軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

修業休養中。

ニクを抱き枕に、オフトンでゴロゴロすることにする俺。

今日は修業オヤスミである。詰め込み過ぎてもよくないとかいうレオナにしては真っ当な理由で。

「しかし俺、魔法特化だったのに岩斬れるもんなんだなぁ」

「ご主人様がお強くなられて、わたしの出番が減りそうで心配です」

「大丈夫だ、ニクには今後とも存分に働いてもらうつもりだぞ」

自分の体が自分でないようで恐ろしい。部屋でゴロゴロに努めねば……

「しっかし、岩斬ったせいか筋肉痛になった気がする……」

「何言ってんのよ。ケーマだもの、岩くらいフツーに斬れるでしょ」

そう思ってたら、部屋に来ていたロクコがそんなことを言った。さりげなくニクと反対側によいしょと座り、オフトンに入ってきた。何してんの。

え、寒いから布団に入れろって? しかたないなぁ。

「【ヒーリング】とか使わないの?」

「知ってるかロクコ。こういうのは自然回復させた方が筋肉がつくとかなんとからしい。決してゴロゴロするための言い訳ではないぞ」

回復魔法で治して強くなるようなら、「腕を切り落として回復しまくれば簡単に筋肉付くんじゃないかしら」とか言い出しそうだしな。レオナだと。

「まさか岩を斬れるとは……あれ、でも俺、言うほど鍛えた記憶無いな。せいぜい魔国で少しくらいで」

「多分だけど、身体強化の魔法使ってるんじゃない?」

「ああ。なるほどそういうことか」

岩を斬れるならもっとムキムキになってないとおかしいし、日常生活でも調整が難しいパワーなんじゃ、と思ってたんだが解決したわ。

そう。この世界には魔法があり、俺はその魔法を気軽に使える。

もはや超能力の域で、遠くのものを手元に持ってくるくらいなら無詠唱で風魔法発動すればぽーんと手元に飛ばすくらい朝飯前だった。

オフトンから出るのが面倒くさくて身につけた引き寄せ魔法である。

もちろん元の場所に戻すのも自由自在だ。風魔法じゃなくて【転移】でもいいし。

「それ、前にネルネが魔法の無駄遣いって嘆きながらもそれこそ魔法の真骨頂だって褒めてたわよね」

「なんだそりゃ。贅沢してこそのお金だ、みたいな感じなのかな」

ともあれ、俺は手足のように魔法を使っている。なら本物の手足を動かすのに無意識レベルで魔法が掛かっていてもおかしくないわけで……うん。

逆に、魔法なしの筋力は凄く落ちてるのでは?

ちょっとゴロゴロしすぎかもしれない。最近はレオナの修業で体動かしてるけど……

「……修業が終わっても少しは運動しないと不味い気がしてきた」

「あら。それならいい運動があるってスイラが言ってたわよ。男女でやる運動らしいんだけど。ニクもやる?」

「ロクコ様、くわしく」

「まて。サキュバスの言うことを真に受けてはいけない。種族と文化が違う」

それ絶対ハクさんにぶん殴られるタイプの運動だろ。

……いや、もう許されてるからいいんだっけ? あれ?

* * *

ゴレーヌ村には、村人冒険者と呼ばれる者達がいる。

正確には元々が冒険者で、村人が後付けである。とはいえ、さらに元々を辿れば冒険者になる前は農家の三男とか、つまりは村人なので、まぁどっちでもいい。

その村人冒険者は、基本的にはダンジョンに入ってゴブリンやゴーレムを狩り、冒険者ギルドで報酬をもらって生活する。

多少まともに生活するには最低限パーティー単位でアイアンゴーレムを狩れる程度の力がないと話にならない。

ゆえに、村人冒険者は実は皆、それなりの実力者なのだ。

酒場で飲みながら雑談する村人冒険者達。

「最近の村長、なんか風格があると思わないか?」

「あ、お前も思った? なんかこう、強者のオーラ出てきたよな」

「前々からただ者じゃないのは知ってたけど、ようやく見た目詐欺が無くなった感じ?」

そんな彼らは、とても敏感にケーマの実力向上を感じ取っていた。

このところ毎日欠かさずダンジョンに向かうケーマは、日に日に強くなっているようで。

「なんたって、勇者ワタルにも勝てる男だもんな」

「まぁズルみたいなもんだけど」

「ワタル本人が勝てない相手だって公言する村長だぞ、まぁズルいけど。……逆に正面から挑んだらワタルが初勝利するんじゃないか?」

確かに。と頷く面々。

「ん? 僕の話ですか?」

と、そこにそのワタルがやってきた。

「お? よぉ、ワタル。また魔女に貢ぎに来たのか?」

「あはは、いやぁ……あながち間違いじゃないのがなんとも」

頭をポリポリ掻きながら、勇者ワタルが照れつつ言う。

女なんてより取り見取りだろうに、なんであの魔女――ネルネに、ゾッコンなのかと村人冒険者は誰もが疑問に思っている。

一見パッとしない地味な見た目ではあるものの、美人である事は否定しない。

尚、魔女という呼び名は実際に魔女という話ではなく、勇者を手玉に取る魔性の女という意味でついた二つ名である。(ネルネ本人がいたく気に入っている)

「それで、ケーマさんが強くなったって本当ですか?」

「ああ。間違いねぇな。まぁ元々強いんだが……」

「それはますます僕が勝てなくなってしまいますね」

そう言いながら、何故か嬉しそうなワタル。

「……魔女のことといい、村長のことといい、ワタルは変わってるよなぁ」

「負けるのが嬉しいとかさ。ま、別にいいけど」

「勝つのに飽きるくらいには勝ちましたからね! 自分で言うのも何ですが」

「はっはっは、ま、勇者様だもんなー」

バシバシと気さくにワタルの背中を叩く村人冒険者。ワタルに気付いて遠巻きに見ていた行商人がビクッと震えた。

「で、ケーマさんが強くなったって、何か理由があるんでしょうか?」

ワタルが尋ねると、村人冒険者達は「そういやなんかあったか?」と話しだす。

「ん? そうだなぁ。この間まで奥さんの護衛が送られてきてたんだが、それが引き上げられたとかか?」

「いや、それからしばらくはグータラしてただろ。あれだ、娘さんの誕生日だ!」

「うーん。特に思い浮かばないな。……あ、そういやあの黒髪の女が来てからじゃないか?」

黒髪の、と聞いてワタルはピクリと反応した。

「黒髪ですか。それは僕やケーマさんみたいな? 黒目で?」

「ああ。村長とも同じ真っ黒な髪だな。でも目は赤かったぜ」

「黒髪赤目。うーん、ケーマさん同様、親が勇者とかそういう可能性がありますね。少し話を聞いてみたいな」

と、ワタルはその人物に会ってみようと考えた。

考えてしまったのである。