指揮してこの地下通路を調査してくれ、至急だ」

「かしこまりました、シド様」

大きなため息をつくシド。

「……あの、そろそろいっていいですか?」

「待て、待てだぞクロ。シド殿の号令を待ってからいくんだぞ」

「あ、ああ。すまない。すぐに始めよう。一同! 行動開始!」

「「「応ッ!」」」

「わんっ!」

ニクは先陣を切って商店に殴り込みをかけに行った。

かくして、商店はあっさり包囲され、ニクは楽しく大暴れし、目当ての商人は地下通路を使って逃げようとしてさくっと生け捕りされた。少し貫通した分の凹みに足をとられてずっこけ、通路天井に空いた穴から見える空に、目を見開いて驚き固まっていたところを捕縛された。

あと、領主への事後報告は当然許可された。国家反逆罪なら仕方ないね。