軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヤマタノオロチを倒してそれから

かくして、俺はヤマタノオロチ討伐を二度果たした勇者となった。

ちくしょう!! こんなはずでは!!

「お帰り二人とも。仕事終わったの?」

「……ああうん。終わったよ」

「いやぁケーマさん流石としか言いようがない大活躍でしたよ、これはSランク冒険者に推薦するしかないですね!」

生き生きしているワタルの顔に、ロクコは「あっ」と察した。

「……大活躍だったみたいね?」

「不本意ながら、うん」

「ワタルに誘われたのが運の尽き、かしらね?」

ワタルに運を全部吸われたか……

【超幸運】にギリギリ対抗しうる天然幸運娘のロクコと離れたのも不味かったかもしれない。

つまりはそう、ロクコの言う通り運の尽きだったのだ。

「やっぱロクコ居ないとダメだわ……」

「な、なによ急に。私が居なくてそんなに寂しかった?」

一応ロクコに650番コアの事を伝えておくかな、と思いつつネルネに目配せする。

「ではー、ワタルさんはーこちらへどうぞー?」

「え? なんですか? いきますけど」

「役立たずだったということなのですよねー? おしおきー、ですよー?」

「ワ、ワァ……行き来の足にはなりましたよ……?」

と、意図を読み取ってワタルを連れて行ってくれた。

さすがウチのダンジョンモンスターだぜ。

「……というわけで、650番コアがいたよ」

「へぇ。あいつここら辺が住処だったのね。良いこと聞いたわ」

「次の集会で会ったら俺の代わりに殴っといてくれ」

「ふふん、まかせて! 剣でぺちぺちしておくわね!」

ロクコの勝負服の飾り剣かぁ。ちょっと痛そう。

「マップにしっかり書いといて脅しに使いましょう。具体的な場所は?」

「あ、うん。それなら一応マップにメモ書いといたよ」

「さすがケーマね! ふふふふ……みてなさいよ650番……! 積年の恨み、はらさでおくべきかっ」

ふっふっふ、と笑うロクコ。楽しそうでなによりだよ。

「……ところでネルネのお仕置きって何してるのかしら? 部屋に連れてったわよね」

「見ない方がワタルのためだろ。さすがに許して差し上げろ」

「それもそうね……じゃ、私たちは私たちで出かけましょうか? デートよデート」

「……まぁ、仕事も片付いたし、あと帰ればいいだけだもんな」

それなら折角だし観光していっても良いだろう。

もっとも、気になる点として、本当にあの程度の仕事をするためだけに呼ばれたのか、というのはあるけれど。

ヤマタノオロチといえば身構えてしまうのはあるけれど、たかが一村のピンチでわざわざ外国の勇者を呼ぶものだろうか。

しかも相手は成体ですらない。育成中の幼体だったのだ。

もっと国内の勇者や猛者を募ったりすればよかっただろうに。何人も実力者がいれば普通に倒せたと思う相手。

……他に狙いがある可能性もある。

でもそれはきっとワタルの仕事だ。俺は仕事が終わったし観光して帰るだけである。

だって俺は勇者と関係ない一般ゴレーヌ村村長だものな!

「勇者ワタル様でしょうか」

作務衣を着て浴衣なロクコと神社の観光をしていたところ、そう声を掛けられた。

振り向けばそこには青髪の巫女さんがいた。俺の知ってる朱色の袴の巫女服だ。そして、黒髪が珍しいワコークとしては、だいぶ黒に近い色である。

「お待ちしておりました、ワタル様」

「いいえ、違います」

「でも名前を呼ばれて振り向きましたよね」

「ああ、知り合いにワタルって名前のやつがいるんですよ。では失礼」

何か厄介な気配を感じたので、俺はロクコをエスコートする形で離れようとする。

が、黒い作務衣の男達――黒い薄布で顔を隠した、いわゆる黒子――に囲まれてしまった。

「……なんだよ 美人局(つつもたせ) かよ。こちとら女連れだってのに」

「お待ちしておりました、ワタル様」

「だから人違いなんですけど?」

ロクコに『神の毛布』をストールの様に羽織らせる。俺自身の作務衣は『神のパジャマ』なので多少は大丈夫だろう

「ね、ケーマ? こんなの無視して行きましょ。焼き饅頭っての食べたいわ」

「そうだな。というわけで人違いだから通してくれるか?」

「お戯れを。その 御髪(おぐし) のニホン黒、間違いようがありません」

間違ってんだよなぁ。

「そもそも俺の名前はケーマ・ゴレーヌだ。お前らのお探しのワタルは、今頃宿で恋人といちゃついてるだろうよ、そっちにいけそっちに」

「ああ、同行者の帝国人がいるという話でしたね。誤魔化そうとしてもそうはいきませんよ、ワタル様?」

「誤魔化すも何も本当なんだが……」

「ふふ、ヤマタノオロチを実際に退治したのは貴方でしょう? それで確信しています、貴方こそが本物のワタル様だと」

チクショウ! ワタル! お前が活躍しなかったせいで!!

「移動の足役をあたかも本物の勇者ワタルと見せかけるとは、考えましたね」

「いや、その。そいつが本物なんだよ本当に……」

「それでは勇者ではない人間がヤマタノオロチをアッサリ倒したということになるのですが?」

「あーうん。運が悪いことに、たまたま運が良かったんだよ」

「それこそワタル様の【超幸運】の 顕(あらわ) れでしょう」

そうだね、ワタルの運が良かったせいでこうして俺にしわ寄せがきているわけだ。

と、ここでロクコに袖を引かれる。

「ケーマ、さっさと行きましょう?」

「あ、うん。そうだな。んじゃ、そういうことで通してくれ。デート中なんだ」

「そうですか……と言って通すとでも?」

「通さないなら、押し通るまでだよ。……お前たちはヤマタノオロチよりも強いのか?」

だったらお前らが退治すればよかっただろうに。

……いや、ワタルを誘き出す作戦だったならそれでいいのか。

「ねぇケーマ。どうやら私たちと敵対したいらしいし、潰してあげたら?」

「そうだな。少なくとも何か協力して欲しいってやつらの態度じゃないし……敵だな? 帝国に仇なす悪の組織か。…………潰したら功績になるかもしれないな」

ん? そうか。潰したら功績になるかもしれないのか。

これはワタルに潰させたら色々うやむやにできるかもしれない!

「……よし! 俺が協力してやる! 本物のワタルと戦わせてやろう!」

「え? ですから、貴方が勇者ワタルでは?」

「違うっつってんだろ!! 情報収集ガバガバすぎるんだよお前ら。というわけだから、夜にまたここに来てくれ。ワタル向かわせるからさ」

「そう言って逃げる気ですか? ダメですよ、今のあなたには足手まといが付いている。絶好の機会なんですから」

そう言って黒子の男達がにじり寄ってくる。

くっ、人が折角協力してやるって言ってるのに話を聞かない連中だな。一度のしとくか。

「……風よ、強烈に吹き降り敵を押さえつけよ――【ダウンバースト】!!」

「うぐぅっ!!」

久々に魔法改変で、風魔法を使い周囲を押さえつける。

強烈な風に立てずに膝をつく黒子連中。

勿論、俺とロクコは無事だ。ロクコは『神の毛布』着てるから大体何しても無事だけど。

「……こ、これが聖剣エアの力……ッ! ぐぅうっ……!」

「違うし。んじゃ、夜にここにワタル向かわせるから! 安心して倒されてくれ! さ、デートの続き行こうかロクコ」

「ええ。あっ! ねぇアブラーゲだって! おいしいのかしら?」

「油揚げかぁ。米がないから稲荷寿司はなさそうだな」

這いつくばる連中を無視して、俺とロクコは観光デートを続行した。

で、たっぷりデートしてから宿に戻ってワタルに連中の事を伝えておいた。

「え? でもそれ僕行く必要あります?」

「ネルネ、説得」

「ワタルさーんー? 役立たずのまま終わるかー? ギリギリ仕事するかー? どっちですかー?」

「仕事してきますッ!! 行ってきますねっ!!」

はぁ、やれやれ。これでワタルが何も仕事せず俺だけが云々って事にはならないだろう。

全く運のいいやつだぜ、ホント。