軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

神の手

「……へー、そうなんですか!」

「……そうなんですよー。意外でしょ?」

応接室からワイワイとはしゃぐ会話が聞こえてくる。2人で会話しているようだ。

しかしその声色は、一人分である。

「入るぞ……ソト、いや、ソトか? ちょっとまて。なんでソトが2人いるんだ?」

扉を開けてはいると、そこにはソトが二人いた。

片方は、間違いない。俺の娘のソトだ。だがもう一人は。オレンジ色の瞳をした、俺の娘によく似た存在だった。

「あ、パパ! 見てください、私ですよ、私! 思わず会いに来ちゃいました!」

「あ、パパ! カリニソトです。ソトちゃんって呼んで下さ……紛らわしいからカリちゃんでもいいですよ?」

ニコッと笑うその顔は、全くの瓜二つ。一卵性の双子といっても差し支えないだろう。

そしてそう考えると俺の中で違和感がスッと落ち着いていく。

「……カリニソト、お前も俺の娘なわけか」

「はい、時空神カリニソト。私は間違いなく『増田桂馬』の娘です」

言いながら二人のソトは親し気に手をつないで笑顔だった。

時空神。つまりそれは――

「未来のソトってことか?」

「そうとも言えますし、違うとも言えます。時空の外側に居るのが私なので!」

「うーん、まぁソトではあるのか。よくわからんが大出世したんだな」

「えへへ、褒められた」

「パパ、この私も私のようですよ、驚きですね!」

うん、2人のうちどっちが喋ってるか咄嗟に判断つかなくなるなぁ。

と、ロクコを見ると何やら手が所在なさげにおろおろと彷徨っている。

「あうあうあう。ケーマどうしましょう、ソトが二人いるわ! 娘が二倍可愛い!?」

「落ち着けロクコ。双子だと思え」

「双子……? 双子って?」

「ニクとトイみたいなやつだ。こっちがソト、時空神のがカリと考えてみろ」

「あー。あー、なるほど……あ。なんか違和感消えた」

「お手数をおかけしますパパ、ママ。私、ちょっと特殊なので」

ロクコも俺と同じような違和感を感じていたらしい。……ニクももしかしてこの状態なのかな。

「どういうことなんだ?」

「説明が難しいんですが、同一人物が二人いるパラドックスに加え、上級神の力のせいで、私はこの世界にとって異物なんです。上手く呑み込めないと喉でつっかえて吐き気を催す違和感になるって感じですね」

ハクさんは「信用できる知り合いとは認識できるが、ソトだとは認識できない」という状態になっていて、ニクも「ソトが1.5人いる」みたいな認識になってしまったらしい。ダンジョンマスターとコアとしての繋がりが強い分まだ飲み込み切れず、混乱状態。

一方で、ソト本人は全く違和感がないようだ。時空神の素質が関係してるとかなんとか。

「この世界の人の身体を依り代にしてるんでギリギリ活動できてます」

「ん? 依り代? じゃあその身体はお前――えっと、カリの体じゃないってことか?」

「はい! 同意の上で一時的に乗っ取りました!」

……まぁ同意の上ならいいか。

「あ、パパの知りたい事に答えておきますね。勇者スキルの方は今から1年時間を空ければ確実に大丈夫ですが、半年以内にさらにLv上げちゃうと暴走します。レオナさんの言っていた事は真実なのでお気をつけて」

「え。お、おう」

「具体的には汚染の影響でママに対してDV夫になります。ママはそれはそれで幸せそうでしたがエスカレートしてうっかり殺してしまった世界もあったので一応忠告を」

それはイヤだな? というか、その場合でも幸せそうなロクコってどういうことなの。DV夫から離れられない妻特有のアレか?

「分かった、DV夫になりたくないから1年は気を付けるよ。……なんとなくカリがどういう存在か掴めてきたな。世界の監視者みたいな?」

「時空神なもんで。世界と言いましたが未来といってもいいかもですね、今潰れましたが」

存在がタイムパラドックスの塊みたいなやつだな、時空神カリニソト。

「さて、そんな未来をアレコレしてしまう私が、わざわざハクおば様に介入して紹介してもらってきた理由なんですが……」

「あ、単にDV夫にならないように忠告にきただけじゃないんだ?」

「当然ですよ。顔面殴られる度に『私、愛されてる!』って喜んでたママも否定する気はありません。創造神からのお使いです」

「ちょっとまって私そんな感じになるの? 嘘よねカリ?」

創造神、というと闇神と光神の上に居る存在だ。

なんでウチの娘がそんな相手からお使い頼まれてるのか……時空神だからなんだろうけど。

時空神カリニソトはロクコの言葉をスルーしてテーブルの上に缶を置く。茶葉だ。

「『神の寝具』を使って神になる際、このお茶を飲んでおくと創造神とお会いできます。……使うかどうかはパパに任せますが、とりあえず私に預けておきますね」

「はーい、預かっておきますねー」

茶葉をソトに渡すカリニソト。

「次期創造神になる気が無いなら使ってください」

んん?

「ちょっとまって。無いならって言った? ある、じゃなくて」

「はい。フツーにこのままいくと次の創造神になるんですよ。詳しく言うと精神汚染があるのでナイショですが――あ、分岐できた。よし。お使いは果たせましたね! それじゃあ私そろそろ帰るんで!」

突然立ち上がる時空神カリニソト。……詳しく話せと言いたいところだが、詳しく話したら世界の真実を知ったとかいう SAN(正気) 値判定なコトになるんだろうか。

「なんとも急だな」

「とびっきりの素体を依り代にしてるんですが、それでもそろそろ活動限界なんですよ。目的を果たした時点で契約が切れかけです」

「なるほど?」

良く分からないけど、分岐を産むのが目的だったのか。

……あまり詳しく推測するとSAN値削れそうだけど、本来世界の中に入れない上級神が直接手出しすることが分岐の条件とかだったのだろう。

「そうだパパ。ママへのプレゼント頑張ってくださいね」

「えっ」

そして時空神カリニソトが光った。

光が収まったとき、そこには黒髪赤目、ポニーテールの女――

「あら、ソトちゃんもういいの?……ん? あ、桂馬さんお久しぶり」

――ニコッと笑うレオナが居た。

そうだね、上級神様の依り代が半端な人間に務まるはずないよね。