軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハクさんの紹介(2)

上級神様の依り代が半端な人間に務まるはずない。だから混沌神と呼ばれるほどのレオナが依り代になっていた、というのはまだいい。

だからと言って、別にこの部屋でリリースしなくても良かったんじゃないかな!?

「……レオナ、なんでここにいるんだ? いや、依り代になってたってのは分かるけど……」

「ソトちゃん、時空神の方のに頼まれたのよ。面白そうだから受けたの。文句は自分の娘に言った方が良いんじゃないかしら?」

「うん、すぐ帰ってくれないかな。ソトにはレオナを依り代に選ばないようにしっかり教育するから……って」

俺の言葉をよそに、ソトはキラキラとした瞳でレオナを見ていた。

「ソト?」

「え? あ、な、なんですかパパ。私は別に一目惚れなんかしてませんよ?」

やべぇ、怪しい。こっちが何も言ってないのに一目惚れとかいう単語が出てくるあたりすごく疑わしい。

「おいレオナ、さっさと帰れ。娘を惑わすな」

「あら」

レオナはニコッとソトに微笑んだ。ソトはボッと一目でわかるほどに顔を赤くした。

「ふふふ、手遅れじゃないかしら?」

「おのれ時空神カリニソト……」

分かっててやったに違いない。だって俺の娘だ、こんな大事なところでポカするはずがない。むしろ、時空神カリニソトは既に出会っていたのだろう。

そのうえで、この世界線の自分にもレオナを紹介したかったからこんな事をしたのだ。

「……パパ。ひとつだけ言っておくことがあります」

「なんだソト」

「私、パパみたいな人と結婚したいなぁって思ってたんです!!」

「なんでそれを今言ったかなぁ」

しかも目線の先はレオナにがっちり固定されている。

なんかこう、「パパと結婚する」とか「結婚するならお父さんみたいな人がいい」ってのは娘に言ってもらいたいセリフランキング上位入賞常連とかかもしれんが、間違いなくこんな状況ではないはずである。

「あー……なるほど。ソトの言うことももっともではあるわね」

「ちょっとまてロクコ、お前どっちの味方だ」

「だってケーマ自身、レオナの事上位互換とか言ってたじゃないの」

言ったけどさぁ。そもそも性別が……神様になると性別関係ないのか。

「まぁ大丈夫よケーマさん。10番コアを斃したんでしょう?」

「ん? 10番コアがお前と何の関係があるんだ……」

「10番コアを斃したんなら、私とハクちゃんが敵対する理由はもうないもの。というか……時空神の方のソトちゃんに身体を貸した報酬、何だったと思う?」

フフフ、と勿体付けて笑うレオナ。

「一体何を報酬にしたって?」

「ソトちゃんの記憶にある情報よ、時空神の方のね」

「……別世界の記憶もある神様からの情報かぁ」

「ある世界では私とケーマさんが組んで創造神をぶっ殺したらしいわよ? つまり、私とケーマさんは別に不倶戴天の敵ってワケじゃないのよ。日本出身の勇者同士、仲良くしましょう?」

にこにこと微笑む。確かに敵意は一切感じないけど、たとえ敵でなかったとしても、コイツが厄介事の塊である事には変わりない。

というか、俺が創造神を殺したって? どういうことだ。

それを観測したことがある時空神カリニソトは、創造神より上の存在ってことになるんじゃないか?

「それに、ハクちゃんにも頼まれてるのよ。ケーマさんを鍛えてやってくれって」

「は? おま、ハクさんと敵対してたはずじゃ」

「10番コア対策でそう見せていただけよ。私も働いてたのよ? 派生ダンジョンに逃げられないように裏で潰したりしてたんだから。嘘だと思うならハクちゃんに聞いてみなさい」

「ハクさんなら認めるとか言いながらそういう嫌がらせはするか……ロクコ、確認してくれ」

「ええ、メール出したわ」

「ハックするなよレオナ?」

「お父様に頼んでできないようにしてもらったんでしょう? もう手を出せないわよ」

レオナはやれやれ、と肩をすくめる。

……しばらくしてロクコにハクさんから返事が返ってきた。

「姉様からの返事だけど、確かに頼んだそうよ。驚かせるために名前は言わなかったけど、勇者スキルの専門家もレオナだった、って話みたいだけど……」

「ああ。ソトちゃん帰ったから私っていう認識になったのね。興味深いわ」

「姉様の紹介ってことなら、私は特に文句ないわね。ソトについてはさておくけど」

どうやら、ハクさんの紹介でレオナがここにやってきた、という事実で事象が確定し、時空神カリニソトの影響は最小限に収束したらしい。

「時空神の痕跡は世界の修正力で取り除かれる、って感じか?」

「ふふ。それが分かるのはさすが創造神の卵といったところかしら。まぁ、深く考える必要はないわ。なるようになるだけよ」

と、レオナがそう言ったところで隣に座ってるソトがぽんっと何か思いついたように手を叩く。

「ということは、レオナさんはしばらくこの村に滞在するってことでいいんですか?」

「ちょっと待て、どうしてそうなる?」

「だって、パパを鍛えるんでしょ? 1日程度でどうにかなるわけないじゃないですか。ハクおば様の満足する水準ですよ?」

「……」

否定できる要素が一切ない。

「レオナさん。パパをどれくらい鍛えるんですか?」

「とりあえず、【超変身】がLv7になったんでしょう? 使いこなせるなら最強の一角よ。それに見合う程度の実力を身につけてもらうわ」

「それはそれは! 相当時間がかかりそうですね、じゃあ、その間よければ私の部屋に――」

「ソト。レオナには教会に泊まってもらうから」

「あら、いいのね? 滞在しても」

「ハクさんの紹介、だしな……くっ」

ソトの部屋――【収納】ダンジョンに入られるよりはマシである。

それに、元々教会のサキュバスシスター達はレオナが面倒を見ていた連中だ、問題ないだろう。

ダンジョン内のサキュバス村が残っていたらそっちに押し込めていたところだったのだが、ダンジョンの改装で解体して教会に移行されている。一部は隣のドラーグ村の方に移住している。

……いや、ダンジョンの中にレオナ用の部屋作って隔離すべきだろうか?

近日中に監視できる環境を作らなければ。

「いっとくけどなレオナ。ウチの娘に手を出すなよ」

「私が手を出された場合はその限りではないということかしら?」

「それもダメだ。子供相手だぞ、ちゃんと断るのが大人の嗜みだろう」

「仕方ないわね。今回はハクちゃんの紹介ってことになってるから、ハクちゃんの顔を立てて従ってあげる」

それつまり、今回の件が終わって改めて村に来たりした場合はその限りではないということだろうか?

……なるほど、これは娘を守るためにも真剣に修業しなければならないようだな……!