軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

裏切者の意味

「姉様。いくらケーマでも10番コア相手に勝つのは難しいと思うわ?」

「無論です。何も一人で勝負を挑めと言っているわけではありません。私の派閥の一員として、他のコア達と同日同時刻、タイミングを合わせてダンジョンバトルを挑んでもらおうという話です」

あ、よかった。さすがにハクさんもそこまで鬼じゃなかったらしい。

「無論、私も参戦します。なにせ相手は トップ10(テンランカー) ですからね。こちらも相応に戦力を出さねばなりませんし、なんなら私が経費としてDPを融通しましょう」

「それは心強い。分かりました、参戦します」

一人で行けとか言われていたら逃げざるを得なかったかもしれないが、ダンジョンという固定拠点がある以上逃げ切れるものでもないし。

それと比べたら、同じくトップ10位に入っているハクさんの腰巾着になって勝馬に乗るのが正道というものだ。

と、ここでふと思い出す。そういえば、ウチの派閥……『裏切者派閥』って呼ばれてるんじゃなかったっけ?

これではまるで……逆に、裏切者を処分する派閥のようじゃないか?

「あの、ハクさん。一つお伺いしても?」

「なにかしら」

「……ハクさんって、なんで『裏切者』って呼ばれてるんです?」

「それが何か?」

にこり、と微笑むハクさん。

「いや、お父上とも仲が良いし、こうして反逆者である10番コアを処分しようとしてるしで……ああ、つまり、裏切者派閥って、その実態は『裏切者を処分する派閥』ってことですか?」

「言ってなかったかしら。まぁ、裏切者と呼ばれているのはダンジョンコアを処分することからですし、その理由について詳細を伏せているからというのもあります」

そう言ってハクさんはティーカップを持ち上げ、紅茶を一口飲んだ。

「なんでそんな呼び方させてるんです? いっそ処刑人派閥とかなら分かりやすく威圧もできるでしょうに」

「裏切者って呼ばせていると、実際に裏切者がすり寄ってくることもあるので便利なんですよ。……それに、お父様に反逆するコアなど あってはならない(・・・・・・・・) 。つまり、処刑人は存在しないのですよ、ケーマさん」

「……裏切者はいるのに?」

「私が裏切ってる相手はお父様ではなくダンジョンコアです。私が勝手に気に入らないダンジョンコアを敵と定めて処分しているだけですしね」

ふふふ、と笑うハクさん。

ハクさん的に、お父様を裏切るのはNGだが、ダンジョンコア達を裏切るのはOKらしい。

「つまり、実質的には『裏切者を始末する派閥』を略して裏切者派閥ってことなんですね」

「あらケーマったら、今頃そこにたどり着いたの? ふふふ、私は分かってたわよ!」

ロクコがどやぁと口端を上げる。

「だって、ハク姉様は父様と仲良しだもの。お父様と敵対する理由がないわ?」

「……まぁそうだね」

「ダンジョンコアの集会で見ても明らかよ!」

「うん、それ俺行ったことないからね」

以前、ミカンと564番コアとのダンジョンバトルで貴賓室にて仲良く観戦してたほどだ。悪いわけが無いよな。

「ん?……となると、少なくとも俺達はお父様と敵対することはないってことですよね?」

「そうね。でももしケーマさんがお父様に敵対するっていうならロクコちゃんに影響が出る前に潰すけれど?」

「ご安心ください、俺にその気はありません。なんか光神ともそれほど仲が悪いってわけじゃなさそうだし、予定ないですよ」

「ならいいわ」

そう、てっきり代理戦争をさせている対立した神なのかと思ったら、別部署のライバル同僚というような関係だったのだ。まったく、紛らわしい。

「……ところで、ダンジョンバトルにあたって経費っていくらほど出ます?」

「流石に際限なく融通するとお父様に叱られてしまいますので、100万DPまででお願いします」

若いコアの健全な成長を妨げないように、という配慮らしい。

俺が召喚された当初、ダンジョンバトルの準備金として10万DPを渡してきたのもかなりギリギリだったそうな。

「今の俺達には、100万DPまで渡してOKなんですか?」

「随分と成長しましたし、ケーマさんがお父様に認められていますからね」

「ふふふ、これぞ鼻が高いってやつねケーマ! あ、ところで姉様。経費とは別に、報酬の話もありますよね?」

「勿論よロクコちゃん。『神の下着』とかどうかしら?」

『神の下着』。神の寝具で、俺達が所在を把握していない最後の一品だ。

「うん、それなら良いと思うわ。ケーマはどう思う?」

「俺も問題ないが……いつの間に手に入れたんですか?」

「ダイード国にあったものを接収しました。今は私の管理下にありますよ」

ダイード国にあったのか。……どさくさに紛れて宝物庫とか漁ってくるべきだったかな。

とはいえ、報酬が『神の寝具』なら参戦もやぶさかではない。ハクさん派閥VS10番コア1体の戦いで、そもそもが勝ち戦。勝馬に便乗だ。

いや、まぁ10番がどれほどのもんか分からないのだけは不安要素だが……実は最強、ということも考えにくい。聖王国では騒動から逃げたくらいだし、ランキングではハクさんの方が上らしいし……

どうせハクさんが負けたら俺達もマズいだろうし、ハクさんが勝つように全力でお手伝いするのが最善なのだ。

「活躍如何によっては、『神の敷布団』及び『神の枕』の使用を私の名前で許可するよう通達しておきましょう。さて、ケーマさんはこれでどれほど活躍してくれるかしら?」

ハクさんが俺に向けて手を差し出す。握り返せば、交渉成立ということだ。

「……微力ながら、力を尽くしますよ」

「期待していますよ」

俺はそう約束し、ハクさんと握手した。

あっ、ついでにミカンにも声かけとこ。あいつ、一応俺の部下って扱いのダンジョンコアだし。564番コアもついでに働かせてやる。