軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖王国のお土産2

「おっ、イチカ。これやるよ」

そう言って、ケーマはイチカに青い宝石のネックレスを手渡した。ティアードロップ、水滴型の青い石がイチカ的には好みである。

「え? おー、可愛いネックレスやん。ええの? 返さへんよ?」

「ちなみに魔道具になっててな、しゃぶると水が出る」

「あ、これ魔石なんか。へー……はむ」

早速石を咥えてみると、ジワリと水がしみ出てきた。喉の渇きを癒す程度には使えそうだが、コップで水を飲む方が圧倒的に早そうだ。

「ふむふむ。ええやんコレ」

「だろ、イチカにはこれだなと思って選んだんだ」

「ほぉ、選んだ……」

しかしイチカにとって気になるのはこれがネックレスという点である。

とても珍しい魔道具のネックレスだ。きっと高価なものに違いない。

イチカは製作者の名前とか工房の名前とかが彫金されていないだろうかと眺める。

ケーマやネルネによって作られたものであったらそういうものは入っていないはずだ。そうでなければ、それはそれで値段の指標になるし、わざわざ買ってきたものということになる。

よく見れば、目立たない所に『ナユタシシドウ』とそれらしきものが掘られていた。製作者の名前のようだ。……なるほど、これは購入したものか。

つまりこれは――

「あまり見せびらかさないようにな。特にドルチェさんあたりにバレたら困る……」

「ん? あー、そういう事? 了解やで」

「うんうん。イチカは物知りで察しも早くて説明する手間も省けて助かるよ」

「しかし、ご主人様がこんな洒落たモンくれるなんてなぁ……ふへへ」

「喜んでもらえたようで何よりだよ。それじゃ」

と、ケーマは去っていった。

そう。イチカは察した。

これは愛人契約の証であると!!

「……いやぁ、奴隷に装飾品をくれるとか……そういう事やん! ついにウチもご主人様に手ぇ出されちゃうなー」

正妻であるロクコの手前、ドルチェ――ハクからの監視――に見つかると、それはもう肩身の狭いことになるだろうことは火を見るよりも明らかだ。故に、多くを語らなかったのであろう。

「あー、温泉入って身体キレイにしてこんとなっ」

ふんふんふーん♪ と鼻歌を歌いながら上機嫌で宿の温泉へと向かうイチカ。

その途中でニクと鉢合わせた。

「お、ニク先輩」

「おや。上機嫌ですねイチカ?」

「そりゃぁー……んんー、ま、先輩相手なら言ってエエんかなぁ? ぬふふ」

「?」

ニタニタと笑うイチカに対し、首をかしげるニク。

「何かいい事でもありましたか?」

「あー、うん。ご主人様からネックレスもらっちゃったんやけどぉ、これってそーゆー事やなぁ? って」

「あ、それみんな貰ってますよ」

「マジか。ご主人様のハーレムやん!!……って、みんな?」

話を聞けば、レイ、キヌエ、ネルネの幹部達はもちろん、その部下のシルキーズやエレカまで魔道具装飾品を貰ったらしい。当然ロクコやソトもだ。

「……むむ、そこまで配られてるってことは……ウチの勘違いかなぁ」

「わたしもご主人様からこれを頂きました」

ニクの両腕には、黄色い石が付いた装飾品の腕輪が付けられていた。

ただしその作りはシンプル。イチカのネックレスとは違う実用性重視な感じで。

「投石用の石を出す腕輪です。発動すると、内側に丁度握りやすい石が作られます。腕を振りながら作ると、丁度手に納まってそのまま投げられます、石投げ放題の腕輪と言ってました」

「石投げ放題の腕輪て」

「ネルネの試作ですよ。ネルネはこれの元となった、目つぶし用の砂が出る腕輪をいただいたそうです」

「ほぉん、先輩のはネルネの試作かぁ」

つまり、イチカのネックレスとは違い自家製ということである。

……これはやっぱりそういう意図があるのでは?

「ネルネが貰ったのは元の魔道具ってことか」

「はい。ネルネの他はレイとキヌエも、仕入れた魔道具をいただいたそうです」

シルキーズにはネルネに試作してもらったイヤーカフと指輪のセットだそうな。

なるほど、年頃の娘には購入したアクセサリーを、幼年組にはネルネの試作が配られているようである。

……やっぱりそういう意図では?

「あまり言わないようにって言われてますから、イチカもナイショですよ」

「先輩もそう言われてるんか?」

「はい」

ネルネ作の腕輪とはいえ、抱き枕業務のニクには言ったのだろうか。

……まだ、まだ愛人契約あり得る?

「聖王国産ですからね、魔道具アクセサリー」

「ほぉ。わざわざ輸入したんか」

「そういうことになっています」

輸送費で相当な価格になるだろう――と思ったイチカだったが、同時にふと思い至る。そういえば今、ケーマの手の者が聖王国に調査に行っていることを。

そして、ソトの輸送能力を。

「あ、そういうことか」

「そういうことですね」

こくり、と頷くニク。

ハクに隠しているソトの力。ハクさんの手の者であるドルチェにバレないようにというのはそういうことだったか、とようやくイチカは把握した。

「いやぁ、てっきり愛人契約のことやと勘違いしとったわ」

「愛人契約……はっ、そういう考えもできますね」

「え、どっちなん??」

真面目にニクに同意され、イチカは戸惑う。

「……どっちでしょう? 両方という可能性もあるのでは?」

「うーん、分からんなぁ。しっかり話聞いておくべきやったか……」

神出鬼没のドルチェを警戒するなら指示をハッキリ言えないのはまぁ仕方ないとしても、黙っておく事情をしっかり確認できていないのはうっかり漏らしてしまう可能性があり困る。

両方黙っておけば間違いないとして。とりあえず愛人契約だった場合はそっちの意味で呼ばれたら判明するわけだが……確認しておきたい。

「よし! ならとりあえずご主人様のオフトンに潜り込むのはどうや? どっちにせよその場で確認できるやろ。愛人契約の場合はそのまま勢いで! 抱き枕業務をするニク先輩はご主人様の部屋に入り放題やし」

「なるほど、かしこいですねイチカ」

そんなわけで、ニクの同意のもとイチカはニクとケーマの部屋に向かった。

もちろんソトの能力についての秘密であった。