軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ネルネとデート(1)

「……寝グセなし、ヒゲなし、服も……うん、清潔感バッチリ」

僕は勇者ワタル。本日、一世一代の大勝負に挑みます……

……そう、ネルネさんとのデートです!

このデートには僕の未来が掛かっていると言って過言ではないでしょう。

元々はケーマさんから公園の実績になれと勝ち確定の戦いだったはずなのですが、レオナさんの横槍により結果がネルネさんの判断に委ねられる事となりました。

ですが、それでこそ本来の告白というもの!

仮にあのまま告白にOKを貰えたとしても、「ネルネさんはケーマさんやロクコさんに言われたからOKしたのでは?」と燻る気持ちが残ったでしょう。

そう、だからむしろこれで良かった! 魔法への興味より、僕の方が上でなければ告白は成功しないという通常よりハードルの上がったハードモードですが!

困難に挑まずして何が勇者かッッッ!!!

「……よしっ! 勝ち取るぞ、ネルネさんの好意を! レオナさんの魔法スクロールになんか負けないぞっ!」

僕は頬をパシパシと叩いて気合を入れ、『踊る人形亭』の部屋を後にして、ネルネさんの待つ従業員寮へと向かった。

従業員寮は宿に併設されており、外に出ずに移動することができる。

普段はスタッフオンリーで入ることはできないが、今日は入る許可を貰っていた。

ネームプレートを確認し、ネルネさんの部屋の扉をノックする。

「ネルネさん、ワタルです。お迎えに上がりました」

……しばらく待つが、返事がない。

あれ? 不在かな? と改めてノックしてみる。

「ネルネさん? 居ないんでしょうか?」

約束の時間通りのハズだけれど。と、僕はここのダンジョンで手に入れた懐中時計を取り出して時間を確認する。

……うん、やっぱり約束通りの時間だ。

「朝ごはん食べに行ってるのかな? 少し待ってみるか……ん?」

と、部屋の中でどたん、ばたんっと音がする。

「ネルネさん? 大丈夫ですか?」

「あたたー……わ、ワタルさんー。すみませんー、今起きましたー」

どうやら寝てたようだ。ネルネさんらしい。ガチャっと扉が開く。

「ふはー……おはようございます、ワタルさんー」

「おはようございま……ッ、な、あ、そ、そのっ、すみません見てませんっ」

あくびしながら現れた非常に薄着なネルネさん。

ぼさぼさの髪に胸元のボタンが外れた白シャツ1枚というその姿に、僕は素早く後ろを向いた。

……いくら寝起きといえど、油断が過ぎる……ッ! スカート履いてください!

「んー? あー、支度するのでー、もうしばらくお待ちくださいー」

「は、はい」

扉の前でおとなしく立って待つ。5分くらいして、ネルネさんが扉を開けて顔を出した。

いつものローブととんがり魔女帽子。

ちなみにちらりと見えた部屋の中には、雑に脱ぎ捨てられたシャツがベッドの上に載っていた。

「おまたせしましたワタルさんー……ふぁぁー……ねむ……」

「あまり眠れてないんですか? あ、もしかしてデートが楽しみでとか」

「あー……ちょっと研究が捗りましてー……あふー」

どうやらデートが楽しみであまり眠れなかったのは僕だけだったらしい。

視界がぼやけるのか、目をこすってはパチパチと瞬きするネルネさん。

……そっとローブの中に手を入れて、ネルネさんは黒縁の眼鏡を取り出した。

そばかすのある顔に、ちゃっと眼鏡をかける。

眼鏡の凸レンズが、ほんの少し目を大きくしてみせた。

「……んー。今日はこれで行きますかー」

「眼鏡、よく似合ってますよ。ネルネさん」

「あー。眼鏡がお好きなんでしたっけー? なら丁度いいですねー」

何故それを!?

「先日、酒場でそう話していたとイチカ先輩に教えていただきましたー」

「イチカさんか」

「今日のコーディネートもー、イチカ先輩に選んでいただきましたー、どうですー?」

ゆったりくるんと一回転。魔法使いの焦げ茶いローブとワンピースが少しだけふわりと浮かんだ。

「とてもネルネさんらしくて、可愛いです」

「ふふーどうもー。ワタルさんはー……えーっとー、いつもと違ってたりしますー?」

「おお。わかりますか? 実は新品なんですよこのシャツ」

「わかりますともー。『浄化』の付与魔法かかってますよねー? 素敵ですー」

うんうんと頷くネルネさん。

ネルネさんそういうところしか興味ないからなぁ。そこも愛おしい。

「あー、私もいちおうさっき『浄化』したんですがー、汗臭かったりしませんー?」

「いえ、むしろ良い匂いです。何か香水とかつけてます?」

「あー。ポーションの薬草ですかねぇー。今はレオナ様からポーション作りを教わっていましてー、とてもハイレベルなんですよー」

得意げに話すネルネさん。ある意味ライバルなレオナさんの名前が出てきた。

……が、僕は余裕のある男なので! いちいちそこに嫉妬したりなんてしない。

「レオナさん、ポーションづくりが得意なんでしたっけ?」

「はいー、まさに神レベルというかー? そんな感じでー」

「伊達に勇者ではないってところですか」

「ですねー……あー、おなかすいたので朝ご飯食べに行きますかー」

と、ネルネさんは宿の食堂へと歩き出す。マイペースだなぁ、と微笑ましく思いつつ、僕もそれについていった。