軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

修業中。

「ふぅ……」

俺はサリーさんに【超変身】した状態で、真っ二つになった岩達を前に息を吐いた。

疲れたが、無事岩斬りは習得した。

元々サリーさんは半人化状態、つまりリビングアーマーの体としてなら技を無視して岩を斬れる 膂(りょ) 力があった。……筋肉が無い場合も膂力って言うのかな?

そのうえで技でも斬れる。それがサリーさんだ。四天王強過ぎね? パワータイプも技巧派もいるとか、それを合わせた技巧パワータイプもいるとか。

だがパワーでゴリ押しするだけではレオナに勝てる強さは身に付かない。

俺はあえて人化状態のサリーさんで、スキルを使わずに岩を斬れるように頑張ってみた。……サリーさんならできる、という事実にすがって人化体でも岩を斬れるように試行錯誤を繰り返し、鉄の剣は壊れたら直し、を繰り返してなんとか習得。

【超変身】を使い直すと疲労が消えた状態に戻るお陰で、ブッ続けで励めたわけだ。

「いい感じね」

「いつから居やがったレオナ」

「ついさっきよ」

俺達のダンジョンだというのに神出鬼没だ。【転移】を使っているのは分かる。

「ケーマさん、【超変身】を解いて生身で岩を斬ってみなさい」

「は? できるわけ……いや、できるのか?」

「筋力が足りていればできるでしょ。わざわざ人化した方で岩斬ってたなら分かるわよね」

レオナの言うことは癪だが、まさにその通りだ。

そして俺は改めて生身で岩斬りに挑戦し――

――ゴッ、と岩を切り落とすことに成功した。

「……おぉぅ」

思わず変な声が出てしまった。まさか、斬れるとは。ゴーレムアシストも無しに。

「やればできるわね、さすが勇者」

「そうか、勇者だったなぁ俺も」

すっかり忘れかけていたが、定義としては勇者だったのだ。俺。

であれば、鍛えれば強くなるのは自明の理なのである。

「ケーマさんが勇者なら、さしずめ私は魔王かしら? 魔王派閥は別にあるけど」

「邪神じゃないか、混沌神だし」

「あらあら。それもそうね、うふふ」

何が嬉しいのか、楽しそうに笑うレオナ。

「勇者の娘と邪神が恋仲とかとってもカオスでいいわね?」

「ぶん殴るぞてめぇ」

「それならもっと強くならなきゃね。次はニクも呼びましょうか」

勇者たるもの、仲間と力を合わせて強大な敵を打ち倒すものらしい。……ワタルとかソロなんだけど? ドラクエでいうと1なのかなワタルって。

「お前はどうなんだレオナ? なんかこう、仲間と協力して倒した敵とかいるのか?」

「ええ、昔の話ね。あれは私が4番コアと融合する前、聖女と呼ばれていて、光神教の本拠地をクロマクと名前を変えて遊んでいた頃――」

「まてまてまて、重大情報が多すぎる」

何の前触れもなくヤバイ情報を話し出すなよ、もう!

「大丈夫よ、もう10番コアいないし……ま、いいわ。とりあえず仲間をサポートする戦い方もできるのよ、【超変身】は」

「……ロクコ、ニク呼んでくれ」

『はーい』

というわけで、ニクが呼ばれてやってきた。

ニクはレオナを見てすごく嫌そうな顔になる。表情の乏しいニクにしてはとても珍しい反応である。

「……」

「やっほーニク。好きにかかってきていいわよ?」

「ではしね」

ぶん、と即座にゴーレムナイフを抜いて斬りかかるニク。レオナはそれを片手で止めた。人差し指と中指で挟み、ニクごと捻り投げ飛ばす。

今、なんの躊躇もなかったなぁニク。まぁ簡単に斬られて死ぬ相手じゃないし。

「ほら、ケーマさんも手伝わないと」

「といわれても、下手に混ざれないんだが」

「うーん、そうねぇ」

と、ニクが体勢を立て直してレオナに再び斬りかかる。後ろからだったにもかかわらず、レオナは身を半歩ズラして回避し足をかけてニクを転ばした。

「ニク。あなたのご主人様とちゃんと連携しなさいな」

「む……」

ふい、と俺を見るニク。うーん、まぁ、やってみよう。魔法で援護する。

「いきます……っ!」

「【ファイアーボール】!」

「うん、ファイアボールは悪くない選択だけど、ランス系の方がダメージが期待できるわよ。それに、その程度じゃ私レベルになると無防備に受けても何のダメージもないわ」

レオナはその言葉が真実であるように、ニクの攻撃だけに対処する。火の玉はレオナにぶつかるとぼふんと燃えて、それだけで消えた。レオナは髪の毛一本すら焦げていない。

「……【ファイアランス】!」

「と、うりゃっ!」

「あっ、こら。危ないわね」

ばしん、と俺の放った火の槍を叩き落とすレオナ。俺の放ったところにニクが飛び込んできた形で、危うくニクに当たる軌道だった。

「む。すみませんご主人様。邪魔してしまいました」

「いや、今のは俺が悪い。上手くあいたところに攻撃できなかった。ごめんなニク」

「……私へのお礼はなしかしら? まぁいいわ。怪我しても、死なない限りは 完全回復(フル) ポーションで治療してあげる。好きに試してみなさい」

そう言って、レオナは【超錬金】を連発し何もない空間からポーションを作り出した。

「おい、なんだそりゃ。質量保存の法則どうなってやがる」

「魔法のある世界で今更だけど、あれよ。空気を錬成してポーション瓶と中身を作り出してるだけよ。ケーマさんなら、空間には『空気がある』って知ってるでしょう?」

無茶苦茶が過ぎる。チートだろこんなん。……勇者スキルだからチートだったわ。

「なぁレオナ。お前はいくらでも回復できるってことか?」

「そうね。魔力は消費するけど、自然回復補助のアクセサリーも付けてるから実質無限に回復できるといってもいいわね」

自動回復ができないような、よほど特殊な条件下であれば別らしい。

「この修業、最終的にはケーマさんには私やハクちゃんを倒せるくらいになってほしいんだけど……ま、その時は【超錬金】は使わないでおいてあげるわ」

【超錬金】アリの場合、どう倒したらいいか分からなくなるな?

……自動回復できない特殊な条件下、ってのはどういうのなんだろうか。