軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

依頼の打ち上げ

さてさて。ツィーアのダンジョン『光の楽園』でアンブロシアを回収し、依頼を達成。十分に資金を稼ぐことができた。

「ありがとうなケーマさん! おかげで当面なんとかなりそうだ。な、ムゾー」

「だな、ウゾー。これで落ち着いたらゴレーヌ村のダンジョンだけでもなんとか」

うんうん、それはよかった。

ちなみに俺とイチカにも分け前がはいっており、それなりにお小遣いとなる。

「早速買い食いしにいくでー!」

「さすが食欲魔人だな……とはいえ、今日くらいは俺達もご馳走でも食べるか、ムゾー?」

「ご馳走というと『踊る人形亭』の定食なんだが。ま、今日のところは食欲魔人について行けばいいだろう、ウゾー」

「おう、任せときぃ!」

と、親指をぐっと立てるイチカ。

「というかイチカ。ツィーアのグルメ情報、新しいのは入ってるのか?」

「あー。確かにご主人様に買われて以降、ウチが実際にツィーアまで来て食べてる店は少ない……けど、その分厳選してるんよ! だからキッチリ保証するで!」

食欲魔人たるイチカは、俺が渡している収入を使ってツィーアやパヴェーラまで乗合馬車で出向き、ちゃんと情報を更新しているらしい。

……確かに休日もあげてるわけだけど、奴隷が勝手にそこまで遠出していいの? とか思わなくもない。

「……あれ? イチカって奴隷やってるんじゃ……奴隷とは一体……?」

「ウゾー、その主人はケーマさんだぞ」

「そうか。常識にとらわれてはいけなかったな、ムゾー」

なぜかウゾームゾーも納得している。

まぁいいけどさぁ、ちゃんと帰ってきてるし。休日にちょっと出かけて、渡した給料を使うくらいしてもいいさ。

「言われてみれば、だいぶ自由にしてるよな」

「にしし、ご主人様には頭が上がらんでぇ? ま、ロクコ様にもご主人様とのデートに使えそうな店探しておけって言われとるからな。その調査もあるんよ」

ちなみに今日紹介してくれるのは『デートに使うほど色っぽくはないけど美味しいお店』とのこと。

そんなバリエーションまであるとは……

イチカの案内で、俺達は居酒屋のような風体の店にやってきていた。

「ちゅーわけで、冒険者向けの煮込み料理の店やでー。3人ともウチのおススメでいいよな? すんませーん、今日の煮込み4人前ー」

手際よく4人席について注文するイチカ。手慣れてるなぁ。

「イチカ、今日の煮込みって何が出てくるんだ?」

「なんかこう、その日入った肉とか野菜とかを適当に煮込んだ奴やな」

「……おいしいのかそれ?」

「店主の腕が良いからな。何回か来たけど、安定してウマいで。しかも安くて量もある」

何回も来てるのかよ。

「これくらいの椀いっぱいに山盛りの煮物にエールをジョッキつけても銅貨10枚超えないリーズナブルなお店やな」

「おお! そりゃいいなムゾー。俺はエールも頼もう」

「ああ。さすが食欲魔人。財布にも優しいなウゾー、俺も頼む。ケーマさんはどうする?」

「俺は良いよ。酒はあんまり飲まないんだ」

適量ならともかく、あまり飲むと気持ちよく眠れない。ましてやこの後多分帰らなきゃならないわけで、酒は飲まなくてもいいだろう。

「ならウチも果実水にしとくわ。ご主人様をさしおいて飲むわけにはいかんしな! ご主人様もそれでええよな? すんませーん」

「おお、イチカが奴隷っぽいぞムゾー」

「いやウゾー、ケーマさんをさしおいて果実水勝手に頼んでるしそれほどでもないぞ」

「まぁ、イチカが奴隷っぽくないのは今更だなぁ……」

特に罰する気もないのでいいけど。

それからすぐに、注文した煮物と飲み物がやってきた。

「お、魚入ってるぞ。ツィーアで魚とは珍しいな」

「最近はそうでもないんやでウゾー。ゴレーヌ村があるからな。干物くらいはフツーに入ってくるし、凍らせた魚も入ってくるな」

「ほう、凍らせた魚か。季節にもよるが、パヴェーラで凍らせればツィーアで丁度解けるくらいか?」

「せやでムゾー。おかげでウチの村もついでに交易路として大繁盛っちゅーわけやな」

そんなトークもさておき、早速食べてみる。

魚の他にも根菜がゴロゴロ入っているし、葉物も入っている。ポトフな感じだ。

しっかり火を通してあるので腹を壊す心配は少ないだろう。

「……! お、味がしっかりしてるな!」

「コショウか。魔国を思い出す。あっちは味が強かったからなぁ……」

「これもパヴェーラから入ってくるようになった品やね」

しっかりと香辛料とほどよい塩味がするスープだ。うーん、いいね。野菜の味とも調和していて、ニンジンやジャガイモの自然な甘さが口に広がる。

果実水を飲めば、爽やかなリンゴの味わいが口をさっぱりとさせてくれる。

「……うん、なかなかやるな。結構俺も好きな味だぞコレ」

「せやろー、伊達にキヌエに弟子入りしてないで、ここの店主」

「えっ? ちょっとまって何ソレ聞いてない。キヌエさんの弟子って?」

なんでも、この店は魚や香辛料の扱いを覚えるためにゴレーヌ村に修行に来たことがあったらしい。

「ここの店主、一時期は村で屋台もやっててな。そん時に香辛料やダンジョン産調味料の使い方をキヌエにも習ってたんよ。だからキヌエの弟子っちゅーこっちゃな」

「なるほどなぁ……ってことは、これ隠し味に醤油使ってたりするのかな」

「味をみるに、してるやろな」

ニヤリと舌なめずりするイチカ。

まさかキヌエさんがそんな方面で影響を広めているとは……

「ムゾー、つまり、この店はゴレーヌ村の手先ってことだぞ……!?」

「ああウゾー、ケーマさんは本当に手が広いな……」

「いや俺なんもしてないんだが?」

どちらかといえばロクコの手だろう。『踊る人形亭』のオーナー、やり手だなぁ。

あ、おかわりくださーい。もぐもぐ。