軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ギガプラント

お茶会の現場からアンブロシアを持ち帰った俺。

「おお! あったのか、アンブロシアが!」

「へぇ、こんなに。……依頼分は余裕だな」

「ご主人様! こんなにあるなら1個くらい食ってええよなッ!? なッッ!?」

おうおう、食べろ食べろ。ひとつくらい問題ないよ。

「うま。ジューシーやなぁ! なんかこう、力がみなぎる感じやね」

「……俺らも食ってみるか? ムゾー?」

「ああウゾー。半分ずつ食べるか」

ついでに俺も一つ食べてみる。……普通に梨っぽいな。甘くて美味い。

少し栄養ドリンクのような薬っぽい風味もある。……風邪薬のシロップみたいな?

ウゾームゾーもごくりと飲み込んだ。

「ご馳走さん。身体に染渡るなぁ」

「ちなみにアンブロシアの他に何かあったのか? 不可解な気配の正体は知りたい」

ムゾーの発言にどうこたえたものか一瞬だけ考える。

「……ドリアードかなんかの、植物の精霊がいたな。そいつにアンブロシアを貰ったんだ」

「ドリアード! なるほど、納得した」

「交渉でアンブロシアを貰えるもんなのか。すごいな」

まぁ大体本当の事だ。219番も元は植物系モンスターで、ダンジョンコアだから精霊みたいなもんだ。実際イッテツとかは精霊だし。嘘じゃあない。

「で、アッチは行き止まりだ。こっちに行こうか」

「む、そうか。了解した」

219番からおススメされたボス部屋へと向かう。

「……なにやら今度は強敵の気配があるな」

「うん、まぁそれほど強くないらしいぞ?」

「む、知っているのか?」

「アイヴィジャイアントより少し強いくらいだから勝てるらしいぞ。精霊曰く」

そして精霊と言い訳にしたのがここで生きてくる。

じゃなきゃ「何で知ってるんだ?」ってなるところだったもの。別に言わないでボス部屋に突っ込んでもいいんだけどさ。

そして、部屋はとても広く――中には、ツタのもじゃもじゃした巨大な球があった。ウチの宿よりデカい。正面にはぱぁっと大輪の花が咲いていた。直径4mはありそうな巨大な赤い花。おしべとめしべと合わせて、まるでパラポラアンテナのように見えた。

……あれがボスか?

「あ、あれは……ギガプラント!」

「知っているのかムゾー!」

「ああ。あいつはギガプラント。あれで一個の生命体――いや。あいつは内部に植物モンスターを内蔵しているからそうでもないか? まぁとにかくデカいモンスターだ」

ギガプラント。植物モンスターを産み出してくる巨大な植物。

それは 植物(プラント) の 工場(プラント) 、というダブルミーニング、いや、植物を育てる 植木鉢(プランター) も含めたらトリプルミーニングなモンスターだった。

それらは語源的に同じなわけだが……異世界でも同じなのかな? まぁそれは今はいい。

問題は、まさに工場の如くその内部から 植物兵士(ソルジャープランツ) やら、 自爆草(クレイモア) 、 砲戦花(ホウセンカ) やらウォーカクタスにアイヴィージャイアントといった植物モンスター達を産み出してくるということだ。

「……とりまきの無限湧き、ってことか」

「そうなるな」

と、ギガプラントがこちらに気が付いたのかぐぉんと稼働音のような唸りが聞こえた。

……倒していいようなことを言っていたし、倒してみるか……まぁ、死にそうになったとしても【超変身】がある。いざとなったら全員【収納】にぶち込んで逃げればいい。

さすがにロクコの手前、逃がしてくれる、と思いたい。

「逃げるかムゾー」

「そうだなウゾー」

んん?

「え、だってこの先に用があるわけでもないし。な、ムゾー?」

「だな、ウゾー。アンブロシアも十分あるしな。戦う理由がないだろ?」

「……お、おう。確かに」

俺達がそう言ったのが聞こえたのか、ギガプラントはびくんと焦ったように花を咲かせる。そしてそれが一瞬でしおれたかと思えば、そこにはアンブロシアが生っていた。

なんとなくギガプラントが得意げにそれを見せつけているように見える。

「……あ、ほら。なんか報酬を用意してくれたぞ?」

「いや十分あるし。な、ムゾー?」

「欲をかくとロクなことにならないぞ? 引き際が肝心だな。ウゾー」

「……ウチはあれ食べたいけどー?」

イチカの意見は無視された。

「命あってだからな……」

「ここで無茶をするようなら俺達は生きてないさ。いやまぁ、 魔国(あっち) では無茶をさせられたわけだが……同僚の支援が 篤(あつ) かったしな」

「大変だったんだなぁ」

まぁ俺も倒すとまでは言っていないし、219番も倒せとは言っていなかった。

危ない危ない。無駄に働いてしまうところだったぜ……!!

んじゃ、帰るかぁ。と、引き返そうとしたときだった。

ギガプラントの体からもぞりとラッパ銃のような筒状の花弁をもった花型モンスター 砲戦花(ホウセンカ) が何個も咲き乱れ、種を飛ばして俺達を攻撃してきた。

わぁ、陸上戦艦っぽい。俺は無詠唱で壁を作って種を防いだ。

「うおっと。ありがとうケーマさん。急いで離れよう」

「あれ。今詠唱したか?」

「したぞ、ストーンウォールってな」

まぁ実際は【ストーンパイル】なんだけど。改変して壁にしてある。

「じゃ、帰るか。道は覚えてるなムゾー?」

「ああ。もちろんだウゾー」

「せやなー、アンブロシアが新鮮なうちに納品しよかー……ご主人様、パッといってパッとアレ倒して追加のアンブロシア手に入らん?」

「無茶言うなよ。さすがに俺一人じゃなぁ」

本気を出せば行けるだろうけど、ウゾームゾーに、そして219番にそれを見せる気もない。

219番からはロクコにカッコいいところを見せなくていいのかとか言われそうだと思ったけど、別にロクコだって俺が戦うところ見たいわけでもないだろう。むしろ見ているのなら腹を抱えて上機嫌に笑うさ。

今更敵を前に逃げ出したところで嫌われることはないと分かっている。

だって、俺達のダンジョン防衛じゃないんだから。本気を出す理由がない。

俺が本気で戦うのは、眠りを妨げられた時と、ロクコを守る時だけでいい。

そんなわけで、219番の期待を裏切って悪いが、俺達は尻尾巻いて逃げ出した。

ダンジョンから出るまで、それなりに妨害はあったものの普通に脱出した。

おつかれー。