軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ワタルの相談

「え、いいわよ別に。ワタルが断られようとも」

ロクコにレオナとの事の次第を話したところ、あっさりとそう返ってきた。

「いいのか? あの公園の告白成功率が下がる、とかなんとかであまり好ましくはないと思ってたけど」

「バカね、そもそもケーマがロマンチックな状況じゃないと私への告白とキスができないっていうから、ロマンチックな公園を作ってるんじゃないの」

「うん?」

そういう話だったっけ……そういう話だったな。

「だから、ワタルが告白失敗したら責任を取ってケーマが告白してくれるんでしょ? 私に。そりゃもう熱烈に、悪評を払拭する程に」

「お、おう」

「ハク姉さまだって認めてるんだから、何もさえぎる物はないのよ? 逃げないようにね。……ああ、そう考えたらむしろワタルは断られた方がいいのかしら? でも、義務感でキスされるのもなんだし、まぁ、成り行きに任せましょ」

うんうん、と頷いて、今回の件ではロクコも傍観勢になることが決まった。

* * *

「……うう、ネルネさんに告白して受けてもらうには一体どうするべきでしょうか」

ワタルはデートを翌日に控え、悩みを募らせていた。

酒場のカウンター席でショーチューを飲むワタルに、通りすがり(もしくは入りびたり、常連)のゴゾーが声をかける。

「お? どうしたワタル。悩み事か?」

「あ、ゴゾーさん。そうなんですよ、実はネルネさんとデートすることになりまして」

「……物好きだよなぁお前も。あんなにされてどこがいいんだ?」

ワタルの隣に座りつつ、ダイギンジョーを頼むゴゾー。

酒場のマスター、副村長でもあるウォズマがガラスのコップになみなみとダイギンジョーを一杯注ぎ、ゴゾーの前に置いた。

「うーん、どこが、と言われると……僕にかしこまらない態度や、あの素朴で素敵な笑顔。魔法が大好きで芯の通った所。たまにメガネかけてるところ。そばかすが可愛いところ――」

「ああうん、胸も実はデカいしな」

「……それもありますね。まぁ、とにかく好きなもんは好きなんですよ。ゴゾーさんだってロップさんのことどこが好きなんです?」

「あぁん? 今はそれはいいんだよ、ワタルの話だろ」

脱線しそうになった会話をゴゾーが戻す。

「で。デートだって? 良かったじゃねぇか。そういや最近公園ができたんだ、知ってるか? 俺も日雇い依頼で手伝ったんだぜ」

「あ、はい。そこでデートするように依頼された感じですね、ケーマさんから」

「依頼かよ。ちょっと色気がなくなったな」

くいっとダイギンジョーを飲むゴゾー。ドワーフでも満足な強く旨い酒に、ぷはぁ、と上機嫌に酒臭い息を吐いた。

「あー、まぁ、依頼といってもデートです。前にケーマさんにネルネさんとの仲を取り持ってくれると約束してもらってたんで、それですかね」

「ケーマの。へぇ、村長の許可が出てるなら、そのまま結婚までいくのか?」

「え、け、結婚ですか!? そりゃ、出来たらうれしいですけど……あー、そうなると明日の告白がますます重大になりますねぇ」

と、ワタルもショーチューを飲む。ダンジョン産の酒は日本の香りがするようで、ワタルは飲むと落ち着く気がした。

……「酒を飲むと落ち着くとか、アルコール中毒かな?」と呟いた。勇者なので、そのあたりは多分大丈夫のはずだ。

「なんだよ、プロポーズすんのか?」

「プロポッ!? いや、ええと、その前にお付き合いしてくださいって感じですかね」

「オイオイオイ。オマエ、まだネルネと付き合ってなかったのか?」

あきれて肩をすくめるゴゾー。

「そういうとこはしっかりしといたほうがいいぞ。横から掻っ攫われても知らねぇからな?」

「そうですね、ネルネさん魅力的ですし……しっかり彼氏彼女の関係に!」

「さっさと結婚しちまえよ。行き遅れにしたら恨まれるぞ? なぁウォズマ」

と、ここで酒場のマスター、副村長のウォズマに話を振るゴゾー。

「そうですね。私の妻も、こんな私についてきてくれたいい妻ですが、さすがに結婚していなかったらついてきてくれなかったでしょうし」

「……ウォズマさん結婚してたんですか!?」

「ええ。実は昔、帝都で官僚をしてた頃がありまして。政敵にハメられて仕事を辞めることになっても支えてくれた自慢の妻ですよ」

フフ、と得意げに笑うウォズマ。

「官僚!? エリートだったんですねぇ、それがなんでゴレーヌ村に?」

「出世争いに負けたわけですけどね。いっそ心機一転して新しい村を作る力になったらどうかと元同僚にここを勧められまして。酒場のマスターをやってみたい憧れもありましたから」

「おっと、その話はあとにしようぜ。今はワタルの話だ」

再びゴゾーが脱線した話を戻す。

「そうでした。ネルネさんへの告白でした……ウォズマさん、奥さんにはなんて言ってプロポーズを?」

「うーん。見合いだったので『これからよろしく頼む』とかそんな感じだったかと……」

「味気ねぇな。まぁそんなもんか? そもそも村や町だと、結婚は親が決める話だしよ」

「あー。こっちの世界そういう感じなんですね。僕の国も昔はそうだったと聞いたことあります……そうだ、改めて告白しなおしたりはどうです?」

ほう? とワタルの提案に食いつくウォズマ。

「そうですね、改めて妻に感謝を伝えるのも……良いかもしれませんね」

「そうと決まったら一緒に告白の内容を考えましょう! あ、ゴゾーさんもロップさんにしますよね?」

「俺も巻き込むのか!? あー、いや、そろそろちゃんとしようかとは思ってたがよぉ」

ワタルは道連れを見つけて笑顔になった。

「じゃあ、皆でどういう告白がいいか考えましょう! お二人も公園で告白するといいですよ? あ、なんなら明日みんなで公園に行きます? トリプルデートというやつです」

「……明日は仕込みがありますので、後日ですね」

「俺もダンジョンに行く予定があるからなぁ、次の休暇に誘ってみるわ」

「くっ。それでは仕方ないですね」

かくして男3人、ワタルのデートプランと告白内容についての相談を行った。

尚、その様子をレオナがこっそり気配を消して聞いていたのには、勇者ワタルも気づかなかった。