軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話:思い出したやつら

「平和だなぁ」

俺はすっかり気を抜いて、村の草原で日向ぼっこしていた。

「おお……! 話には聞いていたが、何やら随分発展してるぞ、ムゾー」

「前は宿しかなかったのになぁ。ウゾー」

と、そんな二人組の男の話す声が聞こえてくる。

その二人は俺に気付いて近づいてきた。

「おっ! ケーマさん! ケーマさんだぞムゾー!」

「ああウゾー。ケーマさんだな。ううっ、懐かしくて涙が出てきた」

「……ウゾームゾーか。おひさ」

一瞬誰かと思ったが、こいつら名前を呼びあってるからすぐ思い出せていいな。

ウゾームゾー兄弟。実際は兄弟ではない二人組の冒険者だ。

このダンジョンがまだ『ただの洞窟』という名前だった時、ダンジョンバトル後の発展したダンジョンを調査しに来て、『魔剣お試し部屋』に勝手に閉じ込められて餓死しかけた冒険者。それがこいつらだ。

その後『魔剣お試し部屋』は『強欲の罠』と命名された……ある意味このダンジョン『欲望の洞窟』の名づけの由来になった奴である。

「ああ、久しぶりだ。ようやく来れたぞ」

「この村、ケーマさんが作ったのか? すごいな、酒場もある」

「まぁ勝手にできたと言っても良いんだが……再会を祝して、今日は昼飯奢ってやろう」

「本当か! あの牛肉の入ったシチューがまた食べたいな。なぁムゾー?」

「そうだなウゾー。だが俺は別の美味しいものが増えたと睨んでいる」

嬉しそうなウゾームゾー。

俺の愛剣、シエスタをくれた恩があるからな。このくらい安いもんだ。

「そういえばケーマさん。あの魔剣はどうした?」

「今日は腰に下げてないな……やはり売ってしまったか?」

「売るわけないだろ。めっちゃ使ってるよ、部下に貸したりもしてる」

教会でミサをするときに便利なのだ。耐性無いと自分が寝てしまうので使える人物は限られるけれど。

レイにはオーブで耐性つけてるから問題なく使えるのだ。

「睡眠導入用……大活躍とは言っていたが、そんな使い方をしていたのか。さすがケーマさんだな! なぁムゾー」

「まったくだ。剣は、武器は戦いにつかうものという固定観念があった。それに囚われないとはな、ウゾー」

「信者の皆には内緒だぞ。知らない方が神秘的でありがたみが出るからな」

うんうん、と感心しているウゾームゾー兄弟。

ともあれ、昼飯を奢ってやるために宿の食堂へ連れて行った。

「おお? ウゾームゾーじゃねぇか! 久々だな、生きてたのか」

丁度食堂にいたこの村の冒険者代表、ドワーフのゴゾーが声をかけてきた。

ツィーアで活動してた時に「名前が似てるな」と仲良くなった知り合いだそうな。

「おっ! ゴゾーさん! 生きていたさ、ちょっと遠出してたんだよ。なぁウゾー」

「ああ。ムゾーと共にちょっと魔国までな。凄いところだったよ、魔国は」

「魔国? そういや結構前にケーマも行ってたな」

「偶然あっちでも会ったよ」

あれはちょうど大会の時だったっけ。

広い街中でよくもまぁ……いや、普通に人外が多いから、同族の人間ってだけでそこそこ目立つか。しかも黒髪は珍しいし。

「ケーマさんは本当に強かったな。闘技大会の決勝戦、三つ巴戦はいまだに覚えてる」

「ああ。勇者ワタルの攻撃を平然といなし、もう一人の攻撃も通用していなかった。実質2対1。そうでなければケーマさんが勝ってたに違いなかったな!」

「へぇ。そんな戦いだったのか」

あん時は2位を狙ってたのにワタル達のせいで同率一位になっちまったんだよな……

そのせいで3人で決勝をやり直す羽目になって、まぁなんやかんや。

「そうだ、ゴゾーさん。このあたりで金策を教えてくれないか? 俺達、素寒貧でな」

「魔国でこさえた借金を返して、なんとか帝国に戻ってきたところなんだ。ま、その分実力は付いたけど」

「そうなのか? まぁここで金策って言ったらアイアンゴーレム狩りだけど」

「アイアンゴーレムか。相性は良くないが、まぁいけるか、ムゾー」

「ああウゾー。スクジラやシロナガに背中から襲われない分、楽に違いない」

魔国での同僚にはよく襲われたらしい、攻撃的な意味で。

「……気を抜くと後ろから殴られるんだ。仕事中にだぞ?」

「だが油断してるほうが悪い、ってなるんだ。まぁ慣れたが……」

久々に魔国の感じを聞いたなぁ。修羅の国だわ。

「そうか、お前らの武器を考えるとアイアンゴーレムより他の金策のが良いかもしれねぇな」

「贅沢は言わんが、他にあるなら教えてくれると助かる。礼はするよ」

「多少は魔法も使えるようになったが、やっぱり俺達の相棒はこいつだしな」

と、鞘に入ったままのゴーレムブレードを持ち上げるウゾームゾー。

「お! ここのダンジョンで獲れる魔剣だな。随分使い込んでるじゃねぇか」

「ああ。メンテナンスのコツもケーマさんに教えてもらったおかげもある」

「そういえばケーマさんはこの村の鍛冶師から教えてもらったと言ってたな。そいつにも礼を言っておきたいくらいだ」

「カンタラか。俺の親戚だ、あとで会わせてやろう」

身内が褒められたからか、ちょっと上機嫌なゴゾー。

「なぁ、ところで村長の俺が言うのもなんだけど、この村でアイアンゴーレム以外に金策ってあったっけ?」

「ん? 配達依頼の護衛とか初心者冒険者への指導とか結構あるぞ。最近だと公園の警備や整備、屋台のバイトが安全で割のいい仕事だな」

ああ、そういうのあるんだ。

「あと砂糖作りの手伝いも割といい。一番の力仕事は村長夫人が貸し出してるゴーレムが大体やってくれるから、案外楽なんだ」

「へぇ。ロクコのやつ、いつの間にそんな小遣い稼ぎを……」

尚、ゴーレムのレンタル料は日雇い冒険者の半額程度らしい。

……もしやロクコ、結構稼いでるのでは? 宿の収入もあるしなぁ……

「ダンジョンに砂糖……これほどの村が急にできるのも納得だな」

「とりあえず明日にでもアイアンゴーレムを狩りに行って、それからのんびり色々見てみるか。ダンジョンは大きく変わってるんだろうか?」

その後、なんやかんやウゾームゾー兄弟はゴゾーの家に泊まることになった。

家飲みしながら色々と情報交換するらしい。

ウチの宿に泊まらないことを謝っていたが、まぁ気にすんな。繁盛してるからさ。