軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

勇者邂逅

「ケーマさん、強くなられたそうなので勝負しましょう!」

教会でのミサを終えた帰り、ワタルにそう声をかけられた。

来てたのかお前。そして強くなったってどこで聞いた?

「俺は仕事上がりで疲れている。そんなところを狙うなんて卑怯な勇者様だな」

「他のタイミングでも絶対のらりくらりと逃げられるじゃないですか! 今すぐじゃなくても良いので勝負の約束だけでも取り付けないと!」

それは確かにそう。

このタイミング以外だったら、なんやかんやと理由をつけて「今忙しいから」と逃げられたのに……おのれ、学習してるなワタルめ。

「生憎と修業してるからお前にかまってる暇がないのは事実だ。また今度な」

「え、でも強くなったんですよね? 僕なんか鎧袖一触じゃないですか?」

「触れただけで倒すとかどういう魔法の鎧だよ。俺の服がそんな風に見えんのか?」

そしてさりげなく翻訳機能さんで変な変換をするような四字熟語を混ぜてきやがった。この野郎、手段が巧妙化してやがる。

「それなら俺じゃなくてこの服と戦えばいいじゃないか」

「ほう! それはつまり一休禅師の逸話にある袈裟のエピソードですね! ボロい格好だと追い返されたけど、豪華な袈裟を着て行ったら歓迎されたので袈裟だけ置いて『どうやらこの袈裟が求められているようなので』と帰ったアレ!」

……服だけおいておけば満足するならそれでもいいよ?

あ、でも今着てるのは『神のパジャマ』の変形ジャージだからダメだな。やっぱなし。

「それじゃあ俺は帰って良いか? 疲れたんで寝たいんだが」

「フー、仕方ないですね。それじゃあこの村に来ているという黒髪の女性について教えてください」

突然のワタルの発言に、思わず吹きそうになった。

「……お前、それをどこで聞いた?」

「え、フツーに酒場でですけど」

レオナ、普通に村人に目撃されてるもんなぁ。別段隠してる様子もなく村での生活を満喫してやがるし、そりゃワタルの耳にも入ってくるか……

だが、レオナをワタルに紹介しようものなら大変なことになる気が――

――いやまてよ? ここでワタルをレオナに紹介したら、お互いの俺への興味をそれぞれにすり替えることができるのでは?

……もうこの際ワタルに俺が勇者だとバレても……レオナという別の勇者がいるし、むしろ分散される。バラすにはいいタイミングかもしれん。

「分かった。それじゃあワタルにアイツを紹介してやろうじゃないか……あー、不本意ながら、俺の師匠となっているアイツを!」

「師匠! ほう、それはとても興味深いですね……!!」

かかった。ワタルはそういう単語好きだと思ってたよ!

俺はそっとマップを確認し、レオナの居場所を調べる。……鍛冶場にいるな。何してるんだアイツ。ウチの村唯一の鍛冶師カンタラとネルネも一緒だぞオイ。

「こっちだ、ついてこい」

「わーい、ありがとうございますケーマさん!」

本当に会わせても大丈夫なのか、と思いつつ、俺はワタルを連れて鍛冶場へと向かった。

* * *

さて、そんなわけで鍛冶場にやってきたのだが、どこから持ってきたか分からない黒板にチョークでカリカリと魔法陣を描いていた。

「つまりこの魔法陣を使うことで、物質に自由に属性を付与できるわけよ」

「な、なんということだ……俺は今、新時代の幕開けに立ち会っている……ッ!」

「おおー、さすがレオナさんですねぇー、勉強になりますー」

おいそこの混沌神。気軽に革新技術を授けるんじゃない!

カンタラの感動っぷりから見て相当なアレだろそれ!!

「おいカンタラ。命が惜しくばコイツから聞いたことは忘れた方が良いぞ」

「ケーマ殿! 何言ってんだよ、この魔法陣があれば界隈で150年解けなかった難題がアッサリと解決するんだぞ!?」

「おう。そんな難題をアッサリ解決するこいつはきっと悪魔だから、対価に魂を持っていかれるんだろうな」

「あらやだ。そんなの要らないわよ、勝手に捧げられて有り余ってるもの」

クスクスと笑うレオナ。有り余ってるのかよ魂。さすが混沌神。

「ただの暇つぶしにね? 辺鄙な村の錬金鍛冶師に最先端の一歩向こうの技術を授けたらどうなるかなって実験をしただけだから」

「カンタラが強制的に超重要人物になるだろうが!? ええいカンタラ! この件については後日しっかり話し合うからな!?」

「お、おう。とりあえず魔剣作ってみるわ!!」

だから忘れろって……無理か。魔剣を作るのはカンタラの人生をかけた目標だ。

そのためにこの村まで来てくれたんだもんな、元々。じゃあ止められねぇか……

ああもう、面倒くさい仕事を増やされた……!!

「それでケーマさん。そちらの方は? 見たところ……黒髪黒目ねぇ」

「勇者ワタルだ、帝国の勇者だぞ。ワタル、こっちはレオナ、不本意ながら俺の師匠でハクさんの知り合いだ」

「ワタルです。初めまして」

「あら、レオナよ。よろしく……なるほど、これが【超幸運】の勇者ね」

握手を求めたワタルに、にこやかに笑顔で握手を返すレオナ。

念の為身構えておいたが、特に何も起きなかった。

「僕の事をご存知でしたか?」

「ええ。つい最近ソトちゃんから聞いたのよ」

「ソトちゃんからですか。カッコ悪く言われてなきゃいいんだけど」

「大丈夫。カッコいいお兄さんだって言ってたわ。ホントよ」

嘘臭い! それに多分それ、時空神の方のソトだよね? 何言ってたんだろ……

「ところでレオナさん。その黒髪、もしや日本と何か関係が?」

「あら。私は日本人だもの、髪が黒くて当然よ」

「日本人! 僕も……僕も日本人なんです!!」

ワタルは力強くそう言い切った。

今まで俺には「僕 も(・) 」とは言い切れなかったものな、おめでとう。

「あれ、でも目は赤いんですね。何かのスキルですか?」

「ええ。魔眼関連のスキルで色が変わってるのよ。【超マッサージ】、コリを見極める魔眼……ここね!」

「うぉうっ! な、なんと僕に肩コリが……!! しかも一突きで解消されたッ!?」

肩が軽い! とグルグル両肩を回すワタル。

ちなみにレオナが大量の勇者スキルを保有しているのは俺からは言わないでおく。

『ケーマさん、ケーマさん。私は今あなたの心に直接語り掛けています……』

『こいつ、脳内に直接!?……って、【念話】だな。どうしたレオナ』

『ケーマさんが勇者だってのを秘密にしてるのよね? 言わないでおいてあげるから、私もただの17歳女の子勇者ってことで! その方が面白そうだし!』

……まぁいいけど。その嘘、すぐバレそうだよなぁ。